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とりあえず今、書きたいこと。

最近書きたいことが浮かばなくなってきた。

ここのところずっとゲームをしている。本を読むことも少なくなったし、新しい体験もなかなか無い。人と接する機会も少なくなり、初対面の人と話すこともなくなってきた。

しかし改めて考えると、エッセイのネタは結構色々ある。noteもお題をいくつか出していて、多いときは10個くらいのお題が同時に募集されていた。それに沿って書くこともできる。人と会わないとはいえ、イベントが全く無いわけではない。友達の文章を推敲したり、本をつくる計画がまぁあんまり進んでいないし、父との関係も変化してきた。仕事の話とか、制約こそあるものの色々と書くネタはある。問題は、今書くべきかだ。

エッセイはタイミングが一つ重要だ。限りなくどうでもいいことを書くことを素直に書くことを大切にしている。だからこそ、今が渦中と言える話はなかなか書くことができない。

「昔こんなことがあってね」

そんな風に、懐かしさを感じながら話せる日が来るまで今日の苛立ちや不平やストレスはとっておかなくてはならないのだ。いずれ、何らかの形で解決して「思ったより大したことなかったな」と思える日が来るのかもしれない。しかし、そういう日が来るように努力するのが今の自分に与えられた役割でもあり、そこを超えなくてはエッセイのネタとして使うにはあまりにも未熟で傷つきやすいものになってしまう。

キッチンタイマーは、人生の裏アカウントだ。表側の生身の自分が体験したことを「あの時、こんな風に思っていました」と相手に伝わっても良いものを選んで書く。私の書いたエッセイをきっかけにして、何かを変えようとするのは、ルール違反だ。あくまで感想文であり、結果が出たものに対するコメントである。

なにより、裏アカウントではあるが鍵アカウントではない。このエッセイは読もうと思えば誰でも読むことができる。他のエッセイに埋もれてしまうと、たどり着くのは大変かもしれない。しかし、一番新しいエッセイは、多くの人の目に触れる。その中には友達が居るかもしれないし、家族がいるかもしれない、恋人も読んでいることだろう。目に触れるタイミングによっては、深く人を傷つけることもある。

タイミング、というのは本当に難しい。自分の気持ちの整理がついたとき、文章を書き上げる体力があったとき。この2つの私のタイミングに加えて、読む人が私の文章を読む準備ができていた時というタイミングが重なってようやく、文章が人の心に届く準備ができる。あとは、その時の文章の文体だとか、読みやすさとか、技術的な精度が加算されてグサッと人の心に突き刺さるのだ。

タイミングと、精度が合致したとき、心を揺さぶられる。そんな瞬間を何度も目にしてきた。

以前、恋人が漫画を読んで泣いていたことがある。高校のコンピューター室で、一人漫画を読んでいて恋人が泣いていた。あひるの空というバスケットボールの漫画だったと思う。生まれつきの体格差が埋められない主人公に、母親が言葉をかけるシーンだった。涙を拭く恋人を見たとき、私は悔しくて仕方がなかった。

「なんで、あの手の中にある本は、私の書いた小説じゃないんだ」

私の文章は、恋人を感動させることができるのだろうか。そんな問いも、同時に私に突き刺さった。そしておそらく今日まで、私の文章は恋人を泣かせるに至っていない。

誰かの心に響きたい。誰かの心に残りたいと、それから何度も考えていろいろ試してみたのだがめっきりうまくは行かなかった。誰かが誰かを助ける度に私は「どうしてあそこに私がいないんだ」と、呪いのように呟いた。自分が手を差し伸べても、全くうまく行かないこともあった。かえって、状況が悪化したこともある。そして、その後を誰かがまとめていく度に「なんで私にはできないのだろう」と、ヒーローを羨んだ。

助けたい人を助ける時に、私はいつも力が足りない。この人を喜ばせたいと思うときも、私はやっぱりズレてしまう。

「ありがとう」

「面白かった」

「こんなこと考えた」

それを私は、今、言うべきなのか。それが、何のためになるのか。誰の役に立つのか。なんの意味があるのか。大切な人を傷つけるリスクを背負ってまで、言うべきことなのか。

いつの間にか、何重にも張られた心のバリアがいつの間にか書く手を止めていた。

間違っているかもしれない。今ではないかもしれない。それでも、書く。そこまで踏み切れていた昔の私は、本当にすごいなと思う。

今日の私も、なんとかここまで文章を書いてこられた。

伝えるべきなのは今ではないかもしれないけれど、私が生きているのは今しかないので、タイミングは読む人や偶然がうまいこと調整してくださいねと、思いながら、エッセイを書く。

書きたいことは、きっとまだある。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。 感想なども、お待ちしています。SNSでシェアしていただけると、大変嬉しいです。