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喜安浩平の『庭から』~脚本創作6・軌道修正~

「ねーちゃん!あしたっていまさッ!」


今、あの言葉の意味を噛み締めています。明日書くと書いた投稿から、また何日も経ってしまいました。私の庭には、の~んびりとした時間が流れているのかもしれません。本当の暮らしはまったく違って大忙しです。でも、大忙しであればあるほど、早くここに辿り着きたい私がいます。


現実逃避? よしてください。こんなに面倒くさい逃避があるものですか。あるものですね。


さて。『庭から』は、『人がさみしさと暮らすため』の場所。そうもくろむことで、ほんの少し、進む先が見えたような気がしたのは3回目の投稿の頃です。https://note.mu/kiyasukohei/n/na892f89a0e5d


そして、そのもくろみを【さみしさ】というテーマに落とし込み、小編の戯曲を作っていこうと、3名の編集部員に無作為な62個ものお題を出していただき、そこから選ぶ作業を行ったのが4回目の投稿で、本当はもう3週も前のことです。https://note.mu/kiyasukohei/n/n6672b2cb22b8


あらためて、62個のお題をご覧いただきましょう。



無作為。無作為過ぎて、どうしてもぼんやりしてくる表です。例えば尾崎放哉の言葉だって、この表に書かれてしまえば、見過ごされ、無きものにされたことでしょう。


わざわざここから見つけてくる意義とは?そんな真っ当な問いが、脳裏をかすめます。元から自分の興味のあることを持って来ればいいじゃないか、こんなことをするのは今の自分になにも無いからじゃないのか、と、不安になる瞬間もあります。なにも無いわけではありません。すでに進行しているものも、あるにはある。それでもここで試したいのは、奥に『さみしさ』があるからです。まだまだ、やっていることの成否は計れません。


意味もなくもったいぶってしまいましたが、いよいよ選んだ6つのお題を発表いたします。庭に植える種がようやく決まったということでしょうか。さあ、どんな花が咲くものか。はたまた肥やしとなって消え去るか。ドン。


【美少女】
【外国】
【雲隠れ】
【筋肉】
【貯金箱】
【ゲーム】


4回目の投稿の際に浦嶋編集員が記録しているように、「みんなで語り合えるもの。庭に集まってみんなで話をしたくなるもの。」という基準で選ぼうと話が進み、結果、選ばれた6つです。今となっては、【雲隠れ】について本当にみんなと語り合えるのか、いっこう見当がつかず、あの頃の俺たちに何があったんだと疑いたくもなりますが、選んだのもまた運命。しばらくこの6つと付き合ってみたいと思います。


先々週、まずは手始めに、【美少女】について語り合いました。3名の編集部員と。かれこれ4時間、話しをして、結果、結論らしい結論は一つも出せませんでした。おい、語り合えるんじゃなかったのかよ。


もちろん4時間程度で何かが見えるほど簡単なものではないことは、重々承知しています。なにしろ【美少女】です。おいそれとは参りません。しかしこれ、このまま6つについて、それぞれあーでもないこーでもないと語り合っていて、なにか作れる時が来るのだろうか?と、身も蓋もない疑問が浮かんでくるのも事実。春はもうすぐ。手応えが欲しい私なのです。


と考えていて、なにか、肝心なことを飛ばして先に進もうとしているのでは、と思いました。嫌な予感です。


私にはそのきらいがあります。私は具体的にするスピードが速い傾向がある。速いことで、ありがたがられること、提案に納得していただくこともたくさんありますが(なにしろ自分以外に何かを伝えるなら、可能な限り具体的な方がいいと思っています)、その分、なにか言葉にしづらい部分がするりと抜け落ちて、皆が思い描くような形を成さず、全員で少し前まで戻ってみよう、となることもままあります。


そうなっていやしないか、と思いました。『庭から』を進行させるために、投稿を停滞させないために(それとは別の理由ですでに予定通りではありませんが)、見て取れるテーマを並べ、それについて眺め、なにかグッとくるまで考え、グッとくればその方向で書き、発表する。


一見、一本道のようで、疑う必要もない気もしますが、そもそも、一本道を見せることが目的ではないのでした。もっと、どうしていいかわからず、土にまみれるようにもんどりうつところをご覧いただき、ご覧頂いてる方々にも一緒にまみれてみようと思っていただくような、そんな、庭を作ることが目的なのでした。


やはり、最初にもくろみを持っておいてよかった。考えを改め、スピードを落として、しかるべき手順を確かめることからやり直すことにしました。会社に理念があるように、この庭にはもくろみがあります。急ぐことも、さみしさの一因になることがある。私たちがさみしさとちゃんと暮らすには、人それぞれに見合った速度も必要なのだと、ようやっと心得た次第です。


