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ビリディアナ

早稲田松竹で鑑賞。こないだの「ヘレディタリー」に続いて、なんだか疲れる映画体験が続いている。

言わずとしれたルイス・ブニュエル監督の代表作の一つ。僕も名前だけは知っていた。でもブニュエルって刺さらないんだよな。何本か観てるけど、どストライクの作品が一本も無い。

今回は「皆殺しの天使」との二本立て。なかなか見れないラインナップということで足を運んだ。朝イチの初回から観に行ったんだけど、結構な行列できてて驚いた。

タイトルの「ビリディアナ」は主人公の名前。ビリディアナは修道院の尼僧だ。

尼僧を主人公にした映画で僕がすぐに思い浮かべるのはジャック・リヴェットの「修道女」。大好きな映画だ。どのゴダール作品よりもアンナ・カリーナが素晴らしい。と個人的には思っている。

ブレッソンの「田舎司祭の日記」やモレッティの「ジュリオの当惑」も、キリスト教に仕える人間が理想と現実の乖離に苦しめられる姿を描いている。

「ビリディアナ」もその系譜に属する作品なのかな、となんとなく想像しつつ観ていたのだけど実際はまるで正反対の内容だった。キリスト教に対する嫌悪感、敵意、悪意のようなものしか感じられない。後半の乞食たちの狂ったような饗宴はまさに地獄絵図でただただ「早く終わってくれ」と願うばかりだった。あの場面、かの有名なダヴィンチの「最後の晩餐」を再現しているのも、キリスト教をおちょくってるようにしか見えない。

ちなみに後から知ったんだけど、The Rolling Stones のアルバム「Beggars Banquet」のアートワークが「ビリディアナ」を模しているとかなんとか。ああ、心底どうでもいい話だな。

僕はキリスト教徒ではないけれど、宗教も広い意味でのライフスタイルの一つだと思っている。誰が何を信じようとそれは自由だし、あえてそれを否定する必要性も感じない。だから信心深い人を、まさにこの映画のビリディアナのような人物を揶揄するような姿勢は好きじゃない。率直に言って不快感だけが残った。

しかしながら結局のところ、そうやって僕が一定の距離感を持って「キリスト教」を眺めることができるのは、僕が日本人であるからこそなのかもしれない。僕はミッション系の学校を卒業していて、聖書にもそれなりに親しみがあるけれど、所詮は「キリスト教に一定の理解がある普通の日本人」でしかない。

ブニュエルの生い立ちについて詳しいことは知らないけど、キリスト教とは浅からぬ因縁があるようだ。こんな映画を撮ってしまうくらいなのだから、そりゃ色々とあるんだろう。

でもやっぱりこの作品は好きじゃない。二度と観ないと思う。

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