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かなざわリージョナルシアター2021げきみる参加レポート

はじめに

本記事は、演劇ムーブメントえみてんとして、金沢市民芸術村アクションプラン企画「かなざわリージョナルシアター2021げきみる」に参加した感想レポートです。富山県で活動する演劇ユニットとして、隣県、石川県金沢市の劇場で公演をしました。

それにより、
・演劇ユニットの制作側として良かった点、気になった点
・一個人として参加した感想

などをまとめています。運営側からの意見、感想等はありません。参加側からの視点のみで書いてあるため、ある程度一方的な見解になる点をご了承の上、お読みいただけますよう、お願いいたします。

また、演劇ムーブメントえみてんの観客動員データ等が記事には含まれます。そのため、途中までは無料記事としてお読みいただけます。

観客動員データ等については、えみてん主宰にも公開許可を貰い、掲載しております。また、手動でデータを取得しているものもあり、必ずしも正確なデータであることを保証しませんこと、ご了承ください。参考程度でご覧ください。
また、観客動員データ等が含まれること、気になった点についてはその部分が本当に必要な方にのみ閲覧、限定して届くようにと思い、有料とさせていただきます。決して楽しい話題だけではないということもあり、このようにさせていただきますことをご了承ください。あくまでも個人が参加した感想、体感であることを承知の上ご購読いただけますようお願いいたします。

<演劇ムーブメントえみてんとは >

富山県内で活動する、天神祐耶(てんじんゆうや)とのとえみの演劇ユニット。

2018年結成。2018年の本公演『うそつき』に続き、2度目の本公演がげきみる参加作品『異邦人の庭』になる。
2018年公演の観客動員は、3日間4回公演で約156名/キャパ160。県内の演劇関係者内での知名度は高いが、一般のお客様へのリーチはまだまだこれからのユニット。

<かなざわリージョナルシアターげきみるとは >

金沢市民芸術村の主催事業のひとつ。
約2か月間に渡り、毎週末、金沢市民芸術村PIT2ドラマ工房にてお芝居を上演するという企画。ジュニア、シニア、演劇部、アマチュアなど、毎週末バラエティに富んだ作品を上演する。
2021年は、福井県、富山県からも参加劇団を募り、石川県を含めた北陸3県のお芝居を観劇できる、というのが売り。
2022げきみるの募集要項も公開されている。


<げきみる参加のいきさつ>

金沢の劇団、coffeeジョキャニーニャさんのyoutubeライブにゲストとして、仲介をして下さった方と出演。その後、げきみるディレクターより、げきみるに参加してほしい旨のオファーがあった。

・北陸3県の劇団参加が今回の売り
・金沢の団体に外部から刺激を与えて欲しい(マンネリ化している)
・げきみる参加団体の募集はしていたが、他県からの応募が無かったため、声をかけた

福井ではどうだったかわからないが、そもそも「げきみる」という企画が芸術村で行われていることを知らなかった。(=募集も他県には届いていない可能性が高い)

参加側からとしては
「頼まれたから参加する」
という気持ちだったが、
げきみるディレクター側としては
「応募してきた団体と変わらず、げきみるに関わるミーティングや割り当てられた仕事はやってほしい」
という印象だった。


げきみるに参加してよかった点

● 演劇仲間が増える

演劇仲間、知り合いが増えた。
未開拓の地で、演劇仲間が増えるというのは、何物にも代えがたいものだと思う。

気になった点としてこの後「経費がかかる点」も挙げるが、団体によっては、「演劇仲間が増える」ということによってペイできてしまうだろう。演劇仲間を増やしたい、もっと広い地域で活動したい、という団体にげきみるはおススメできる。

毎週末芸術村に金沢を中心とした演劇人が集まってきてくれる。そこに顔を出すだけで知り合い、仲間が増えていく。えみてんの公演にも沢山の演劇人が観劇に来てくれた。えみてんの公演翌週に公演を行う団体以外は、ほとんど来てくれたのではないか、というくらい、演劇人が集まっていたように思う。「経費<演劇仲間」という価値観の団体であれば、げきみるはとても良い企画だと思う。

