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リアルとファンタジーの境目の魅力「よつばと!原画展」

「よつばと!」最新原画展
(PARCO ミュージアム)

<展示作品>
・原画
・執筆映像
・表紙イラスト
・資料写真
・資料

背景から感じるリアルな世界観

よつばと展でまず驚かされるのは背景の描き込み量です。単行本サイズでは見逃してしまっている背景の描き込みが、原画を見るとどうやってペンを動かしているのかまでも想像できるようで、とても面白いです。

細かく、正確にデッサンされた背景は、登場人物の存在感にリアリティを持たせています。
この絵全体からは、マンガなのに本当にいるかもしれないという感覚が与えられ、この感覚によって作品との心理的距離が縮まるのだと思います。

どこまで描き込むか?

原画を見ると、作者の描き込み量がハンパない事に気付かされます。作者は基本的に細かく描き込むのが好きな様で、影など描き込みすぎてしまった部分をホワイトで消していたりします。また、一度描いた背景の間が悪いためか、ビニール袋を追加したり、狙った印象と違うためにコマの一切を描き直してもいます。

近景、中景、遠景で絵のアウトラインが変化しているのも、見やすさや絵の立体感だけでなく、よつばと作者ならではの個性を感じられます。また、構図の取り方、線の引き方に作品の個性が現れています。

カラーイラストの、写実からファンタジーへ

表紙のカラーイラストは、正確なデッサンに丁寧な色がフォトショップによって重ねられているが、その表現方法が9巻以降からガラリと変わっています。

8巻までの色の塗りは、ただ写実的に、見たままをリアルに伝えようとしている上手な絵だった。しかし、9巻以降からは塗りに変化が現れ、実験的な色の使い方になっています。これは「ただリアルなだけなら写真でいい、では絵じゃないと表現できない事はなにか?」という問いがあるように思いました。以下いくつかの巻を勝手に考察してみました。

9巻の表紙絵は雨上がりで淡い青と赤の混じる夕暮れの絵で、絵で表現しているからこそリアルより幻想的に見えています。10巻の表紙絵は主人公が夕暮れにジョウロを持ち車を引いている絵ですが、塗り方が独特で児童絵本のような可愛らしさを感じます。11巻の表紙絵は、デッサンこそリアルだが、淡い色で塗られているために、リアルさを感じるにもかかわらず幻想的である特別な感覚を覚えます。

オリジナリティの確立から、新しい絵への挑戦

巻が進むにつれて、作者が絵を描くのに慣れてきて、さらにデッサン力や描き込みの緻密さが増したことによってオリジナリティがはっきりと現れる様になったように思います。オリジナリティが現れた先には、さらなる感動を与える絵とは何か?という点からか、実験的な色の塗りなど、新しい絵への挑戦があるのではないかと思いました。

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