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34は大人の悦び

夏が終わったことを皮膚で感じると私はそそくさと秋の支度に取り掛かる。

茹る暑さの中ウールやファーを触るのは少しも心地良くなんて無くて、とてもじゃないけれど早め早めに手をつけることなんて出来ない。こればかりは季節が移ってくれる以外に手立てはないのだ。

そんな中、近年私に秋の訪れを教えてくれると共に季節のスイッチを美しく切り替えてくれるのがディプティックのコレクション34というシリーズ。これはいつも夏の終わりに発売されるのだけれどミモザや遅咲きのジャスミンといったメロウなモチーフで構成されていて、それはもう夏と秋の境目に酔い痴れるにはもってこいの情趣。だからこそ私にとって文句無く初秋一等のお愉しみとなりつつある。

そして今年のコレクションもまた抜群に好い。遅咲きのバラを使ったオード パルファンにまるでベッドサイドランプのようなキャンドルスタンド。溶かしバターが滴るかのようなフレグランスのキャンドルはマドレーヌ(!)がモチーフ。一体どんな風にインスピレーションを磨き上げたら、こんなにも極上の閃きで乙女心を擽ることができるというのだろう。

そしてもう一つ、私がとびきり惹かれたのがキモナントというフレグランス。木犀や白檀、レザーといった、熟れたフレイバーによるそのオード パルファンはどこか塗香を想わせて、駆け足で深まる秋を最高にエキゾチックに仕立て上げてくれる気がする。

「香水をつけ始めた二十歳のお嬢さんには早いかもしれないけれど」

この香りを試した瞬間に、ディプティップの社長が囁いた言葉。
いつもチャーミングな社長だけれど、相変わらずここぞというところで本質を突いてくるのは流石としか言いようが無い。

歳を経ることで、纏える香水が増える悦びを教えてくれるコレクション34。これは初めてブティックが建てられた場所である「サン・ジェルマン大通り34番地」にちなんだ名前だけれど、奇しくも私が三十四という齢になる頃、パーフェクトにつけこなせるようになっていたら素敵だなんて考えさせられるシリーズ名でもあると常々思っている。

それがディプティックのコレクション34。

9月24日からディプティック・ブティックにて先行発売開始。9月28日より全国のディプティック取り扱い店舗にて発売開始。

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