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これを書いたのは、誰だい?

卒業論文を書くために、参考になりそうな論文を読んでいる。

これ誰が書いたのよ、ソースは? 根拠は? そんなことを思いながら読んでいると、さっきまで何を考えていたか忘れてしまう。赤ペンでメモしたり、コメントを書いたりできればいいのに、液晶画面ではなかなかそれもうまくいかず、画面にペンで書くわけにもいかないので、なれない機能を使って気になるところに後から思い出せるようにコメントをするよう心がける。

画面を流れていく文章を読みながら「このまま手元に紙で現れないかな」と都合のいいことを思う。画面で書類をチェックすることが珍しくなくなった昨今、私は未だに紙を知らず知らずのうちに欲する呪縛から逃れられずにいる。パソコンを閉じて、研究室を出て電車で帰る。Twitterや漫画はスマートフォンでも読めるにもかかわらず、小説や論文は紙で目を通す方が読みやすい気がする。書き込みをしたりフセンを貼ったり、自分の手で「ここ大事!」と目印を付けやすいのはまだまだ紙だと思う。

同じように紙が好きな人というのはやはりまだ一定数いて、電子書籍も登場したけれど、まだまだ紙の本を持つ人をちらほら見かける。それから、スマホを手にしている人も何か読んでいるのかもしれないけれど、みている先がニュース記事なのか、夏目漱石なのかは全くわからない。

本を読んでいる人は「本読んでます!」と宣言しているといっても過言ではないほど、何をしているのかわかる。最近はおしゃれなカバーをかける人もいて、読んでいる本のタイトルまではわからないけれど、本を読んでいるということはわかる。しかし、スマホは確かにスマホをいじっていると言うことはわかるけれど、それはゲームなのか何か書いているのか、読んでいるのかを一瞬で判断することはできない。

例えば、私は今スマホに向かっていて、しかもしきりに指を動かしているので、何か文章を打っているというところまでは推察されるだろう。しかし、本のタイトルと同じくエッセイを打っているというところまではおそらくわからない。今目の前には、座ってパソコンをにらみつけている人がいる。……こそっ、と様子を見る。何かを打ち込んでいる様子はない。それに、イヤホンをしているわけではないから映画を見ているわけではなさそうだ。何か文章か、漫画を読んでいるのだろうか。……と、このくらいはじっくり見ないと、パソコンをいじってるなぁ。くらいしかわからない。わかる必要も、あまりないのかもしれないけど……。

noteもスマホで読む。パソコンで読むことはほとんど無いし、紙に印刷することはもっと無い。シャーーッと、流すように読んだり、イラストにぽちぽちスキをつけたりする。

「……この人たちは普段なにをしているのだろう」

イラストレーター。作家。主婦。フリーター。このあたりはプロフィールに所属や肩書きや今まで出された作品があるのでよくわかる。私は「3分くらいで読めるエッセイを書いています」というプロフィール欄で突き通しているので人のことを言えた義理ではないが「あなたは何者?」というときに参照できないミステリアスな方も結構いる。でもおもしろいから、とnoteを読むうちに、少しずつどんな人なのかわかるようになってくる。

しかし時々、猛烈に今すぐプロフィール欄を見たくなる人がいるのだ。昨日noteで見たのは中原優香さんという方のエッセイだった。中原さんの1行目から2行目にかけての表現力がズバ抜けて良い。ほんの些細な日常が、映像のように浮かんでくる。

「なんだこの文章! すげぇ!」と目を見開いた。

何をしている人なんだろう。noteを追いかける。やはり良い。例えば体調が悪いにせよ、皿を落としたにせよ、京都のような女になりたいにせよ、その序盤の文章の引きに私は思わずプロフィール欄を確認した。

「なるほど、エッセイストになりたい女子大生か」

端的に自分が表現されていた。思わず膝を打つ。文章がうまいわけだ。

noteはプロフィールを最初に読むことは無いのだな。とそのとき初めて実感した。繰り返しになるが、一方の私は「3分くらいで読めるエッセイを書いています」である。

「お? ワシの投稿気に入ってくれたんか。ああ、ワシはこういうもんじゃぜ」というのがnoteにおけるプロフィールであって、はじめましての時に渡す名刺や自分のnoteを読んでもらうために見せるものとはまた違う。

もし、私が書くなら、何になるのだろう。

「元引きこもり、今は大学で心理学を学んでいて、本を作る傍らエッセイを書いています」

……多いけれど、例えるなら、こんな感じの文章を乗せる方がよいのだろう。この文章もどこかで誰かがスマホで読んでいるのだと思う。万が一にも書き込みをしたり、フセンを貼るような文章ではない。だから、スーッと読み飛ばされてしまいそうな中で、誰かが目を留めて、ここまで読んでくれたことになる。そしてもし「誰が書いたの!?」と思ったときに読むプロフィールは、日頃の文章には書かない自分の情報を添えるほうが良い……ようだ、まだ何もやっていないので断言はできない。しかし、近く私のプロフィール文が変わっていたら、すてきなプロフィールに影響を受けたせいです。

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