見出し画像

甘え上手な名探偵の話

 昨日、友人とコナン映画同時視聴を完走した。
 1年前から1ずつ見ていたのだが、うっかりしているうちにサブスクでの配信が終了してしまい、見逃していた「緋色の弾丸」が無事に配信されたことを機に、足掛け1年なんとか走り切ることができた。

 というわけでコナン映画の記事を書こうと思って色々思考をこねくりまわしていたのだが、ふと、江戸川コナン本人について考えを纏めてみたくなったので、本日はそれについての記事とする。
 実は長いこと、主人公のキャラ設定がしっくり来ずに悩んでいる企画があって、コナンくんはそこを打破してくれるシルバー・ブレットになってくれるかも、と思ったのだ。

 コナンくんはヒーローとして、強い正義感と善性を持ち合わせている。他人の為に平気で命を懸けられるガンギマリ野郎だ。実は僕は、犯人を追い詰めている時のコナンくんより、誰かを思いやったり、助けに行こうとしたりする時のコナンくんの方が好きだしカッコいいと思っている。
 正直なところ、褒められるのはこの点くらいであって、それ以外の人間性は比較的ダメである。ナルシストで自惚れやだし、平気で身内をバカにするし、割と迂闊なところもある。探偵のクセに遵法精神というものも持ち合わせていない。
 でもまぁ、ヒーローってそんなもんだし、それで十分っちゃ十分だ。どんな奴でも、必要な時に必要な行動ができるなら、ヒーロー足り得るのだ。
 あと、月影島の事件とか、レイ・カーティスの事件とか、定期的にちゃんと曇ってくれるのも良いですね。コナンくんは、泣いたり弱音を吐いたりすることはほとんどないんだけど、その分、どうしようもない事態を目の当たりにして切ない表情を浮かべるのが味わい深いと思う。

 さて、そんなコナンくんだが、僕はこいつを稀代の甘え上手だと思っている。猫を被って子供っぽいムーブをするのは日常茶飯事だが、そもそもとして、「他人に何かをしてもらう」ということに対して、あんまり忌避感持ってなさそうな感じがするのだ。
 なにせあの父親と母親だし、そういう風に育つのもさもありなん。初期から何かと阿笠博士を酷使するし、博士の発明品に使い勝手が悪いところがあると文句を言うし、発明品のバージョンアップも「サンキュー」で済ませたりする。
 いや、もちろん間違いなくコナンくんは博士に感謝しているのだろうが、態度があまりにも軽いのである。あんま敬意持って接してないでしょ! よその子供連れてキャンプ連れてってくれるような聖人だぞ!
 この辺は、蘭が園子にあまり頼りたがらないエピソードとかを踏まえると、なおさら如実に感じる。コナン=新一は園子に対しても扱いが軽いしな。園子も大概聖人ですよ。

 コナンくんのこういうムーブの被害者として名前が上がるのは、阿笠博士の他には灰原哀、服部平次、次元大介だろう。
 特に劇場版の灰原の酷使っぷりは、「おまえそれ定期的に好きなスイーツの差し入れとかしてやんないと釣りあい取れないぞ」ってレベルだと思う。
 まぁ正直、作劇の都合もあるだろう。名探偵コナンは探偵モノという性質に加え、劇場版では大型の犯罪を取り扱うため、どうしても情報収集を手伝ってくれる「椅子の人」が不可欠だ。他の刑事ドラマや探偵モノでは、情報屋には報酬を払ったり、そもそも職務上そういう契約になっていたりするので不自然ではないのだが、コナンの場合は、純粋なる灰原の善意で手伝ってもらっているので、こう見えてしまう。

 でも僕は、コナンくんのこういう図々しいところがめちゃくちゃ好きだ。

 服部も大概である。視聴者目線でも「こいつ工藤のこと好きすぎだろ」と思ってしまうような奴なので、理不尽感はそんな無いように見えるけど、京都から東京までバイクで遅らせんのはさすがにヤバいと思った。引き受ける服部も服部だが
 次元大介はご存知ルパン三世ファミリーの一員だ。TVスペシャルと劇場版の「ルパンvsコナン」で、コナンがよく行動を共にした。こちらの場合は「好意につけ込む」というわけではないのだが、コナンの甘え上手なムーブと次元のぶっきらぼうな態度が合わさって、妙に中毒性のあるコンビになっている。

 コナンくんは、逆に灰原や服部に助けが必要だと思えば、全力で彼らを助けるだろう。実際、「から紅」や「黒鉄」ではそうなった。
 そこにロジックは無くて、ただひたすらに天然でやっている。「オレとおまえの仲だから遠慮しなくていいだろ?」とすら思っていない。彼にとっては助けることも助けられることも当たり前なのだ。これもまた、コナンの育ちの良さが出ている部分だろう。生まれながらの貴族なのだ。
 恵まれた家庭。恵まれた両親。恵まれた隣人。おまけに家にはたくさんの蔵書。屈折した感情を抱くこともなく、のびのびと育ったヒーロー。それが工藤新一であり、そんな彼がいくつかの苦難を味わって、江戸川コナンへと醸成された。

 こうして考えをまとめてみると、僕にとって重要なのは、「助けることも助けられることも当たり前」という、屈折していない彼の善性だろう。貴族的すぎて今の時代は図々しく見えるかもしれないが、その代わり彼は、他人の為に命を懸けられる。
 ここが一貫してフェアだからこそ、江戸川コナンはヒーローとして成立しているのだと思う。

 「100万ドルの五稜郭」は来週公開ですね。今から楽しみ!

この記事が参加している募集

私の推しキャラ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?