北城 駿

北城 駿

最近の記事

あの人は今 筆頭は横須賀にいた!?

今でもたまに思い出すことがあるんだよ。 眠れない夜にツイッターを眺めている、そう、こんな夜に。 もう何年前だったか、俺は筆頭さんにフォローされた。 筆頭? すぐググって意味を調べたら「筆の先」だって。 イヤらしい名前だな。筆おろしの先っぽ? 亀頭かよ! 間もなく通知が止まらなくなる。真夜中のふぁぼ爆だ! なんて奴だ。マナー違反もいいとこだろ。 シコシコせっせと俺のツイートを片っ端からふぁぼってやがる。 オイ!シコるのはお前の亀頭だけにしろよ。 後から知ることになるのだが、筆頭

    • あるフォロワーさんへの手紙

      いつからだろうか、足りないものを嘆いて、欲しいものを探してばかり 人の命が地球より重いかけがえのないものだというのなら、 人は生きているだけで既に一番大切なものを手に入れているのに それはもう奇跡をかかえて暮らしているようなもの それでもなお、あれもこれもと、手を伸ばし 手に入れたものをたくさん抱え、 さらに手に入れられなかったもの、失くしてしまったものへの執着と後悔で やがてがんじがらめになって身動きが取れなくなってしまうのだ もしあなたが足りない自分を嘆いてしまう時は

      • 午前6時のカレーライス

         私が妊娠してから、夫の勇司は朝のジョギングを始めた。子を持つ親として、体力をつけなきゃいけないと言って。それまでいつも出社ギリギリまで寝ていた勇司のことだから、どうせ長続きしないだろうと思っていたら、昔陸上部だった血が再び目覚めたとか、朝練を思い出すとか騒ぎながら、雨の日以外はずっと走っていた。  何を勘違いしたのか知らないけど、私がいよいよ陣痛が酷くなって夜中に分娩室に運ばれる時も、「お前が頑張っている間、俺も頑張る」と興奮して病院の周りをランニングしてたくらいだ。もっ

        • 午前4時の肉うどん

           まぶたを開くと俺は薄暗い照明の中にいて、一瞬ここがどこだか分からなかった。 「ん……、ごめん、寝ちゃってた」  見慣れた調度品と、堅いけど座り心地のいいソファー。行きつけのスナックのテーブル席で、だらしなく正体を無くしていた俺の体には、派手なブランケットがかけられていた。 「初めてね、シゲちゃんがお店で酔いつぶれるなんて」 「本当ごめん。悪酔いしたみたいだわ」 すぐに状況を把握して、俺は謝った。 「まあね、そんな夜もあるでしょ。はい、お水」 ママが、俺が座って

        あの人は今 筆頭は横須賀にいた!?

          午前1時のポテトサラダ

          「そろそろ終電。帰らなきゃ」 時計のデジタルは、0時33分。シンデレラだったら大遅刻だ。 「いいじゃん泊ってけば」 祐司はゲーム機に顔を落としたまま言う。 「腹減った。なんか作ってよ」 目的はそれか。駅まで送ってもらうことは諦めていたけれど、こんな夜中に飯炊きババアにされるとは。 「なんでもいいからさ」 そう簡単に言うけれど、冷蔵庫を開けても缶ビールとペットボトルの飲みものくらいしか入ってない。キッチンにある食材はパスタの麺、それから…… 「じゃがいもたくさん

          午前1時のポテトサラダ