全体最適なKPI設定を!

このツイートの件です。

言いたいことは以下です。

・従業員が自分本位なアクションを取る要因は、たぶんKPI設定にある。
・KPIが単一だと、期待とは異なる手段でKPI達成を図ることがある。
・改善方法は、複数KPIを集約したKPIを作り出すこと。
・この問題の本質は目標設定の失敗。だから責任はマネジメント層にある。

今回、上記ツイートにあるヘルススコアには触れません。僕自身がCSMではないためです。ただし、もしかしたらそれに近いかもしれない手段について、『複数目標を集約したKPIの設定』として触れています。

本記事の経緯

先日、カスタマー視点でカスタマーサクセスを語るイベントに参加してきました。

後半のパネルディスカッションで出てきたよくないCSM(カスタマーサクセスマネージャー)の例が、このnoteのきっかけです。

よくないCSM
・営業色の強いCSM
・クライアントのコンディションやタイミングを考慮しない提案
・クライアントの文化や大事にしていることを理解しない提案

このポストでは、上記の現象を「自分本位」と呼ぶことにします。実はBtoCで似たようなケースに当たり、KPIの変更で解決した経験があります。参考になればと思い知見を交えて書きます。

自分本位の原因は、部分最適な目標設定

僕は、自分本位が起きる原因は、部分最適な目標設定にあると考えます。

目標を設定されると、達成のためのアクションをとります。真面目なほど目標を達成する手順をしっかりと考えるでしょうし、効率的な遂行も考えるでしょう。それは全くもって正しいですが、ふと周りに目をやった時に間違っている場合があります。

カスタマーサクセスを例にあげます。セールスチームが獲得した顧客とコミュニケーションを取ってみると、顧客の要望と解決できる課題がミスマッチしていたことはありませんか? こういう間違った顧客に販売することを苦々しく思った経験は? これはセールスの目標設定が「獲得」に特化した部分最適で、カスタマーサクセスには最適化されていないことで発生した例です。

カスタマーサクセス担当者なら『カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』(通称:青本)にある「正しい顧客に販売しよう」に深くうなづいたと思います。その状況にあると考えてください。

逆に、カスタマーサクセス担当者が「アップセル」という目標だけを与えられたら? おそらく達成のためにクライアントを考慮しない提案を行ってしまうでしょう。強い心でそれを拒絶したとしても、自分の評価・報酬に関わるとしたら、知らず知らずのうちに自分本位なアクションになってしまうかもしれません。

全体最適な目標設定

要は、部門・部署に特化した部分最適でKPIを設定することに原因があります。ということは、企業・事業の全体を俯瞰した全体最適でのKPI設定ができれば解決すると考えられるでしょう。

このパターンでとてもインパクトのある例が、下記イベントに登壇したSlack社より語られています。

Slack社では、全社の羅針盤にARRを置いているそうです。セールスも、カスタマーサクセスも。

社としての方針が、適切に従業員へ落とし込まれている好例と感じます。ARRを羅針盤にすることで、セールスは間違った顧客を獲得せず、カスタマーサクセスは不要なアップセルを提案しません。個人的にも、とてもお気に入りな事例です。

とはいえ、Slack社までドラスティックにはできなくても、何らかの変更で対応することは可能なはずです。カスタマーサクセスで考えてみましょう。

・もし目標が解約阻止ではなく、改善要望のヒアリングだったら?
・もし目標がアップセルではなく、機能追加要望のヒアリングだったら?

