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僕らの蟷螂(かまきり)の失敗

子供の頃、カマキリが好きで、卵を自分の家の勉強机の中に入れておき

忘れた頃に孵化してしまい、引き出しの中から、子カマキリが大量に溢れ出し

母親が悲鳴をあげたことがあります。

そんな話を農学博士&イラストレーターの横山拓彦さんにしたところ

「ボクもやりました」と笑っていました。

子供の頃、たぶん多くの人が通る道。よくある失敗。

ところが、私は大人になってからもそれをやってしまったのです。

あれは、数年前、永田洋子さんとご一緒したマレーシアから帰国した時

ほっと一息ついて、自宅の玄関を開けると

廊下の白い壁に、茶色い点がぽつんぽつんと。

はじめ目が疲れているのか、もしくは、汚れかと

思ったのです。

ところが、その茶色い点が白壁を移動しているじゃないですか。

虚を突かれ、

スーツケースと旅行カバンを足下に置いて、よく目を凝らすと

「アッ」です。

アッ……、まずい…です。

廊下を走って、ダイニングに入ると、壁中に子カマキリがッ!

それも模様のように、満遍なく至るところに。

天井にも壁にも床にも。しかも、小さな群れをところどころに作り

走り回っています。

カマキリを孵化させたことがある方はよく御存知だと思いますが

カマキリは孵化すると、すごい勢いで広範囲に拡散していくんです。

走る、走る。1センチくらいのカマキリが。

しかも、どれも孵化したてなのに、きちんとカマキリの形をしていて…

なんて、愛でている場合ではありません。

お風呂場にも、台所の天井にも、ありとあらゆるところにカマキリが。

一瞬、掃除機で吸いたい気持ちになりましたが、

それではあまりにも不憫なので、拾い集めては、外に逃がしました。

捕まえても、捕まえても、背後を走る子カマキリ。

無数の視線。

思えば、カマキリの卵を拾って喜び、久々に孵化を見たいなと思い

棚に置いてあるペン立てに、卵がついている枝ごと挿しておいたのです。

なぜ飼育箱の中に入れておかなかったんだろう!!

わが身を呪いました。

しかも、旅行中に孵化というバッドタイミング。

猫たちも何匹か食べてしまったかもしれません。おおう。

大人でもやるんですね、こういう失敗を。成長しないんだな、私も。

家の中で、縦横無尽に走るカマキリを見かけることになる日々が、しばらく続きました。

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