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SNSでは向かうところ敵なし、アレクサンドリア・オカシオ・コルテスはどこまで行く

昨年、アメリカの中間選挙で歴史的な数の女性が当選したとき、「史上初」の議員が何人も生まれた。史上初のイスラム教徒の女性下院議員二人、史上初のネイティブ・アメリカンの女性下院議員、などなど。中でも話題はこの人、史上最年少の女性下院議員となった29歳のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス。Twitterのアカウント名はイニシャルの @AOC、オンライン誌などの記事では単に「AOC」と呼ばれることもある。

SNSでのポストがいちいち話題になる彼女のTwitterでのリーチはアメリカの政治家としてはトランプ大統領に次ぐ第2位だという。息をするように自然にSNSを使いこなすミレニアル世代のAOCが選挙運動にSNSを活用し、議員としてもTwitterやインスタグラムで素顔のわかる発信を続けているのは当然のこと。彼女がSNSの使い方を心得ているというよりも、オバマ前大統領、ナンシー・ペロシ下院議員などをはじめとする大物民主党政治家たちが、新人下院議員よりリーチが低い、ということのほうが問題なんじゃないの?と、みんな思ったらしく、一月中旬には民主党の議員仲間にツイートのしかたを教えるSNS教室を開くという話もあった。

新しいスターを渇望する民主党やリベラル派は彼女に夢中というか熱狂状態。ドキュメンタリー作家のマイケル・ムーアはつい先日、大統領候補の条件の年齢(35歳)が「30歳だったら彼女が候補になれるのに」と熱っぽく話した。ムーアは前回の大統領選挙の当日まで民主党勢が「ヒラリーで決まりだね」と浮かれていた時に「トランプに負ける」と言っていたほとんど唯一の有識者。本当のアメリカを知っているこの人の言うことを軽んじてはいけない。

保守派でもAOC人気に便乗しようとする政治家もいる。36歳と若い共和党のマット・ガエッツ下院議員は、「保守派のAOCになりたい」と公言しているほどだ。

でもほとんどの保守派は、民主党の中でも民主社会主義を標榜するAOCが気に入らず、なにかと彼女を叩いている。政策(特に富裕層への増税など)に正面から向き合うものだけではなく、彼女の「庶民派アピール」や育った環境、服装などにケチをつける、というなんだか情けないものが多い。しかもその批判が的外れなためにSNS上で逆に反発を集めたり、AOC本人からからかわれたり。若くて生意気な女の子に説教して逆襲されるという構図だ。

AOCの学生時代のちょっと恥ずかしいダンス映像が流出すると、AOC本人はオフィスの前でちらっと踊るビデオを投稿して大好評。

保守的新聞のライターが彼女の颯爽としたスーツの後ろ姿の写真を「(民主社会主義者を名乗ってるくせに)苦労してきた人間に見えない」とツイートしたときは「苦労してきた人間はキチンとしたスーツを着ちゃいけないのか」というバックラッシュの嵐。

当選前の昨年も、保守派のFOXニュースなどが合計数十万円のパンツスーツと靴でポーズをとる彼女に「民主社会主義者とか言ってるくせにすごい高い服を着て!」と鬼の首を取ったように騒ぎ、本人に「雑誌の撮影のことわかってない。撮影で着る服って別にもらえるわけじゃないんですけど」とツイートでからかわれる・・・などなど。

私がいいなと思うのは、自分の外見や服装が話題になると、「男性政治家にはこんなこと聞かないでしょ(失礼な)」みたいなことを言わず、さらっと対応すること。明らかにオシャレ好き、メーク好きなので、聞かれたら答えるのも自然だ。

最近では、お肌の手入れについて質問されて、スキンケアの科学っぽいところとコリアンコスメが好きで…と、スキンケアの詳細とメークのしかたをインスタグラムのストーリーでシェア。ダブル洗顔が大事と力説していた。

「お肌の手入れとかどうでもいいから選挙運動を成功させる方法は?」「スピーチ原稿の書き方は?」とまじめな質問が来ると、「選挙で勝つには人の話を聞き、彼らから学ぶこと」「いいスピーチをするには、たくさん本を読み、演説の達人から学ぶこと」などときちんと答える。どこまでも気負わない。

今のところ、ソーシャルメディアでは向かうところ敵なし。彼女が本当にリーダーになれるのか、試されるのは政策論争だ。早くからAOCに注目していたマイケル・ムーアが正しいのかどうか。

参考にしました


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