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ヨーロッパの最終地点

謎の多い国だとは思っていた。空気が綺麗そうだとか、治安が良さそうだとか、自分の中に存在するイメージはどれもこれもポジティブなものながらどこまでも抽象的だし、日々私の頭の中を占拠しているスイス製の時計に関してもその土地においてはどのような立ち位置なのか今ひとつ分からない。

年に一度の大イベントであるバーゼルワールドには一度は行ってみたいと思っているし、そうでなくてもジュネーヴを訪れて、時計メゾンの本店巡りや、パテック フィリップ・ミュージアムでその緻密な芸術に垂涎してみたい。生きているうちに、ロレックスのアカシア工場だってこの目で見てみたい。

そう願いながら生きていたところ、幸運にもスイス インターナショナル エアラインズからスイス訪問のお誘いを頂いた。

訪れたのは、チューリッヒ。イメージよりももっとこじんまりとしていて、路面列車が途切れることなく走るその街は、決して派手では無いものの大好きな都市になった。時計屋さんは銀座よりも少ないかもしれないけれど、思っていた通り空気が気持ちよくて、気の流れも良い。治安もヨーロッパとは思えないくらいに良くて、もちろん油断は厳禁なのだけれど、もしもお財布を置き忘れたとて「忘れてるわよ」と教えてもらえそうなほど。食事は決して安価とは言えないけれど、どこで食べても「きちんと」おいしくて、誰もが生産の背景を含めた食という行為に関して意識的であることが感じられた。

ヨーロッパの街並みや暮らしの素敵なところをぎゅっと凝縮したところ、それがスイスという国なのかもしれない。だからこそ、究極とも言える時計や宝飾品が生み出されているような気もする。

もしもヨーロッパに行ってみたいという人がいたら、私はスイスを薦めるだろう。ストップオーバープログラムを利用すれば、チューリッヒをベースにして、バレエ好きなら反応せずにはいられないローザンヌやヨーロッパの最高峰と言われているユングフラウヨッホを気軽に訪れることだってできる。

ただし、他の国も周遊するとしたら、きっとスイスは帰国前の最終地点にするのが良い。旅の思い出が素晴らしいものとして磨き上げられるはずだし、何よりスイスは他の国よりずっと安心できてしまうから、スイスからフランス、スイスからイタリアなんて風に移動して「よしスリに注意!」だなんて、即座に気持ちを切り替えるのは何度かヨーロッパを旅している私でも、多分ちょっと難しい。


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