さらに作品への評価や、役者個人に興味もついてくれば、公演後SNSを通じてのやりとりが増える可能性もある。

私個人では、twitterだけでなく、LINEでのやりとりもあり、より密接にコミュニケーションをとってくれる演劇仲間に出会えている。富山県内だけでは限られた演劇人口であるし、今までの観劇や活動により、それぞれの団体の力量、カラーも推し量れる。それを超えて、まだ見ぬ出会いが生まれるというのは何物にも代えがたいものになりうるだろう。


● 富山県内にはない劇場、環境で舞台公演ができる

金沢市民芸術村のドラマ工房の環境はとても素晴らしいと感じた。

やや電車の音が気になるものの、空調設備を切ってしまえば、ほぼ静寂を作ることができる。使用料も安く、稽古から本番まで、芸術村の施設をフル活用できる。

芸術村と富山県内の劇場を比較してみた結果は次の通りである。

利賀村の演劇が有名で、演劇に力が入っている県かと思われがちだが、演劇公演をするにしては劇場事情がかなりシビアである。一番人気は、富山市民小劇場オルビスだが、音楽関係やそのほかの催しにとっても都合がよい会場であり、会場を押さえることが難しくなっている。

会場費と密接に関係してくると言えばチケット料金であろう。チケットの売上収入=会場費という団体も多いかもしれない。県内の会場は、チケット料金の設定によって使用料金が変わる場所が多い。それゆえに、チケット料金を高めに設定したくても会場費との兼ね合いにより設定を躊躇する団体もあるのではないかと思う。

過去の公演履歴をwebサイトに掲載していなかったり、更新されていないwebサイトもあり、意外と調べるのに時間がかかった。自団体もこまめに更新しなければと感じさせられた。

こういった劇場環境の富山県からしてみれば、金沢市民芸術村はかなり魅力的な場所だ。いつでも演劇ができる環境があり、機材等も揃っているこの場所で公演ができるというのは、かなり自由度が高くなるのではないだろうか。環境の問題で上演しにくい作品も、芸術村ならばできる可能性が高まるはずだ。(芸術村は稽古場であって、公演場所ではないという点も耳にしているので、公演場所として並べてしまうのは一般的ではないかもしれないのだが…)

さらに、げきみるでは劇場の使用料は運営側で負担してもらえる。安い金額設定とはいえども、会場費が無いのは大きいだろう。


● 県外で公演するという特別感、ステータスを得られる

富山県内に対してで言えば、県内以外でも活動している、というのは一種のステータスになりうる。県内では、肩書に対する特別感なども根強く残っており、他の劇団ではやっていない活動、というのは同じ演劇活動をしている他団体との差別化になるだろう。

また、県外で高評価を得た、という結果も今後の活動に対しては良い点だろう。得点や優劣が付くわけではないが、お客様からの感想や評価は目に見える形で残るため、次回以降の公演などで、アピールできる点になる。

げきみるで言えば、劇評講座があり、講師からの指導や添削が入った劇評をもらうことができる。講座受講生は、げきみるの全公演を観劇し、それぞれに対し劇評を書く。劇評ブログで公開され、誰でも見ることができる。他団体との比較にもなり、団体や作品の評価としても受け取れるだろう。

公演初日からtwitterにはえみてん公演『異邦人の庭』への感想がたくさん流れた。今まで以上に多くの感想をいただき、その感想を見て観劇に来た方も少なからずいたのではないだろうか


● 縁があれば他の団体から誘ってもらえる

「演劇仲間が増える」という所から発展し、気があう役者や団体と出逢えれば、それが次の作品につながる可能性も十分にあるだろう。

金沢⇔富山(自身の県)という距離はあるが、それらに問題を感じなければ、金沢の団体や公演に参加するということも可能だろう。

げきみるの期間中だけでも、金沢周辺での公演がげきみる以外に2本、それ以降にも見られた。演劇人口が明らかに富山よりも多く、演劇をするという土壌も強い。

今回初参加だったが、
「この役者さんと会わせてみたい」
「この役者とお芝居をしたらどうなるのか見てみたい」
という話を、金沢の役者さんから言われた。

こういった縁のつながりが生まれやすく、発展すれば、客演や合同公演、プロデュース公演というのも実現するかもしれない。
もちろん、誘われるのを待つだけではなく、自分から誘い、富山(自分の県)に新鮮な風を送り込むこともできるのかもしれないと感じた。


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