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新ナニーゲート、トランプ 政権の国連大使候補が辞退

1993年、クリントン政権で司法長官候補になった女性ふたりが指名を辞退する事態になったとき「ナニーゲイト」というフレーズが使われた。

四半世紀以上たってまだ、同じことが起きるとは。

以前、FOXニュースのアンカーだったヘザー・ナウアートが国務省のスポークスパーソンになったとき冗談だと思ったと書いた。冗談どころか、彼女はスポークスパーソンから国務省のナンバースリーである国務次官にまで出世し、その上、現在空席になっている国連大使に指名され、じきに公聴会が始まることになっていた。

その続報。彼女が国連大使の候補を辞退したという。公聴会前の調査が行われていたこの二ヶ月は家族にとってつらいものだったため、家族のために辞退を決めたと発表した。

報道によると、彼女の子供達の面倒を見ていたジャマイカ人の子守、つまりナニーの問題らしい。大使になるには議会の公聴会があり、そこで厳しい質問ぜめに耐えらえるかが重要なため、公聴会前には本人だけでなく家族や人間関係についての詳しい調査が行われる。

メディアによって細かい内容が違うので、本当のところははっきりしない。当初、ナウアートの子守が不法滞在していたという話が出たと思ったら、いや、不法移民ではなかったが、アメリカ国内で働く労働許可を保持していなかったらしいという。不法移民対策を最重要課題にしているトランプ 政権の大使でそれはまずい。かと思うと、いやいや、不法移民でもないし、許可もあったが、ナウアートと夫が、子守への報酬をキャッシュで支払い、税金を納めていなかったという報道もある。

いずれにしても、もともと外交経験も国際関係の仕事をした経験も無い人なので、公聴会を勝ち抜くことができないと判断されたのだろう。

1993年のナニーゲイトは、最初の司法長官候補の女性が子守(ナニー)と運転手として違法滞在の移民を雇用し、納税していなかったことが判明して辞退せざるをえなくなり、次に指名された女性にも同様の問題が明らかに。ただちに辞退した。クリントン大統領は司法長官に女性を任命したいと思っていた。結局、女性初の司法長官の地位についたのは子供のいない(従って子守を雇う必要もない)ジャネット・リノだった。

現在、トランプ 大統領が不法移民を大問題と言うのが偽善的だとの批判がある。アメリカの(トランプ 大統領のホテルやレストランを含め)多くのビジネスが安く勤勉な労働力、不法移民に支えられているからだ。1993年当時、働く女性は子守を不法滞在の外国人に頼らざるを得ないケースが多いと言われていた。みんながやっているからと言って、不法な雇用をしていた人が司法長官になるのはまずい、という判断は当然だっただろう。でも、そもそも、司法長官の候補者が男性だったら子守のことなど誰も気にしなかったはず。それまでに長官に任命された男性たちがその家庭で子供の世話をするスタッフについて問われたことなど一度もなかった。この問題そのものが女性差別だという議論になっていた。

そして2019年の今。そもそもヘザー・ナウアートに国連大使になる資格があったのかという疑問があるが、私は彼女に同情する気持ちもおきている。FOXでゆるいニュース番組の司会をしていた彼女は、まさか自分が国務省の上級スタッフになり、国連大使候補にまで出世するとは思わなかっただろう。少しでもそんな野心があり、可能性があると思っていたらナニーを雇うのにも細心の注意をはらったはずだ。

ついでに言うと、ナウアートは、トランプ 政権で初めてナニーゲイトに見舞われた人物ではない。

ミック・マルバニー行政管理予算局長代行も、予算局長に指名された時に、子供たち(三つ子だそうだ)の子守の給料に関して納税していなかったことが判明し、その直後に遅まきながら納税を済ませた。男性とはいえ予算局長が税金の件でしくじるのはまずい。議会での公聴会ではこの点をつかれたが、共和党が多数を占めていた議会では難なく公聴会をやり過ごして現在も局長を務めている。その後、消費者金融保護局長を代行していたこともあり、さらには、ジョン・ケリー大統領首席補佐官が昨年末辞任してからは、首席補佐官代行も兼任している。



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