忍風戦隊ハリケンジャーの話

 昨日の記事を書きながら、ハリケンジャーの1話を見ていたのだが、ふと思ったことがある。「ハリケンジャーって面白さを説明しやすそうだな~」ということだ。
 スーパー戦隊には、「未見勢にプレゼンしやすい作品」と、「そうでない作品」があると思う。この未見勢ってのは、そもそもスーパー戦隊シリーズにあまり馴染みがない人のことね。

 そして、この「プレゼンしやすい作品」と、「評価が高い作品」は、必ずしもイコールではない。ハリケンジャーも作品人気は中堅どころだ。
 例えば僕は、「手裏剣戦隊ニンニンジャー」が好きだが、じゃあニンニンジャーの何が面白いの、という話になると、「ニンニンジャーはこれこれこういう話で、こうだから良いんだよね~」みたいなことをスパッと説明できない。ストーリーや設定の部分に、強めのフックがないのだ。

 小林靖子氏がメインライターを務める「侍戦隊シンケンジャー」や「烈車戦隊トッキュウジャー」もそうだ。いずれも評価の高い戦隊だが、「じゃあどこが面白いの」という話になると、必ず作品の核心・ネタバレ部分に踏み込まなければならなくて、あまり未見者へのプレゼンに向いていない。
 シリーズの視聴者なら、「おっ、メインライターは靖子にゃんか。じゃあ期待できるな」となるし、メインターゲット層である子供は、モチーフがカッコイイので、それが視聴モチベーションになる。
 でも、ネタバレに配慮しつつ未見の大人を引き込むのは難しい。「松坂桃李が出てる」とか「志尊淳と横浜流星が出てる」とかしかない。

 いずれの戦隊も、個々のキャラクターが非常に良くて、僕が好きな理由もそこなのだが、「作品の魅力はキャラです!」はちょっとパンチが弱い。キャラの魅力って、本当に他に類を見ない個性を爆発させてるキャラをメインに押し出すか、「このキャラはあなたに刺さると思うんです!」という方向にするかしないと、作品のプレゼンには繋げられないと思うのだ。

 で、ハリケンジャーの話だ。ハリケンジャーは、「伝説の秘宝を巡っての忍者バトル」がメインの作品だが、「疾風流」の代表として争奪戦に挑むのは、3人の落ちこぼれ忍者である。
 「疾風流」の忍術学校は、悪の組織の襲撃により壊滅。たまたま朝礼をサボっていた3人だけが生き残り、校長より200年途絶えていた伝説の忍者「ハリケンジャー」の変身アイテムを託されることになるのだ。

 第1話のプロットがすげぇしっかりしている! これだけで、「忍風戦隊ハリケンジャー」がどういう話かわかるし、魅力も伝わりやすい。
 さらに、このお宝争奪戦には、悪の組織だけではなく、「疾風流」のライバルである「迅雷流」のエリート忍者も、「ゴウライジャー」として参戦してくる。これもポイントだ。忍者をテーマにした戦隊は3つあるが、その中でもこれは、「複数の流派による忍者バトル」を意識した作品であり、「甲賀忍法帖」のような「忍者モノ」としての印象が強い。
 ハリケンジャーが流派の落ちこぼれであるのに対し、ゴウライジャーが流派のエリートであるという対比も良く、正統派な面白さがある。ハリケンジャーの3人が運で生き延びたのに対し、ゴウライジャーの2人は実力で襲撃を生き残ってるからね……。

 ハリケンジャーのプレゼンのしやすさは、歴代戦隊ヒーローの中でもトップクラスだ。第1話にドラマ性を詰め込んでいるので、作品の方向性を説明しやすいし、「落ちこぼれの3人が、伝説の後継者になる」という、わかりやすい面白さの文脈があるのも大きい。
 スーパー戦隊はフォーマットが強いので、作品ごとの違いをプレゼンするのが、意外と難しい。だからこそ、こういったプロットのフックが、「面白そう」感に重要になってくるんだと思った。(もちろん、ルパパトやキングオのような「フォーマットを逸脱した強さ」がある場合は別だけど)

 この辺、たぶん「企画書の段階で面白い作品」とそうでない作品に通じるものがあるので、個人的には意義のある発見でした。

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