めちゃくちゃな安珍清姫伝説

【とっても涼しい清姫伝説】

大体秋の深まってきたころ。熊野参詣を心がけて安珍と言うイケメンなお坊さんが半袖半ズボンで山奥をテクテク歩いていました。季節外れの蚊に刺されて痒がっていると、真砂と言うあたりで清姫と言う名前の可愛い女の子が一晩泊めてくれることになりました。
安珍が眠っていると、其処へ清姫が夜這いをしてきました。安珍のことが気にかかったのです。しかし、ソーシャル・ディスタンスの波はここにも及んでいます。部屋の隅っこで清姫はじーっと安珍を見つめるだけでした。その内安珍のことを好きと言えば好きなタイプで合コンならとりあえず連絡先を交換しておくかもしれないという感想を持って清姫は寝落ちしました。
なので朝になってしまいました。目覚めた安珍は部屋の隅で寝落ちしていた清姫を見てびっくりしましたが、呼びかけても起きないのでそのまま放っておいて家を後にしました。
清姫がお昼過ぎに目覚めると安珍は既に居ません。自分のほどほどな愛情を伝え損ねた清姫ですが、彼女は熱血ではなかったので想いを放置しておきました。何せほどほどの愛情なのです。安珍のことは飼っている蛇に対する想いと差がありませんでした。
そうして、無事に安珍は熊野参詣を終え、帰路についていると丁度清姫の家の前あたりで持っていた鈴を落としてしまいました。数日後に清姫がやっと鈴に気が付き、安珍の後を追って小走りで駆けていきました。走って汗を掻くとして、汗でべたべたするのが嫌だったのです。
やがて、日高川を渡った道成寺の辺りで二人は再会しました。到底清姫は安珍に追いつける筈も無かったのですが、不慮の事故で安珍が鐘に閉じ込められる事件が発生してしまったので足止めを食らっていたのです。鐘に閉じ込められた安珍はさぞ窮屈な思いをするかと思いきや、流石天下の道成寺。鐘には立派な空調が備わっていたので、外から冷房を効かせて貰い耐えました。
清姫は鈴を渡して、安珍は鈴を受け取りました。
そして二人は別れました。どっちもお互いに執着するような暑苦しい性格ではなかったのです。鈴の音は涼しげに二人の間を駆け抜けていきました。

【アマゾン川が舞台の清姫伝説】

熊野参詣を終えた安珍は更なる悟りを求めてアマゾンの奥地へと向かった。
「熊野参詣の後はアマゾンにも向かうんです」
安珍はそう告げていたために清姫も追ってきた。
追ってきた清姫に安珍の悟りもhandsup。予想外です。
安珍はとっさに逃げ出した。全く土地勘が無いから一直線に逃げるしかない。清姫も一直線に追ってくる。何なら炎を吐いて辺りの木を燃やしながら追ってくる。巣穴を焼かれた狐のような具合で安珍はひたすらに逃げた。この時、60秒の間にアマゾンの奥地で東京ドーム0.5個分の森林が消えて行った。
やがて、アマゾン川に出た。前門のアマゾン川、後門の清姫。絶体絶命の安珍。しかしアマゾンの神はまだ安珍を見捨てなかった。安珍は仏教徒の筈だが、アマゾンの神はその程度で人を見捨てるようなことをしないのだ。古事記にもそう書いてある。安珍は近くの大きな木の板を持ち、ビート板のようにして川を泳いで渡ろうとしたのだ。遅れて川に辿り着いた清姫は迷わずに飛び込んだが、すぐに引き返した。ピラニアに電気ウナギ、ワニ。炎を吐く程度の蛇では到底太刀打ちできない相手が、よりにもよって炎の効かない川に居るのだ。
万事休す――だがアマゾンの神は清姫も見捨てなかった。既に清姫は人じゃなさそうだしそもそも大規模火災の主犯だが、アマゾンの神はゴシップネタが好きなのだ。日本書紀にもそう書いてある。清姫の近くに巨大な影が現れた。アナコンダである。一匹や二匹ではなく数十匹のアナコンダが現れたのだ。彼等は何の因果か住処が燃えているので川岸に来ただけだったが、清姫の蛇力(へびぢから)が凄そうだったのである蛇がある蛇の尾を噛んで繋がり、それを続けて橋のようにした。
流石にアマゾン川は広い。安珍も清姫も川の真ん中あたりまで来た時、事態は一気に変わった。川下の方に白波が立っている。それは段々近づいてくるように見えた。
そう、ポロロッカである。清姫の渡る蛇の橋は哀れにも崩れ去った。同時に清姫も流されてしまった。恐らく彼女は助からないだろう。一方の安珍は天性の才能か、ビート板をボード代わりにしてサーフィンをし事なきを得た。こうして一旦安珍は清姫から逃れることが出来たのだ。
だが安心はできない。アマゾンには軍隊アリやジャガー、前述のアナコンダなど多くの危険生物が居る。安全を確保できる場所を求めて安珍は彷徨った。そしてやっとここで仏が微笑むのである。フランスではない。仏様だ。
アマゾンの奥地に、安珍は道成寺を見つけた。山門、本堂、鐘楼……全てが道成寺である。中に居た小僧共は錯乱している様子も見られなかった。ただ彼等は皆色黒で、原住民の姿そのままであった。言葉は通じない。安珍は必死のボディ・ランゲージを繰り広げたが無意味だった。安珍は捉えられ、鐘の中に閉じ込められてしまった。
自分は生贄にされるのだろう。そう覚悟した安珍だったが、待てど暮らせど鐘が上げられる様子はない。代わりに、温度が上昇しているように感じた。彼は知る術がなかったが、清姫の起こした森林火災は川を越えアマゾン道成寺すらも飲み込もうとしていたのだ。原住民坊主はみな逃げ出してしまっていた。安珍はすっかり忘れ去られていたのである。
炎に飲まれる運命だけが安珍を待ち受けていたが、彼はをそれを理解できない。鐘の中は静寂に包まれ、温度だけが上がり続けている。
清姫の炎に、安珍はアマゾンで焼かれるのである。

