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嘘つきな私のはなし

小さな頃から
物事を客観的に
伝えることが苦手

幼稚園の頃
家の近くの公園で
直径10センチくらいの蜘蛛を
見たことがあった

今にもその真っ黒な胴体に
吸い込まれそうで思わず息を呑む

背筋がゾクっとして
足は、すくんで動けなかったけど
公園には私だけだったので

「神様!お願い!蜘蛛が追いかけてきませんように!」と祈りながら走って帰って真っ先に

「お母さん!お母さん!お母さん!
大変!大変!公園にこーんなでっかい蜘蛛がいた!!!」
と、思いっきり両手を広げて叫んだ。

そしたら
「うそ、そんな大きくなかったでしょう」
と言われて、ドキッとした
よく思い出したら
確かにこんなに大きくなかった

テンションは下がり
萎んでしまった気持ちを表すかのように
どんどん手を縮めて
「これくらいだったかも…」
小さな声で言い直した

「ほらまた、あんたは大袈裟やなぁ」
忙しい手を止められて
ちょっと不機嫌になったお母さんが
ため息混じりに言った

あぁ、またやっちゃった

自分では嘘をついてるわけでも
大袈裟に言ったわけでもないのに
いつもこうなる

この前は
りかちゃん遊びをしていたら
彼氏のアキラくんがいなくなった

あれ?さっきまでそこにいたのに
振り返ったらいなかった

りかちゃんと喧嘩して
家に帰ったわけじゃない
監督は私だから
そんな波乱の展開にした覚えはない

机の下、ベットの下、オルガンの下
押し入れも開けて見た

「お母さん、お母さん、おかあさーん、アキラくんがいなくなった!!!一緒に探してー」

急にアキラくんがいなくなった部屋は
何か神隠しのような呪いがかけられているのかもしれない

そんな部屋の中を
一人で探すのは危険すぎる

一階にいるお母さんを呼びに行った

「もう、目の前にあるでしょ!」
さっき探して、何回も見たはずの
オルガンの下にアキラくんは転がっていた

「何回も見て確かにここには無かったのに!キツネのせいや!」

前に絵本で読んだ
人を消したり、バカしたりする
キツネのせいだと思った

「また、そんな嘘ばっかりついてたら
友達できひんで!」

一人っ子で
一人で遊ぶことも全然平気だったけど
それは困る

でも、今度からは気をつけようと思っても
現実に感情が乗っかっちゃったら
歯止めが効かない
つい大袈裟になるし
話がどんどん盛られていく

そんなある日
お父さんと行った難波花月で、
明石家さんまを見た

起きたてみたいな顔で
「寝坊したー」と言いながら舞台に上がり
何気ない日常のワンフレーズを
めちゃくちゃ面白く話してくれた

テレビで見かけることも増えて
「いつも大袈裟やなー」「話、盛りすぎやでー」と、私と同じことを注意されて笑ってた

あれだけ治そう治そうと思っていたけど

「このままでもいいかもなー」
ちょっと嬉しかった

というわけで、これから紡ぐ
お産の話、子育ての話

私のメガネを通して見たことに
私の心が乗っかって
時には大きくなったり
脚色されていたり

昔の記憶で、事実や感情が幾つも重なり
曖昧になってる部分もあるかもしれません

ここに出てくるママは
あなたかもしれないし
あなたじゃないかもしれない

そう思って読んでいただけたらと思います

それでは
物語のはじまり、はじまり。。。

























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