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Communication Artsの特集

アメリカのデザイン誌Communication Artsに特集されましたので、そのことを少し書いてみたいと思います。

最近の雑誌はインターネットで記事が読めることも多いですし、インターネットのメディアにインタビューされて、その記事が出ることもよくあります。そういう意味では、Communication Arts(以降CA)の特集も同じような感じで日々の慌ただしさに流されていってしまうのですが、僕にとっては全く重みが違うものなのです。

舟橋全二さんが昔にスイスのデザイン誌Graphisに特集されたほどではないかもしれませんが…。

CAは僕が絵の勉強のために渡米して最初に買った雑誌です。学校近くの画材屋にイラストレーション年鑑が置いてあって、詳しいことは何も知らずにそれとなく買ったのがCAとの最初の出会いでした。

僕はこの年鑑でアメリカのイラストレーションを知りました。絵の勉強に行ったといっても、最初はイラストレーションが何なのか全くわかっていませんでした。それが当時住んでいた寮の部屋でこの雑誌をパラパラと眺めるうちにどんどんのめり込み、自分のやりたいのはこれだと思うようになったのでした。

それ以来CAのイラストレーション年鑑は自分のバイブルのようになって、毎日そこに載っているBrad HollandやMatt Mahurinのイラストレーションを見ていました。ここで僕のイラストレーションに対するスタンダードが決定されたと言っても過言ではないです。ある意味では原点かもしれません。

そしていつかは自分の絵がこの年鑑に掲載されるようになりたいと思い、美大を卒業して以来毎年応募していました。しかし、CAは入選する絶対数が他の年鑑よりだいぶ少ないせいもあって、滅多に選ばれませんでした。あるとき、『氷河ねずみの毛皮』の絵が幸運にも入選してとても嬉しかったことを覚えています。

そのような自分にしては珍しく思い入れのある雑誌から特集に取り上げたいとメールが届いたのが、去年の10月でした。このご時世、雑誌の特集に昔のような重要性はなくなってしまったかもしれませんが、さすがにこの時は苦節27年自分もとうとうここまでたどり着いたかという感じでした。

CAは紙の媒体なので、ネットメディアがよくインタビューと称してメールで連絡してきて、メールで回答するタイプのものとは違います。日本の雑誌と同じですが、ライターが直接仕事場へやってきて、インタビューを受けました。ただ、アメリカからライターを派遣するには遠いので、12月になって日本在住のライターが訪ねてきました。

Rebecca Milnerさんという人です。

やはり編集部とは英語でやりとりすることになるので、英語も日本語も堪能な人でないといけないのでしょう。彼女が英語で質問して、僕は日本語と英語を混ぜながら答えるという感じでした。

記事が出るまでにはだいぶ時間がかかりました。アメリカの雑誌なので、インタビューイー(僕)が事前にゲラを確認することはできません。見せてはいけないことになっていて、つまり雑誌が出てみるまでどんな内容かわからないのです。その分、かなり入念なファクトチェックが行われます。そして雑誌に取り上げられるのは名誉なことなので、ギャラもありません。アメリカだとコンペの審査員も、名誉職なのでギャラは出ないようです。

実際に会ってじっくりインタビューしてもらったおかげで、とても深い記事になっていて嬉しかったです。ニューヨーク・タイムズのアート・ディレクターNathan Huangもコメントを寄せてくれました。最近僕がインスパイアされている日本のイラストレーターの名前も挙げさせてもらいました。ミチイトもその場に居たので、彼の発言も記事に採用されているのが笑えるところです。

英語なんですけど、是非読んでもらえると幸いです。

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25年以上フリーランスのイラストレーターとして生きてきた経験から、考えていることや考えてきたたことを綴ります。海外の仕事のことや、ときには…

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