【ストローの包紙をクシャってやったやつに水滴垂らす遊びくらい細かすぎて伝わらない例えが部屋をゴミ屋敷にしすぎて湧いてきたアリに足を噛まれるくらいしょっちゅう挟み込まれる清姫伝説】

風鈴の音色を聞けば涼しくなるかなとぶらさげてみたら思ったよりも風が強くてリンリンリンリンうるさいから結局窓を閉めるような季節に、橋本環奈と炎のゴブレット時代くらいのマルフォイを足して醤油を加えたかのようにイケメンなお坊さんが波平さんに髪の毛を足した後で丸刈りにした雰囲気を持った老僧と共に、神社に向かう前にわざわざコンビニで五円玉を両替してお賽銭箱に入れるほどに望んでいた熊野参詣にやってきました。
その途中、先に家を出たお兄さんにたかし君が追いつきそうな位置にある真砂と言う場所で、友人が勝手にミスコンテストに応募した結果四位を取って地元では消防署に出来たツバメの巣並みに有名になりそうな清姫と言う名前の、生後三週間ぐらいでまだ耳が立っていない子猫もかくやというほど可愛らしい女の子が居る丁度築54年くらいの家に泊まる事となりました。
その夜。草木が『いや、まだ寝てないから。今夜は徹夜するって言っただろ』って会話をしていそうなまだ丑三つ時じゃない時間帯に、友人が勝手にミスコンテストに応募した結果四位を取って地元では消防署に出来たツバメの巣並みに有名になりそうで可愛さ指数は生後三週間の子猫の清姫が、安珍の眠る下宿の大学生が住んでいたら広いと思われそうな規模の部屋へフットボールアワーの後藤が見たら秀逸な例えをして場が盛り上がり先ほどまでの空気と違うから結局高低差で頭キーンとなりそうなほどに抜き足差し足で忍び込んできました。
生後三週間の清姫にレモン嫌いなのに勝手にから揚げにレモンをかけられたくらい驚いた安珍は死にかけのバッタのように飛び起きます。子猫清姫は「わたくしは貴方様のことを一目見た時から今夜はラーメンにしようと思って一日過ごしているときのラーメンくらい想っているのです。わたくしを貴方様のお刺身に付いていない方のつまにしてください」と言います。安珍は定人が数百名の飛行機に乗ったら自分一人しか乗っていなかったくらいにますます驚きます。「私は商店街で子供が泣き叫びながら欲しがっているお菓子のように熊野参詣を悲願としてきました。42.1キロまでやってきたのに諦めるわけにはいかないのです」と安珍は清姫を『何食べたい?』って言われたから『なんでもいい』と答えて怒らせてしまった妻の機嫌を取るように宥めました。
それでも清姫は期間限定☆5サーヴァントが宝具4になってしまったから引き際を見失い泥沼にハマって300連しても来ない地獄を見ているマスターのように諦めてくれません。400円の会計を全て10円玉で出された定員のように仕方なく安珍は「熊野参詣を終えたら『行けたら行く』という具合で戻ってきます」とそれこそ『行けたら行く』程度の約束をして清姫を家電量販店の扇風機コーナーでバサバサ吹かれていたビニール紐が風を失ってだらりと垂れるように落ちつかせ、その翌日セミが鳴き始める43分くらい前の朝の時間に旅立っていきました。
それから数日。清姫が鶴の恩返しを読んだ後で鶴を助けたので鶴が来るだろうと待っている百姓のように待っていますが、安珍は一向に戻ってくる気配がありません。うんともすんとも気配がないのですが清姫はうんともすんとものすんともってなんだろうと考えながら安珍を待ちました。
会社についてから天気予報を見たら午後から雨になるという予報を見て干していった洗濯物が平気か気が気でないOLのように心配になった清姫はそこら辺を行く特徴が無いので例えようがないから困るという例えが出来る通行人にスーパーで何処に置いてあるのか分からないから店員に聞くように尋ねました。
