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女子高生店員と私

スーパーにバターを買いに行ったときのお話。

乳製品コーナーに行ってバターを探してみるが、見渡す限りチーズばかり。

チーズの品ぞろえだけは嫌に良くて、バターがない、というのもおかしな話なので一応店員に聞こうと思った。

女子高生と思わしきアルバイトの店員と、店長と思わしきオッサンの店員がいた。

ここで迷いが生じる。確実な回答が得られるオッサンに聞くべきか、可愛い女子高生に聞くべきか。答えは0.2秒で出た。

女子高生だ。

ということで、女子高生に「バターはどこですか?」と聞いてみた。

少し化粧が濃いが、可愛い。少し頬を染める私(気持ちが悪い)。

女子高生は言った。「ハイ! こちらです!」

意気揚々と歩いて行く女子高生。そのあとをつける31歳のオッサン(私)。女子高生は「私に任せて!」と言わんばかりの堂々とした歩きっぷり。非常に頼もしい。

「ここです!」女子高生は売り場を指差した。

そこはなんと、さっきイヤと言うほど見た、チーズまみれの乳製品コーナーだった。

ドヤ顔の女子高生。困惑する私。

オドオドしながら私は言った。「あ、あの………バターは?」

「ハイ! こちらです!」女子高生は、なおも自信満々に言う。

いや、だからチーズしかないんですって。バターがねえんです。そこに、バターは、ねえんです。

「え? で、でもチーズしかありませんよね?」と私。

「え? チ、チーズ?」と女子高生。

「……………」

「……………」

なんか私が不安になってきた。バターってチーズのことを言うんだったっけ? いや、そんなことはない。ワシかて伊達に31年も生きてへんわい。バターはバターや。

「え、えっと、チーズじゃなくて、バターを探してます……」

「…………バター?」

「ハイ、バターを……」

「…………バター?」

「ハ、ハイ……」

静かに見つめ合う二人。

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「あ、ないんですね? バター」

「すみません……」

「いえ、ありがとうございます……」

「…………」

教訓1:最近の若い子の中にはバターとチーズの違いを知らない人がいる。でも、ここでバカにしたり、クレームを言ってはいけない。彼女は悪くない。悪いのはバターとチーズの違いを教えない日本の悪しき教育である。

教訓2:欲しいもの、欲しい情報を得たいなら、少しでも確率の高い方法を選ぶこと。私の場合、店長と思わしきオッサンに聞くべきだった。

教訓3:可愛ければ許される? まったくその通りである。

女子高生の微笑ましい姿を見ることに比べたら、ホットケーキにバターを乗せられないことなど、些細な問題なのであった。


働きたくないんです。