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バグダッドカフェ

黒人の青年が一生懸命練習していた曲。あれを君は僕に教えてくれたっけ。これはバッハの曲なんだよ、って。曲名は忘れちゃったな。

あの経験があったから、40を過ぎて急に思い立ってピアノを始めたときでも、すんなり色々弾けるようになったんだと思う。ショパンのノクターンなんか弾けるようになったんだぜ。一度君に聞いてもらいたかったな。

でも結局途中でしんどくなってやめてしまった。弾き続けていないと忘れてしまう。だから忘れないために毎日のように弾く。それが無理だった。同じ曲ばかりだとやっぱり楽しくないし、でも新しい曲を覚えるのが大変で大変で。読譜がほんと苦手で苦痛なんだ。

おかげで覚えた曲もほとんど忘れちまったよ。坂本龍一の「Energy Flow」とか、ベートーベンの「月光 第一楽章」とか。また覚え直して弾けるようになろう、なんて思い立つ日がいつか来るのかな。

でも君が教えてくれたいくつかの曲はなぜか今でも弾けるんだ。若い時に覚えたから。本当にただそれだけなのかな。

Juvetta Steele の「Calling You」を聞くと、僕はいつもあの日々のことを思い出す。

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