「そこをデートへ行くカタツムリのように行くお方。東京ドーム30個分くらいのこの辺りで完全な球体のようにイケメンなお坊さんを見かけませんでしたか」
「ああ、そのお坊さんならもう不眠不休で広辞苑を読み込んだ時にかかる時間くらい前に通り過ぎましたよ」
「なんですって。おのれ安珍。スマホ決済感覚で騙したな」
百合の間に挟まりたいと言っている男を見た百合好きのように激怒した清姫は発射されたパチンコ玉の如く駆けだしていきました。一秒間に一メートル動く点Pを6時間程度放置した距離をいくと、へのへのもへじを逆立ちさせたイケメン具合の安珍の姿を見つけました。
「安珍さま、おまちください!」
清姫の普段凄く可愛らしい女の子が虫を見かけた時に出した地声のような声で叫んで追ってくるのを見た安珍はめちゃくちゃ天気の良い日なので出かけようかなという気分ほどたまらず逃げ出します。
「おすぎとピーコくらい人違いです!私は安珍という人物ではありません!」
これが火に油+水素。
清姫は腹痛が酷くてトイレが開くのを待つような顔で安珍を追いかけ続けます。
「安珍、まてぇ!」
その内、清姫の顔が加工アプリで歪んでしまった背景の男子のように歪み、口元は裂けるチーズのように裂け、眼は着火した直後の線香花火の如く爛々と輝き、口からはガスバーナー2本分くらいの炎を吐き出しました。
安珍はますます逃走中でハンターに見つかった自称足に自信のある芸人並みに逃げ出します。
やがて、授業開始30分までは遅刻の扱いをしない先生の懐くらい広い日高川に出ました。安珍は時給が最低賃金+5円くらいの舟渡に額と地面がマブダチなほど頼み込み、先生の懐の向こう側へ渡して貰います。カップ麺がやや硬め位の時間をおいて川に辿り着いた清姫は、低賃金の舟渡に傘を忘れたから弟に駅まで迎えに来るように電話する兄のように頼み込みますが、舟渡は小豆バーの精神を持って固辞し続けます。
「ええい、明日は早いけれどまだ一時だの気持ちだ。かまうものか」
清姫は川に夏休み初日に川へ遊びに行った小学生のように飛び込みました。
すると大改造before&after。清姫はサグラダファミリアを追い越して完全な蛇体となってしまいました。
一方、川の向こうへ子供の集団に見つかった猫のように逃げた安珍は岐阜駅前から一番近いコンビニくらいの距離にある道成寺という寺に逃げ込みます。ダイヤル式の黒電話ほどに古い道成寺には2d6+2人ほどのお坊さんがそこに居たら居ますしそこに居なければ居ませんが、残り時間が3時間くらい残された時限爆弾を抱えたような形相の安珍を見て、スマホだと思って持ってきたものがテレビのリモコンだった時のように驚きました。
安珍から字数にすればここまで2610文字の事情を知ったお坊さんたちはパンが無ければもやしを食べればいいじゃないといった感じのナイスアイディアとして安珍を一部上場企業のサラリーマンの年収半分くらいが注ぎ込まれた鐘の中にへそくり(3000円)のように隠しました。
その内、数字のゼロのように完全な大蛇となった清姫がやってきて、道成寺の夜2時の上野恩賜公園ていどに寂れた道成寺の境内を初めてアニメイトに入るから緊張して入り口付近をいったりきたりする中学生のようにうろうろして、鐘の中に擬態選手権ヒラメ部門下から五番目のようにしている安珍を見つけます。清姫は鐘に学校の校庭に植えてある藤の木の弦のように巻き付き、口からはサーモグラフィカメラで真っ白になるほどの炎を吐き、そこから10分で1分遅れる時計が2時間経った頃やっと離れ、今日学校だと思っていそうで行ったら創立記念日だったから暇を持て余した高校生のようにふらふらとどこかへ去っていきました。
お坊さんたちが生きている魚を初めて捌く時のようにおそるおそる鐘を挙げてみると、そこには安珍の骨や戸籍、肉声。写真などなにもかも残らなかったといいます。