上記の書き換えが正しくないケースもあるでしょうが、少なくとも書き換え前と比べて自分本位なアクションにはならないだろうと思います。

経験事例

僕も似たような経験をしています。

ある単品リピート通販(同じ商品を繰り返しご注文いただくタイプの通販。代表的な商材は健康食品や化粧品)の広告対応コンタクトセンターで起きたことです。

単品リピート通販のビジネスモデルでは、広告出稿コストはすぐ回収できません。定期コース(毎月・隔月など定期的にご購入いただくコース)へのご加入をお客様へ提案し、長期的にご継続いただくことでコスト回収・収益化を狙います。

そのため、管理下にあるコンタクトセンターのKPIに定期率を設定し、より多くのお客様に定期コースをお選びいただければ目標達成、という運営をしていました。

結果として、定期率はうなぎ上りに上昇。運営は順調に見えたのですが、残念ながら落とし穴が見つかります。少しした頃に継続率(解約率の逆)がどんどん悪化していることがわかりました。

詳しく調べると、定期率を上げるために「1回でやめていいですから」という文句を多用していることが判明。1回でやめてしまっては、投下コストの長期的な回収は期待できません。しかも継続率は後からわかる数字のためすぐに気づけず、痛手となってしまいました。

誤った目標を達成していた!

この経験で、部分最適の目標設定はNGと学びました。

本来の目的である『定期コースで長期的にご継続いただく』を理解していれば「1回でやめていいですから」など言うわけがありません。しかしKPIを定期率としてしまったために、継続率をないがしろにしたトークを行なわせてしまいました。

もちろんCOMさん(コミュニケーターさん。電話対応をしてくださる方)には決して自分本位な方はいませんでした。しかし部分最適な目標がCOMさんの目を曇らせてしまい、目標達成に向けた短絡的なアクションを起こさせてしまったのです。

しかもこの状態を改善させるのには、1年以上を要することになりました。なぜか? それは目標を達成していたためです。

間違った目標設定であったとしても、目標達成には快感が伴います。達成しているのに何故指摘をされなければいけないのか、と現場からの反発は根強かったです。こればかりはどうしようもないというか、一度間違った方向に行かせてしまったことの業として受け止めました。

心の問題は時が解決することを待ち、KPI設定の問題を解決にかかります。

複数の目標を集約したKPIの設定

結論から書くと、何のために定期率と継続率を見ているのか?をKPI化することで解決しました。

KPIは以下へ変更しました。
・定期率×継続率=新たなKPIと設定
・定期率、継続率ともに足切りラインを設け、報酬への影響を明確化

新たなKPIは継続顧客獲得率とでも呼ぶべきもので、広告投下コストを適切に回収できるであろうラインに設定されています。新たなKPIを設定したことで、なぜ定期率と継続率どちらも重要なのかが明確になり、また数値上でもそれが結果として残るため、運営方針がハッキリするようになりました。

加えて足切りラインを設けました。新たなKPIは、定期率か継続率どちらか一方を限界まで上げることで高い数値になるかもしれません。ただし、数値のあげ方が不適切だと2つの値がシーソーの関係になり、もう一方が不当に低くなってしまいます。高定期率×低継続率ではCXが悪い。低定期率×高継続率ではコンタクトセンターが不要。加えてどちらも事業にメリットがないと考え、足切りラインを設けることで高定期率×高継続率を目指す流れを作りました。

ただし前述のとおり、マインドリセットには時間がかかりました・・・。新しいKPIは難易度が上がった(というか間違った目標設定のせいで短絡的な行動が許容されていた)ため、なおさらでした。辛抱強く1年をかけ、そこからさらに時間の経った現在では問題なく機能しているように見えます。

目標設定はマネジメントの責任

ここまでKPI設定の大切さを書きましたが、もちろんKPI設定はマネジメント側の責任です。従業員側は、目標に向かって邁進するのみでしょう。本当はそうでない方がいいのですが、評価や報酬に繋がる以上、マネジメント層は覚悟を持ってKPI設定をすべきです。

楽に高評価を得たいという考えや、成果と効率のどちらも取りに行く姿勢は間違っていません。だからこの問題の責任は、目標設定するマネジメント層にあると考えます。

というわけで、マネジメント層は複数目標を統合して評価できる仕組みを作りましょう。そしてCSMも部分最適な目標に惑わされず、カスタマーのサクセスを実現できる手段を模索していきましょう。

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