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トリイ・ヘイデンさん『うそをつく子―助けを求められなかった少女の物語―』~彼女が自分の人生を生きられるようになるまで~

 トリイ・ヘイデン,入江真佐子訳,『うそをつく子―助けを求められなかった少女の物語―』,早川書房,2021

 トリイ・ヘイデンさん「16年ぶりの新作」と帯に書いてあるのを見て、思わず手に取りました。私が10代の頃、クラスメイトの影響もありノンフィクション、小説といくつか作品を読んで以来の再会。もう執筆はされていないのかな、と思っていたので本屋さんでの出会いは衝撃でした。ハードカバーのため、迷わなかったわけではありませんが、これも何かの縁だと思い購入しました。

【感想】「愛着障害」と診断された9歳の少女ジェシーは、日常的に嘘をつく習慣がありました。トリイとのセラピーでは、彼女の話す内容が二転三転することも。そして彼女は、自分の思いどおりにならないことがあると暴力をふるってしまう傾向もありました。トリイがジェシーと過ごす時間の中で、なぜジェシーが日常的に嘘をついてしまうのかその理由が明らかになりますが、それは悲しいものでした。ジェシーと同じく傷を負ってしまっていた人がいたこと、その事実を公にすることで、彼女が守ってきたものを自らの手で壊しかねないと(彼女自身が)思い詰めてしまっていたこと。それを思うと、彼女が生き延びるために、今の環境を極力変えないために嘘をつき続けてきたような気がしてしまいました。わずか9歳の女の子が背負い込むには大きすぎる事実だったように思います。     ジェシーは、トリイの元でセラピーを受けている間に彼女の行動や精神面における大きな変化が見られたり(家庭で何が起こっていたかは話してくれました)親元に戻ることはありませんでしたが、最後には彼女が自分の人生を生きていることが分かる描写があります。ジェシーにとってトリイがどんなに大切な存在であるか、読んでいただければ伝わると思います。

 ここまで読んでいただき、ありがとうございます。