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ヘレディタリー/継承

早稲田松竹にて鑑賞。ホラーは好きだけど劇場ではめったに見ない。たぶん「リング」以来。この映画も早稲田松竹の上映プログラムで見かけるまでは全く知らなかった。ずいぶんと評判がいいみたいなので観てみることに。

以下、ネタバレあります。

単刀直入に感想を述べるならば「しんどい」「疲れた」といったところ。見終えたところでグッタリしてしまった。描写が緩慢だったり、上映時間がやや長いということもあるんだろうけど、「やばい映画観ちまったぜ・・・」という、ホラー映画独特の余韻のようなものが全く無く、ただただ疲労感だけが残ったのだ。

でもなぜなんだろう。即座に「ここがイマイチなんだよな」と思い当たる点は無い。評判通り、よく出来ているホラー映画だとは思う。

では例えば「シャイニング」や「リング」と比べて何が足りなかったのだろうか。色々考えてみたけれど、思い当たったのは「感情移入の対象が存在しないこと」だった。

母親、父親、息子、この三人全員が追いつめられていく話だけど、どの人物にも思い入れることができない。病的なまでにヒステリックな母親。意気地なしで内向的で無責任な息子。包容力も愛情も存在感もすべてが希薄な父親。家族間不和の描写としてはとても優れているとは思ったけれど、感情移入の軸となるキャラクターが存在しないがゆえにすべてはただの他人事として物語が進んで行ってしまう。

「シャイニング」だったら妻ウェンディの立場で、「リング」だったら浅川(松嶋菜々子)の立場で、感情移入しているからこそ感じた「追い詰められる恐怖」。それが欠落しているがゆえに、恐怖感も希薄だった、、、ということなのかな。

後はラストシーンがなあ。めちゃくちゃ厳かに、ミステリアスに、じわじわと進められてきたストーリーが結局のところ「悪魔崇拝のカルト教団」なんてありきたりな設定に着地してしまうのは正直ガッカリした。

とはいえこれが初脚本・初監督というのは素直にスゴイと思うし、これからもホラーを撮るならまた観たいなとは思う。アリ・アスター、要チェックだ。

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