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コナン映画における目暮警部の話

 みんな、目暮警部は好きか!? 僕は好きだ。「カッコいい大人」の在り方は、なんだかんだ言って名探偵コナンで学んだように思う。

 目暮警部は登場初期から、コナン(新一)の推理の引き立て役であり、「貫禄の割に頼りにならない」という印象がちょっぴりある。
 だが、劇場版は大型の凶悪犯罪を扱うことが多いため、目暮警部の「レギュラーの警察官」という設定から、頼りになる情報提供者/ボディガード役という印象が強くなる。実際に犯人鎮圧に役立ったことはあまりないのだが、いてくれるだけで安心感のあるキャラだったと思う。

 原作では、「頼りになる大人」としての役回りは小五郎のおっちゃんとか阿笠博士に優先して回されていたので、意外と日の目を浴びるのが遅かった印象だ。初期の原作で印象に残っているのは、犯人の拳銃を奪って発砲した灰原を叱りつける場面とかかなぁ。確か18巻あたりだった。

 そういうわけで今回は、各映画から目暮警部の好きなシーンを抜粋する。本当に細かい「ここ好き」ポイントなので、映画の本筋とはあまり関係のない場面が多い。





第1作目『時計じかけの摩天楼』

 以前「カッコいい大人」の記事でも話したが、中盤、東都環状線に仕掛けられた爆弾捜索の指揮をするシーンが印象的だ。本来なら「爆弾は5つ全て回収した」というセリフで済ませられるところを、きっちり尺を取って演出している。
 この爆弾は「光を遮った状態で数秒経つと爆発する」というものであるため、「自分の影で爆弾を覆わないように」という当たり前の注意をするのが好きだ。視聴者としては、コナンの推理で爆弾の場所を突き止め、列車をすべて避難させた時点で解決だと安心しきっているところに、「現場で捜索にあたる警察官は、これから命を懸ける」という事実を突きつけられ、ハッとしてしまう。

 ちなみに本映画は、第1作であるため、「ストーリー上必要ないが、『
名探偵コナン』を再現するのに必要なシーン」というのがちょくちょく入っている。コナンが父親へのファンレターを仕分けしていたり、阿笠博士が役に立たない発明をしていたり。キャラクター描写のための尺だ。
 コナン映画というものがジャンル化する前の特徴なので今観ると新鮮で面白い。目暮警部のシーンも、そうした描写の一環なのかも。


第2作目『14番目の標的』

 原作に先駆けて目暮警部のフルネームが明かされていた記憶がある。「目暮十三」なんて、この映画の為の名前にしか思えないが、ギリギリ「ジュール・メグレ」と被っていなくもないのが上手いネーミングだ。
 序盤にクロスボウでおなかを撃たれ入院、縫合手術を受けるという地味な大けがをするのだが、即座に現場に復帰。連続して起こった殺人未遂の被害者が、小五郎に縁のある人物ということから、小五郎に恨みがある人間の犯行とあたりをつけ、捜査を開始する。

 特別どのシーンの警部が好き、というわけではないのだが、クロスボウで撃たれた警部がすぐに現場復帰するのが、初期映画特有の人手不足を感じて面白いし、結果的に警部のプロ意識の高さを描写していると感じる。
 この映画の中、目暮警部は入院したり担架で運ばれたりするのだが、帽子は頑なに取らせないということが描写されており、この時点で青山先生の中では警部と奥さんの馴れ初めエピソードのイメージが出来ていたことがわかる。僕は単行本派だったのだが、「こういうことだったのか!」とえらく感動した覚えがあった。映画と原作の連動エピソードの走りとも言えるかもしれない。


第5作目『天国へのカウントダウン』

 中盤、舞台となる高層ビルの落成記念パーティーで事件が起こる。だが、その捜査が完了する前に、何者かによってビルの発電室が爆破され、会場にいた全員が避難を始めることになる。
 ミステリー要素をきっちり残しつつ、後の映画でもどんどんド派手になっていく「爆発&アクション」に主眼を置いたストーリー構成であり、このビルからの避難シーンには緊張感があった。

