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車のドア開閉時の筋電をくらべてみた

企業が自社製品の魅力を磨いていくうえで、「客観的なデータによる製品評価」は非常に重要な要素となります。そして弊社はそのようなニーズに対応可能な計測器や解析ソフトをご提案可能と考えております。

今回は「製品評価」の例として、過去に計測した社内データから「自動車」の比較計測データをご紹介したいと思います。
自動車であればどんな事が製品評価になるのだろうと考えた我々は、「ドアの開閉における筋電の様子」を3車種で比較解析することにしました。
(文: 開発職 O)

■実験方法

◆ 比較対象

今回比較対象として選出したのは、会社の駐車場に停まっていた以下の3車種です。

  • ライトバン …ザ・営業車といった印象で、荷物を沢山運ぶときに重宝しています。

  • 軽自動車 …小型で取り回しの良い、私の好きな車種です。

  • 高級セダン …いかにも偉い人が乗っていそうな高級車です。

◆ 計測

前腕の屈筋伸筋に貼り付けた電極を筋電計に接続し、弊社製品「収録プログラム VitalRecorder2」を使用して筋電図の収録を行いました。サンプリングレートは1,000 Hz です。
3車種とも同日に計測したため、電極の貼り付け位置は変わっていません。

電極貼り付け位置

また、ビデオ機材を連携させて、筋電だけでなく計測の様子を動画で撮影しました。
動作としては「ドアの開閉動作」を繰り返しました。

■解析

筋電図の解析には弊社の解析ソフト「EMG研究用プログラム BIMUTAS-Videoを使用しました。

◆ 生波形

下記画像は各車種における筋電図の計測結果(生波形)です。

ドアの開閉動作を繰り返しているので、撮影した動画と照らし合わせながら「ドアを開け切った瞬間」と「ドアを締め切った瞬間」に目印を入れています。これにより解析区間を「引く」動作と「押す」動作に切り分けています。

ライトバン

筋電図生波形 ライトバン

軽自動車

筋電図生波形 軽自動車

高級セダン

筋電図生波形 高級セダン

ぱっと波形を見ただけではあまり特徴をつかめないですね。

◆ 積分解析

次に、上記筋電図生波形に対して筋活動の大きさを解析します。
ドアの開閉動作は1動作に要する時間が毎回微妙に異なるため、今回は面積積分による解析を「引く」動作の区間に対して行うことにしました。

3車種の結果を並べてみると以下の通りです。
「引く」動作1回ごとに算出された面積積分値が横方向に並んでいます。

面積積分結果

どうやら高級セダン(緑色)の時の筋活動が全体的に大きそうに見えます。

◆ t検定

車種による差があるように見えたので、t検定により、その差についてさらに解析してみました(この検定にはExcelのデータ分析機能を使用しました)。

今回は3車種あるので2車種ずつ抜き出して2群検定を3回を行いました。
また、それを屈筋と伸筋の2チャネル分、計6回検定しています。

◆ ボンフェロー二法による補正

検定対象が2群であればここまでのデータで結果を出すのですが、今回は3車種(3群)の検定のため、ボンフェロー二法という手法を採用して、上記のt検定の結果(P値)に補正をかけます
最終的な結果が以下の通りです。

まず、屈筋に関しては高級セダンと軽自動車の間に有意差(有意水準α=0.1)があり、さらに高級セダンとライトバンの間にも有意差(有意水準α=0.05)を認めました。
伸筋に関しても高級セダンと軽自動車の間に有意差(有意水準α=0.05)がありました。

この結果から、「高級セダンは他の2車種に比べて、ドアを開ける際の筋活動に差がある(大きい傾向がある)」という事が分かりました。

■まとめと考察

検定によって示された「高級セダンは他の2車種に比べて、ドアを開ける際の筋活動に差がある(大きい傾向がある)」という結果について、皆さんはどう感じたでしょうか?

「高級車なのにドアを開けるのに力が要るの?」と思う方もいらっしゃると思います。
一方で、車好きの社員からは「適度なドアの重さがあったほうが"高級感"を感じる」といった意見も耳にしました。

製品開発においては「一見デメリットにも思えることが価値をもたらすことがある」という気づきを得られましたし、この実験のように、客観データは様々な気づきを与えてくれます。
「製品評価」にご興味がございましたら、是非弊社までお問い合わせください!

■今回使用した製品

※ 製品・ブログ等に関するお問い合わせは、上記リンクページ下部の「お問い合わせ」よりご連絡ください。

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