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ミュシャから学ぶ陰影の描き方と構成主義について「みんなのミュシャ展」

「みんなのミュシャ展 ミュシャからマンガへー線の魔術」
Bunkamura ザ・ミュージアム

みんなのミュシャを観て気づいた、ミュシャの絵の描き方と構成美術について自分の思ったことと、上手な絵を描く方法についての考えを書いていこうと思います。

印影の理解によるハッチング

ミュシャ展には、ミュシャがインクで書いた習作(練習用の絵画)がいくつもあります。その中で陰影を丁寧に書き出した写真のようなリアルな習作がありますが、私たちがよく知るミュシャの作品は線画が主で、この習作のような影のグラデーションを見ることは少ないです。

ミュシャの線画を見るたびに、大きなハッチングは行わないのに見ると陰影がしっかり理解できる。陰を表現するために必要な場所に最低限の線を置いている。ということに驚かされます。

どうやったらこんな狙った陰影を引けるのか?おそらく数々の習作、デッサン、クロッキーによりリアルな影のグラデーションが表現できるようになり、頭の中で陰影のイメージができるようになり、必要最低限な位置に陰影を表現する線を置くことができるようになったのではないか?と考えられます。

<陰影を上手く描く練習>
①陰影のつき方を観察して理解する。
②デッサンで影のグラデーションをリアルに書けるように練習する。
③紙の上に線を引かなくても、なんとなく頭の中で影のグラデーションをイメージできるようになる。
(↑ここまでくれば、ほぼ陰影が正確に描けるようになります。)
④線画で陰影を表現する。
(最初は陰の線が多いでしょうが、だんだん最低限の線がどこに必要か感覚的に見えてくると思います。)

画材の複用による表現

ミュシャの習作の中には鉛筆にインク、筆に及ぶ複数の画材を用いたものがあります。絵を見た感じだと、最初は単体の画材を利用していたのでしょうが、描いてる途中から「他の画材も使えるんじゃないか?」と思い立って実験的に画材を加えて行ったのではないか?と推測します。

まあ、この推測が当たる当たらないはどうでもいいとして…

画材の持つ特性、鉛筆の柔らかい線と濃淡の表現力。インク(ペン)の持つ細く鋭い線、ハッチング表現。筆の持つ太く荒い線、力強さや大胆さ、勢い。を同じ一枚の絵の中で使い分けているのは面白いです。

単体で使う、複合して使う、表現の幅の変化と画材の能力を知ることができる実験的な描き方だと感じました。

線画と色画から気づく構成感

ミュシャはその美しい漫画のような線(アウトラインの強い)の絵が有名ですが、中には一切線のない色だけで描いたリアリティのある絵もあります。

アウトラインのないものは一見ミュシャの作品か?と思うのですが、よくよく全体を見るとミュシャ感が伝わってきます。

このミュシャ感は何か?線のあるなしに関係なく両作品の共通点は絵の構成です。

普通にミュシャの作品を見ていても構成の魅力には圧倒されるのですが、線画と色画を比較するとその構成がどう機能していたのか?どうミュシャらしさを表現していたのかを理解することができます。

純粋美術から構成主義への派生

ミュシャの作品の見事な構成を見ていると、構成主義について気づくことがありました。

構成主義について僕はこれまで、写実主義とは違う過程で生まれた、効率的に大量生産された工業製品のための美術だと思っていました。

しかし、ミュシャの作品を見ると写実主義的な世界にも構成という考えは存在しています。これは構成主義が、装飾的なアール・ヌーヴォーの時代からアール・デコ、ロシアアヴァンギャルドに時代に変化する過程で、写実主義がもつ装飾性を排除することで誕生したものだと考えられます。

つまり、写実主義から装飾性を除き構成だけを抽出したものが構成主義、写実主義の派生ではないか?と考えました。

<構成主義とは?>
・純粋美術から装飾性を除き構成だけ残した
・純粋美術の派生
かもしれない…

(実際の構成主義は、キュビズムの影響を受けロシアで1920年頃までに流行っていたものです。最初は抽象彫刻から始まり、その他アート、ビジュアルデザイン、インダストリアルデザインにも影響がおよびました。機械や工業製品の幾何学体を利用したアートは当時におけるメディアアートとも呼べるかもしれません。)

ミュシャと漫画家の比較、数学的な曲線

ミュシャと共に展示されているイラストレーターや漫画家の作品を比較すると、ミュシャの線の数学的な構成の美しさが如実に感じられます。

ミュシャに感銘を受けた人の作品は、構成こそミュシャをオマージュしていますが、キャラクターや文字は作者独自のもので全体の統一感にかけます。

ミュシャは全体の構成(枠など)の美しさだけでなく、画面内のキャラクターにも構成美を取り込んでいます。例えば、髪の毛のカールや体のラインなどです。この、全体と細部(キャラクターなど)に構成という共通要素を持たせることで美しさに相乗効果が生まれているのだと考えました。

このことから、1つの技法(構成主義など)を画面内で行うなら、そこだけでなく全体的にその技法を及ぼすようにするのがいいと考えられます。

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