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黒見セリカってとんこつラーメンだよな

 ブルーアーカイブのアニメが始まった。
 僕はまだエデン条約編を読み終えていない新任教師だが、アドビス対策委員会もゲヘナ風紀委員も便利屋もみんな大好きなので楽しみである。

 今回は黒見セリカの話だ。なんとなく中野梓を髣髴とさせる黒髪ツインテール。おまけで猫耳もついてくる。キャラとしても、たいへんわかりやすいツンデレだ。そんなところもあずにゃんっぽい。
 セリカのキャラクター付けは、ゼロ年代臭がすごい。王道を通り越して、古典の域にすら達している。「令和でこんなキャラ見ることあるんだ!?」と思ってびっくりしちゃったもん。

 僕はツンデレ分野については素人もいいところなので、その歴史について深く論じることはできないが、それでもセリカくらいコテコテのツンデレキャラは、2010年代発の作品にはもうほとんどいなかったような気がする。
 エヴァのアスカのように、甘えの裏返しとしてギャンギャン相手に噛みつく刺激的なツンデレキャラは、「ツンデレ」という名前が付いたことで消費が高速化されたような感じがある。あずにゃんですら、ツンデレとしては割と後期型だ。ザクⅡとザクF2型くらい違う。

 ただ、「好意の裏返しのツンケンした態度」というのは当然旨味が凄いので、そのノウハウ自体は、多様なキャラに組み込まれていった。ブルアカで言えば、早瀬ユウカはツンデレにそのパーソナリティを置いているキャラではないが、ツンデレの魂を受け継いでいる。
 逆に、いにしえのツンデレの要素を多く残しつつも、時代に合わせた価値観のアップデートを行い、ハイエンドモデルとして登場した中野二乃みたいなキャラもいる。

 僕は、この流れは何かに似ていると思った。
 とんこつラーメンである。

 博多発のとんこつラーメンは、とんこつを徹底的に煮込んで出した力強い味わいにより、それまでの素朴な中華そばに慣れ親しんだ人々の舌に強烈なインパクトを植え付けた。
 それゆえに爆発的に人気が広がっていったが、「こんな力強いラーメンが作れるのか!」と刺激を受けた職人たちが、とんこつラーメンのノウハウを用いて新たなラーメンを作り始めると、その人気はやや下火になっていく。とんこつラーメンは、定義上、とんこつの旨味に頼るしかなく、魚介系や鶏ガラなど、多様な材料から出汁を取れる多重的な味わいのラーメンに比べると、どうしても一辺倒な味わいになってしまうという欠点があったのだ。

 結果的に、とんこつラーメンは、ラーメンの進化の起爆剤になりながら、その進化には取り残されてしまう。まぁ、この辺は「らーめん発見伝」の受け売りなんですけど。

 なんとなく、ツンデレの歴史に通じるものがあった。

 そんな中、中野梓よりもさらに類型としては古めのツンデレを、ほぼ現代風のアレンジを施さずにお出ししてきたのが、黒見セリカである。
 血抜きやアク抜きこそしているが、野趣あふれる味わいの博多とんこつラーメンそのものだ。「これがツンデレだ。喰え」と、腕を組んだ頑固おやじが出してきた、どんぶりいっぱいのツンデレなのである。まさか、セリカがラーメン屋でバイトしてるのってそういうことか!?(違います)

 博多とんこつラーメンの灯は、いまだ消えてはいない。元祖長浜屋は現在も絶賛展開中である。ツンデレもまた同様に、そのプリミティブな味わいが消費され尽くすことはないはずだ。

 ブルアカアニメ2話は、どうやらセリカ回のようである。サブタイトルは「私は認めない!」。何も言わずとも伝わる濃厚なとんこつの味わい。
 ずんどう鍋から沸き立つ湯気の向こうで、静かに親指を立てる柴関ラーメンの大将の姿が、見えたような気がした。

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