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バスを降りたら信州でなく、甲斐の善光寺に着いた【山梨県】

甲斐善光寺本殿から見た

 善光寺がご開帳中(七年ぶり!)ということで、行こうと思ったのだった。駅でよく、広告を見かけていたので……。今年の六月十日はラッキーデーだとスピリチュアル系ユーチューバーが語っていたので、せっかくだから、そんな日にパワスポに出かけてみるのもよいのではないか、と。

 先日西国巡礼を終えたので、お礼参りというやつをしてみようかなとも思っていた(いや、すぐにやりなよ、とう話だが)。
 なんで善光寺が西国巡礼のお礼参りなのか? 関東からでかけていた人が、巡礼を終えてから寄る、というのが昔はトレンドだったそーな。まあ「一生に一度は行っとけ!」という場所だったそうです。現代人、気軽に行けて便利になったな。
 あんまり深く考えず、乗換案内アプリで検索をしたら、高速バスで行けそうである。なので気軽に新宿バスタにでかけた。お、善光寺行き、あるね〜、とさっさとチケットをとった。

 読書などしながら呑気にバス旅である。窓の向こうは緑、旅行気分も高まります。
 途中で笛吹川を横切る、おお、これは深沢七郎先生の……、などとテンションが上がる……が、
 あれ?
 そもそも善光寺ってどこでしたっけ? 乗換案内を見る。山梨県の善光寺、とある。
 はて?
 山梨県だっけ?
 善光寺のサイトを確認してみる。
 ……あれれ〜、おっかしいな〜〜。
 そう、「甲斐善光寺」に向かっていました。僕がいくつもりだったのは、「信州善光寺」でした!
 なるほど、善光寺っていっぱいあるんだね。いや、それは知っていたけどさ。ちゃんと確認しろよ、自分。
 乗換案内に騙された(主観です)のは、西国三十三所でもあった。なにもかも、出かける前にちゃんと調べなかったから。

 というわけで、善光寺のバス停に降りた。そこからいきなりホームページ確認、勉強である。

「開基武田信玄公が川中島の合戦の折、信濃善光寺の焼失を恐れ、永禄元年(一五五八)御本尊善光寺如来像などを奉還したことに始まります」(ホームページより)

 武田信玄である。赤と黒のエクスタシー!(『天と地と』)
 たしかに山梨に当時住んでいた友達がお土産によく信玄餅をくれたぞ。甲府、武田信玄ゆかりの場所があちこちにあるのである。
 それはわかっていたんだけど、まったく用事もなかったのでこなかったなあ、と思いながら善光寺へ。
 なんとこちらの善光寺も御開帳があったのであった。信州以外にも、五つの善光寺でも御開帳が同時開催されていたのであった。なのでウキウキと入っていきましたとさ。限定公開が大好きなので。

 お土産物屋で羊羹の試食をして腹を満たし(昼飯食べるの忘れてた)、さっそく線香をつけ、本殿に……と思っていたら、僕の前のカップルが、線香に火をつけるのに苦心していた。
 カップルの彼女、「ぜんぜんつかない」と。
 ちょっと風があるからだろう、彼氏が盾になってやりゃいいものを、と思いながら待っていると、彼氏が「もっと火に近づけなきゃ」なんてさっさと線香を差して待っている。いや、手伝ってあげろよ。このカップルの行く末を案じる……こともなく、回向柱に。本尊と紐で結ばれているので、柱に触れることで本尊に触れたこととなるのだ。

 さて、本殿である。特別公開、とはいえ、一応幕がかかっており、幕の中に入れば阿弥陀三尊像を見ることができるようになっている。

 かなり間近で拝むことができた。正座をしてじっくりと眺める。かつて秘仏(現在は信州)の前立仏としてあったそうである。かなり存在感がある。信州善光寺の御開帳は、その絶対秘仏と同じ姿の前立本尊が観れるらしい。
 そう考えるとなんでか甲斐にきてしまったけど、その信州への前段階としてやってきたと解釈してみてもよいのかもしれん(ポジティブ)。

 天井には鳴き龍、が描かれている。巨大な龍二匹、眺めながら手を叩くと、反響して龍が鳴いているみたい、になる。これがけっこういい響きなんだよね。ちゃんと「ここで叩くとめちゃ音が共鳴するぞ」という場所があった。

 そしてお楽しみの「戒壇廻り」である。暗闇をのなか、おそるおそる壁づたいに歩き、途中にある鍵に触れると幸せに……ということである。このての胎動巡り的なものが大好きなんだけど、そしてこういうのって、「途中にある××に触れることができたら仏様とご縁が」ってよくあるけど、うまく見つけたことがない。
 ああ、今回もご縁をいただくことができないのだろうか、と思いながらそろそろと歩いていると、前の方で、「ここ曲がるわよ〜」「気をつけて〜」などときゃあきゃあ言ってるマダムの声が。それはそれで興醒めだよ、と思いながら進むと、「ここよ! ここにあったわよ!」などと、みんなで鍵穴みつけて騒いでいる。そこか! と思いながら慎重に壁を触りまくっていたら、見つけた! ありがとうマダム、おかげさまでご縁を結ぶことができました。

 ぎりぎりセーフで土産物屋さんでさきほど試食した羊羹を購入できたし、なんやかや充実してしまった。よい「気」が漂っていたしね。←知ったかぶりみたいな発言

 結局、長野でなく、なぜか山梨にきてしまったのだが、甲斐善光寺、面白かった。ちょっと気ままにきすぎたせいで武田神社に行ったりと巡ることができなかったのが残念である。また、行きたい。そして駅前で売っていたソフトクリームが美味しかった……。
 かえりは「あずさ」に乗ったんだけど、窓側の指定席は全部埋まっていた。
 まあ、いいか、と思って山賊焼弁当を食べたり。隣の女性が立ち上がり、お手洗いのほうに歩いていったら、途中でいきなりぶっ倒れ、車内が一時パニックになったり(無事でした)、と最後の最後まで、今日はなんだったんだ……という一日だった。

 教訓は、ちゃんと下調べして旅に出ろ、である(結局!)。


甲斐善光寺

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