見出し画像

感覚と思考を交互に使って鑑賞する「information or inspiration?左脳と右脳で楽しむ日本の美」

information or inspiration?左脳と右脳で楽しむ日本の美
(サントリー美術館)

展示作品
・色絵家形丁子風炉
・楓流水蒔絵車透香枕
・藍色徳利
・菊蒔絵煙草盆
・薩摩切子 紅色被皿
・御所車桜蒔絵提重
・薩摩切子 藍色被船型鉢
など

「information」と「inspiration」の展示の違い

inspirationのコースは、作品の特徴を独特な見方で観覧者に見せることで、より感覚的に作品を見れるような工夫がありました。

informationのコースは、作品を見る前に、その作品についての解説や製法、その他関連する情報を大量かつこと細かに説明がされており、作品そのものを鑑賞するよりも情報として思考で作品を見る工夫がありました。

展示は始めどちらのコースから入ってもいいようになっています。僕は、先にinspirationに入り、次にinfomationに入りました。

理由としては、先にinformationに入ると作品の情報に左右されて直感的(感覚的)にな判断に狂いが生じるのが嫌だからです。


「inspiration」なんとなく美しいと思い、美しさを言語化しないこと

inspirationの作品を最初に見て気づくことがありました。それは、自分が普段作品を鑑賞するときに感覚的に美しいと思っているつもりだったということです。

わかりやすく言うと、いつも感覚的(理由もなく、なんとなく)に美しいと判断していたのが、実は作品を見た瞬間に「このラインが美しい」「この絶妙な色が味を出してる」というような理由づけを勝手に頭の中で行なっていたということです。

このことに気づくことができたのは、inspirationのコースでは作品のキャプション(文字情報)が一切なく、作品の特徴を独特な見せ方で切り出して見せる展示方式だったためです。何の文字情報もないのだから、普通は感覚的に美しさを感じ取り、その美しさを言語化する(意識的に理解する)ことはできないはずです。


「information」鑑賞の手助けとしての少しの情報

informationのコースに入って気づいたことは、作品を見るときに情報をそこまで求めていないということです。

情報は鑑賞のための少しの手助けとしてだけあればいいので、作品についての概要が知れれば十分だと思います。その作品の経緯、製法、関連情報まで細かく言われても、情報過多で頭がパンクしてしまい作品を見れなくなってしまいます。

このことに気づくことができたのは、informationのコースは多くの情報を壁に書き出し、作品そのものを説明文から離れた位置で小さな窓越しに見せていたためです。作品を始めに見ないで、説明文だけ読んでも作品そのもののイメージが上手くつかず、文字情報だけではよくわからないことがわかりました。


思考と感覚を交互に使い、作品を多彩に楽しむ

inspirationとinformation、右脳と左脳、思考的と感覚的は両方を交互に使うのが最も効果的なのだと考えられます。

感覚的に作品の美しさを見た後、どこが美しいのかを思考的に理解する。思考によって出た答えにピントを合わせて、もう一度感覚的に作品を見る。

こんな風に思考と感覚を交互に使うことで、1つの作品にいろいろな見え方が生まれて多彩な楽しみ方ができます。

<感覚と思考で楽しむ鑑賞>
・なんとなくで感じる美しさ
・美しさを思考して理解する
・作品のストーリー(制作経緯や時代背景、製法)

では、いくつかの作品の紹介を通して、inspirationとinformationの見方の違いについて書いていきましょう。


薩摩切子 紅色被皿(べにいろきせさら)

薩摩切子 紅色被皿は、ガラス製の器の裏面に幾何学的な模様が彫り込まれており、溝には赤や青などの単色が塗られています。光が器に当たると机の上に幾何学的な模様が浮かび上がり、器本体とは違う美しさをまた醸し出します。

informationのコースでは、厚手のガラスに溝を彫り込む加工の難しさが語られており、当時の職人の試行錯誤や技術が凄かったことがわかります。

inspirationのコースでは、作品そのものの展示は行わず、円卓表面に作品と同じ幾何学の溝が彫られているのを触って感じる工夫がされていました。

inspirationのコースから入った僕はなんだか良くわからない円卓をとりあえず触り、なんとなく「面白いなー」と思った後に、informationのコースで正解を見て「そういうことか!」とスッキリする体験をしました。

薩摩切子 藍色被船形鉢(あいいろきせふながたばち)

薩摩切子 藍色被船形鉢は、全体は船の形をしていて、前方にコウモリ、後方に陰陽勾玉巴紋のレリーフが彫り込まれているガラス製の器です。

薩摩(鹿児島県)の方で製造されたガラス器で、中国への輸出用の商品です。これは、当時の藩の政策で、ガラス製品に力を入れることで財政を確保することが目的でした。

中国ではコウモリが一般に好まれており、その理由は蝙蝠の発音が幸福と似ているからだそうです。また、陰陽説が広く知られているために陰陽勾玉巴紋(太極図)が取り入れられたデザインになっています。

感覚と思考をごちゃ混ぜに使っていませんか?

作品の感覚的な美しさはもちろんありますが、作品に彫り込まれているものの理由や意味。、制作背景を知ると感慨深く面白くなってきます。

それは、情報を知らない状態で作品を見るのと、知った状態で見るのとでは感じ方が大きく違うことを知ることにもつながりました。

展示自体はもう終わってしまいますが、美術展や作品を鑑賞するときなどで、自分がどんな風に感覚と思考を使い分けているのか?またごちゃ混ぜに使ってしまっいたのか?に意識を向けてみてはいかがでしょうか?

意識的にこの2つの鑑賞の仕方をコントロールすることができれば、より楽しい作品鑑賞ができるようになると僕は思います。

🥷忍者の思考と精神を身につけるべく、日々修行を行ってますので見届けてもらえると幸いです。あとお仕事のご依頼もお待ちしております🙇‍♂️。サポートは兵糧(ひょうろう)に使わせていただきます。 WEB:https://shinobi-design-project.com/home