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運命をすこし変える、ファムファタールのまなざし【GRANDIOSE10/ LANCÔME】

本音を言うならば、発売された当時はこのマスカラとこんなにも長い付き合いになるとは思っていなかった。

その余りにも優雅な佇まいや、最先端の技術や無数の研究結果が詰まっているであろうユニークな形状のブラシは、コスメティックの中でも消耗品としてのイメージが強い〈マスカラ〉というアイテムにしては少しばかり敷居が高いように感じられたし、蓋に埋め込まれた一輪の薔薇や、スワンネックと名付けられたブラシのネーミングも同様で、とんでもないものが発売されたと驚く反面、些かドラマティックが過ぎるかもしれない、とも思ったことをよく覚えている。

だけど、一本目を使い終わる頃には、そんな気持ちはすっかり何処かに消え去っていた。まるで麗しい白鳥に姿を変えられてしまったオデット以外には愛さないと忠誠を誓った王子が黒鳥のオディールに翻弄されるかのようにそのマスカラに夢中になり、気がつけば周りの女友達も次々グランディオーズに手を伸ばしていた。

グランディオーズを塗っている睫毛は、一目でわかる。

文句を付けようのないボリュームが出るのに、睫毛の一本一本がバレリーナが表現する羽の動きのように嫋やか。滑らかなカールと扇状のシルエットは、目が合った刹那に心までも巻き取ってしまいそうなほど。それでいて、決して睫毛だけが主張することなく、どんなメイクとも調和が取れるのだから、ひれ伏したくなってしまう。

そんなグランディオーズに、今年新しい色が加わった。その名はブラン ミリフィック。栗毛色、と表現するに相応しい睫毛に仕上がるこのマスカラは、塗れば塗るほど瞳は丸みを帯び、ごく自然に、だけれど確実に、目というパーツの存在感を増してくれる。こうして私はあっという間にグランディオーズの更なる虜となった。

漆黒よりも柔らかく、意味深で、それぞれが持って生まれた本来の魅力を後押ししてくれる。ファムファタールを量産するためにあるかのような、この一本。

ひと塗りすれば、きっと運命がすこし変わる。

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多謝
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前田紀至子

新潮社ニコラモデルや光文社JJライターを経て、旅や美容を中心として暮らしに関する文章を寄稿しています。

私的 名番紹介

お気に入りコスメティックの備忘録を兼ねて、名盤ならぬ名番を紹介。
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