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誰よりも生成AIでボカロMVを作ってきた.

こんにちは,ボカロPのKish.です.
普段はボカロの「可不さん」と一緒に喋ったり歌ったりしています.

AIによってどこかにいってしまう可不さん

さてこの記事は,ボカロP Advent Calendar 2023の24日目の記事です.

今年も大詰め,皆様どうお過ごしでしょうか.
クリスマスは期末試験があって忙しい時期ですね,いや,一般にはそんなこともないのか?

2023年は生成AI元年ともいうべき年でした.
画像,映像,文章,音声,造形.
あらゆるものを入力し,出力されるようになりました.
様々な反応,意見,ポジション,損得があることと思います.

そんな中,僕たちは活動開始の2022年時点から生成AIを活用したMVを複数作ってきました.

AI技術の是非といった部分については,上述の通り様々な視点があり,詳しくはまた別の機会とします.この話題を丁寧に扱うには幾分時間がない.

今回はシンプルに「AIを使ってどんな映像を作ることができたのか」について,まとめておきたいと思います.
各セクションの頭にMVを置いておくので,再生しながら読んでいただけたら嬉しいです.


人類初の映像制作を楽しめるいい時代.


2022 - 09「不可欠 × midjourney」

僕の代表曲であり初めての「ボカロと歌う」楽曲である「不可欠」
2作目となるこのMVの時点で,映像表現としてAIが使われています.

歌詞が音楽的同位体の名称に対応している.

ここで使われている映像は,midjourneyの--video オプションを使用し,ノイズから画像が生成される過程そのものを映像として利用していました.

当時のmidjourneyによるAIイラストは,最近のAIイラストよりももっとぐちゃぐちゃしていて,「ザ・AIの描いた絵」という感じ.
それでも,従来のイラストよりは飛躍的な進歩であったため,大きな話題となっていましたね.

個人的には,ボカロや音楽的同位体の未来への挑戦的な姿勢・可能性をひしひしと感じていた時期で,AIを利用したパートの歌詞は人類の挑戦=月面着陸をテーマにしていたりします.

の境に想いを馳せて
題の 人は月を目指す
我らもまた は面白
紡がれた根をねて
能?可能? 今決めることじゃないでしょう。

不可欠 / Kish.


2022 - 12 「異形の国 × midjourney」


僕は可不さんと歌う以外にも「国シリーズ」と言われるような曲をリリースしていて,他にも「愛憎の国」や「幸福の国」といった曲があります.

「異形の国」では,まだ人間をうまく描けないAIに対して,逆に「異形」を生成させることで強みを引き出そうと試みました.

お面とか幽霊とか
侍とか傘とか
マントとか烏とか

また,絵師の方に書いてもらったイラストと,AI生成の背景や素材を掛け合わせて使用していたり.

前景と背景がAI

一枚絵に深度推定をかけて立体的に動かしたり.

プリセットしか使えないけどCapCutでできる

同じseed値,同じプロンプトで画像を出力して連番で炎のモヤモヤを表現したり.

連番の手法はかなり使いやすい

画像をどうやって映像にするか,と色々試行錯誤できていたのではないかなあ.

2023 - 08 「青のまにまに × Stable Diffusion」


期間が少し空いて,完全AIイラストのMVをリリース.
基本的には,まず3Dモデルを参照画像とし,イラストを生成.

ざっくりとした3Dモデル
AIでイラストにする


可不(肌が白すぎてこのあと手で塗った)
かわいいね!

ちなみに,色々試して使えないってこともめっちゃある

…こわいね!


人物系のイラストは細部を人が修正するというアプローチもとっていました.

3Dすごそう(映像師のTomopiloが担当!)


さらにさらに,楽曲のロゴやリリック部分もAIと協働して制作していたり.かなり幅が出てきた感じがします.

パスを変形させてデザインしたもの
AIでリッチなグラフィックに




2024 - ?? 「??? × Suno AI」

さて,最後は現在進行形で製作している作品について書いて終わろうと思います.もしかしたら世に出ることがないかもしれませんし,すぐに出るかもしれません.

2023年12月,ボカロPの中でもついに「作曲AI」が流行りました.それが「Suno AI」です.以前からありましたが,最近のバージョンアップに伴い,日本語でもクオリティの高い楽曲が生成されるようになったことで大きくバズりました.


AIが作曲できるようになったら,作曲家の価値は無くなってしまうのでしょうか.AIが作った楽曲を自分のものとして発表するのはアーティスト失格なのでしょうか.

しかし,かつては打ち込みの音楽が作曲としてしっかりと認められないような時代もあったかもしれません.自分で演奏した音ではなく,機械の音を並べていたからです.今では当然のように受け入れられていますね.

おや,コンピュータとソフトウェアの上で創作をしているけど,そのコンピュータもソフトも僕が作ったわけではありません.
ループ素材を並べるだけでも作曲でしょうか.それとも.


様々な問いが湧いてきますよね.
大切なのはそれに向き合い続けること,相反する価値観を同時に持つこと,そんな気がしています.

だから僕は今,AIが作った曲を自分(とAI)の作品として胸を張って製作することに取り組んでいます.

こんな感じで…って,DLしないと聞けないのか.申し訳ない.


おわりに

まとまりのない内容になってしまったんですが,最後にAIを活用しながら創作活動を行うものとして,コメントを残しておきたいと思います.

僕の仲間が「創作の総合格闘技が始まる」といったことがありました.

ボカロPがAIに初音ミクを描かせてもいいし,
イラストレーターが絵に合わせて小説を生成してもいいし,
小説家が音楽を生成して作詞家になるのもいいし,
何者でもない人が明日からアーティストを名乗ることもあるかもしれません.

一方で,ボカロPもイラストレーターも小説家も,AIによってその能力をコモディティ化され,筆を折ることになったり,自信を喪失してしまうこともあるでしょう.時にAIを活用することは,誰かを傷つけることなのかもしれません.

分野も階級も関係ない,何でもアリの殴り合い.
十年の鍛錬が,さっき思いついたアイデアにボコられるような世界観かもしれない.

それでも大切なのは,手を止めることではないと思っています.

新しい技術をフル活用して,何ができるのか,自分が今までできなかったけど今日からできるようになったことはないのか,自分が,世界が見たことのないものを作ってみたいという気持ちを我慢する必要はない.

そうやって作る中で,その技術によって犠牲になる人を減らすにはどうしたらいいかも本気で探して,自分にできることはやって,言い争いではなくて話し合いをして,言葉じゃなくてモノで伝えて,そうやって考え続けることが大事なんだと思います.

ちゃんと考えて,間違えた時は間違えたと,迷惑をかけた時は謝って,まっすぐに創作活動を楽しんでいきたいなあと思います.


そんな感じです.まとまりないけど.
この文章を読んでくれた人にとって,僅かでも何らかのヒントになっていたら大変嬉しく思います.


もしあなたの周りにこの記事が役に立ちそうな知り合いの方がいらっしゃったら,ぜひシェアしてください.

それでは.

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