 非常用のエレベーターで、女性や子供を優先的に避難させ、大人の男たちは階段を使い徒歩で脱出、と、避難誘導を行うのは、それまで殺人事件の捜査をしていた警察の仕事だ。
 目暮警部は全員をパーティー会場から逃がしたあと、逃げ遅れがいないか懐中電灯で確認し、小走りで避難を開始する。この、ほんの十数秒にも満たないワンシーンが、僕は異様に大好きだったりする。短いながらも、大人の責任感とプロ意識がたっぷり詰め込まれている。


第10作目『探偵たちの鎮魂歌』

 犯人は蘭たちを人質にし、小五郎のおっちゃん達に事件の捜査を依頼する。もちろん、警察に伝えるのは無し。蘭たちは、自分が人質になっているとは知らず、爆弾入りの腕輪をつけて、遊園地で遊んでいる、というのが本作の大筋だ。
 捜査中、コナンや小五郎は目暮警部らと出会うのだが、小五郎は警察への接触が犯人に怪しまれないよう、あえて辛辣な態度を取って警部らを突き放しつつ、こっそりと事情を記したメモを手渡す。

 ここで、仲間の刑事がバカにされたことに激昂する目暮警部や、メモを手渡された感触で何かを察して、小五郎を見送る目暮警部が描かれる。
 その後、目暮警部や白鳥は、タイムリミットいっぱいまで蘭たちを陰ながら護衛することになる。

 最終的に、タイムリミットが近づいてきた段階で、警部は部下たちを下がらせて爆発に巻き込まれる大人を自分と阿笠博士だけにしようとする。この時の白鳥とのアイコンタクトが非常に良くて、白鳥のすべてを察したような顔も良い……のだが、「強行犯三係の係長としてその判断はどうよ警部!」 と、思わなくもないな!
 いや、シーン自体は非常にイイんだけどね! でも遊園地で警部が爆死したら佐藤さんのトラウマがまた増えちゃわないか!?

 まぁ、目暮警部と白鳥の間にある信頼みたいなものが、すごく良かったとは思う。実際、警部は自分に何かあったら白鳥を後釜にと考えていそうだな、と思った。
 1作目の頃から結構手塩にかけて育てている感じがするし、キャリア組の白鳥も、現場叩き上げの目暮警部を尊敬している感があって、そういうところが凄くイイ……。こういうところ、もっと見たいなと思う。

 このあたりから、警視庁組の中での活躍は佐藤さんに回されることが多くなって、活躍シーンに警部が割り当てられることは減っていく印象だ。


第25作目『ハロウィンの花嫁』

 警視庁組のスポットライトが当たる映画だが、警部のシーンはそこまで多いわけではない。ただ、今回の作品のゲストは、目暮警部の同期であった、元警視正の村中という男であり、彼との絡みがちらほら見られる。

 まんまと犯人の術中にはまってしまい、意気消沈している村中を励ます場面が目暮警部の見せ場だ。このセリフは、目暮警部が同期で一番の出世頭だった村中を、同じ刑事として尊敬していたことがわかる良いセリフだ。目暮警部の「元同僚」とも言える人物は、他にはインタポールに行った銭形警部くらいしかいない。
 本筋からは外れるので尺の都合上難しかったのだろうが、個人的には目暮警部と村中のエピソードをもう少し見たかったなと思う。特にこの話は、安室さんの「同期」の話でもある。目暮警部と村中を同期に設定したのも、あえてな気がするし、もうちょい尺に余裕があれば、そこをダブらせる何かがあったのかもなぁ、と思う。


 こうして振り返ると、やはり最近の映画では警部の見せ場は少ない。映画としては他に見どころが増えているので、不満というわけではないが。
 小五郎のおっちゃんなんかは、割と短いシーンできっちり見せ場を回してもらうことなんかが結構あるので、そういう役回りを警部にさせられるチャンスがあったらいいなと思う。

 僕が好きな目暮警部のシーンは、やはり「設定に忠実なキャラ表現」がされている場面だ。警部は基本的に推理の引き立て役であり、それは今も昔も変わっていない。
 だからこそ、「強行犯三係の目暮十三警部」が顔を出す瞬間が好きなのである。ストーリー上の役回りと、設定上の役職のギャップが生み出す魅力とでも言うのか。これは園子の記事でも話したが、この「役職」に対する意識の持ち方は、キャラを描写する上では疎かにしないようにしたいよな、と思った。

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