【現代ネトスト風清姫伝説】

今は昔、安珍というお坊さんが熊野参詣を志してGoogleマップを見ながらやってきました。途中、真砂と言うあたりでカプセルホテルに泊まり荷物を確認すると知らない内に手紙とお守りが入っていました。差出人は清姫と言う名前の少女のようで、安珍を見かけて好きになったのでこうして思いのたけを告げたのだと言います。安珍はネタとしてツイートして寝ました。
そして真夜中、安珍の電話が鳴り響きます。カプセルホテルということもあり慌てて出てしまった安珍。相手は例の清姫と言う女の子でした。
『ツイートを見ました。お手紙を読んでくださってとっても嬉しいです。是非ともお会いして役所に紙を出しに行きませんか』
「私は敬愛するブロガーさんの記事を見て以来ずっと熊野に期待と思っていたのです。ここまで来て諦めるわけにはいきません」
安珍はそうして電話を切りましたが、以降二時間にわたって電話が鳴り続けたので安珍はあきらめてもう一度電話に出て、
「帰り際にお会いしますから」
といって電話を切りました。すると隣の個室から
「約束ですよ、安珍様」
と言われました。怖くなった安珍は結局一睡も出来ぬままカプセルホテルを後にする事となりました。当然見知らぬ少女が見送ってくれました。
地雷臭のする女の元に安珍もそうやすやすと帰るはずがありません。NAVITIMEで別ルートを検索した安珍は真砂を迂回して行きました。一方の清姫。安珍が約束を守らずに迂回している事をきちんと把握しています。何故ならお守りの中には発信機と盗聴器が仕掛けられており、安珍の一挙手一投足は筒抜けだったのです。
「逃しませんからね」
清姫はタクシーを捕まえて発信機が示す安珍の場所後方二百メートルで下車しました。安珍の動きは安堵からか緩慢なもので、清姫が小走りになって追い付けるほどでした。
「みいつけた♡」
清姫が後ろから安珍に抱き着くと、安珍は驚いて清姫を振り払い、諸悪の根源足るお守りを捨てて逃げようとします。咄嗟に他のタクシーを捕まえ、清姫を置き去りに逃げて行きました。
しかし清姫は慌てません。安珍に電話をすると当然出ませんが、既に時遅し。ウイルスを忍ばせた携帯の位置情報から安珍が道成寺の近くで降りたことを確認すると、再び電話をします。安珍が諦めて一回出ると、
「道成寺に居りますね。逃しませんわ。うふふふ」
と告げて清姫から電話を切りました。
安珍は自身の携帯を破壊し、困り果てます。このまま単純に逃げていても仕方がない、と。こうなればいっそどこかに隠れてやり過ごすしかない。そう思い立ち、道成寺の職員もといお坊さんに事情を話し、電子ロックの着いた鐘を安置した堂の中に隠して貰いました。
清姫の方が一枚上手だったことをまだ安珍は知らないのです。抱き着いた時、背中にも発信機が取り付けられていたことを。
けれども、いくら清姫でさえ電子ロックには手も足も炎も出ません。仕方なく清姫はお堂に火を放ちました。電子ロックがあろうと木造建築は火の前に無力です。安珍は軈て燃えるでしょう。その中、最後に聞いた声は……。
「つかまえた」







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