で、少し頭の中を片付けることにしました。言葉にしますと、そもそも『庭から』のもくろみであるところの『人がさみしさと暮らすため』の場所を作ることは、私の主観が大いに作用した私なりの理屈が定めたものであって、それ自体が、ご覧の方々にすぐさま得心いただけるものではない、と。


「ああ、そのことをそういう風に言い換えているのね、それはすぐにはわからないわよ、小難しくって」。…私の吐き出すものに対してよくいただく感想です。それをすっぱり改められるほど、凝り固まった人間性を素早く直すことはできませんので、そこはもう、じっくり伝えていくしかないと腹をくくるとして、…じゃあそれを、作品作りのテーマにまで落とし込んだことが、やはり短絡的で、そもそも繋がっちゃいないんじゃないかということに、片付けていてやっと気づいたのでした。


『さみしさと暮らすため』の場所作りから、【さみしさ】だけを取り上げ、と書いたのも3回目の投稿です。あそこでもう少し疑ってみるべきでした。いや、実はあの時すでに、ちょっと走ってるな俺…と感じていたのです。感じたものを拾おうとしなかったことを反省しています。こうやって振り返りながら考えを構築していけるのは、大変ありがたいことです。


『さみしさと暮らすため』は、『庭から』を乗りこなしていく上でのもくろみであって、そもそも作品作りとは別のところから生まれた言葉です。さみしさを埋めるためなら、ここにこういった投稿を連ね続けることでも、どうにかなるのかもしれません。ブログのようなものも、その目的を突き詰めていけば『さみしさ』にたどり着く方はいくらかいらっしゃると思います。SNSもそうでしょう。


そこをこの場所では、戯曲という表現でそのさみしさをどうにかできないか、と考えている。そこんところを、ちゃんと捉えて動くべきでした。


自分が理解するために言葉にしてみます。戯曲という表現で、【さみしさ】を扱うことで、『庭から』が求める、『さみしさと暮らすため』に必要なものを見出す。


後半の、必要なものを見出す、にそもそも納得していませんが、それ以前に、どうも狭くないかと。私にはさみしさしかないわけではない。むしろ、普段はさみしさなんてよくわかっていません。よくわかっていないけど、底にあるものがさみしさです。【さみしさ】で『さみしさ』。…もう一回言葉にしてみます。


戯曲という表現で、【さみしさ】と【美少女】を掛け合わせることで、『庭から』が求める、『さみしさと暮らすため』に必要なものを見出す。


なんで掛け合わせるのか、今はわかりませんし、その理論は後に譲るとして、やはり、【さみしさ】で『さみしさ』を、というところが、戯曲の、広義でいうところの表現のやることではないだろうと思います。わざわざシンプルな線を複雑にしてみせる必要はない。あと、やはり掛け合わせるという言葉も違うような気がするので、もう少しイメージに合うところを探して、


【美少女】を、【さみしさ】という視点から戯曲にすることで、『庭から』が求める、『さみしさと暮らすため』に必要なものを見出す。


そうか。すでにさみしさという視点があり、それをもってなにかのモチーフに触れるのだとしたら、それってもうすでにさみしさと暮らせているのではないか、とも言えるんですね。だから狭いと思うのか。スタートとゴールが同じ、という感じ?だんだん勢いで書き出しています。そろそろいったん納めます。


ということで、【さみしさ】か、『さみしさと暮らすため』か、どちらかを変えてみては、という考えに至りました。でも、だからと言ってもくろみの方を変えるとなると、一向企画が進む気がしません。そこで、【さみしさ】の方を変えます。


なに視点でもってモチーフに触れるか…。そこで私がすぐに思い立つのが、【おかしみ】なのでした。


もう20年近く、おかしみおかしみと言い続けて劇団をやり、作品を作っている私です。【おかしみ】が、あなたの暮らしを豊かにすると宣ったりもしています。長く一緒に居る仲間たちとも、この言葉で愉しみを共有することがたくさんあります。うまく説明できない目の前の現象を、【おかしみ】ということで片付けることもよくあります。でも、私の言う【おかしみ】とは、例えば、コメディではありません。ギャグというものでもない。ナンセンスも、少し違う。「いとをかし」と通じるものなのか。なら、滑稽か、趣きか。ユーモア?必要に迫られて喜劇と称することもありはしますが。


【おかしみ】とは、一体。


前回、5回目の投稿の最後に出てきた『おかしみ』は、こうして、私の庭に、舞い降りてきたのでした。

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