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「キャラクター絵画」回顧録1

「キャラクター絵画」というカテゴリーが存在するらしい。

なんそれ?

僕なりに、わかることから勝手な思い込みまでを書いてみようと思う。
(何となくあまり気が進まないけど…)


キャラクター絵画と言っても、現在その言葉だけからイメージしても範囲が広く曖昧すぎる。
ここ10年ほどの時代背景は最低でも押さえておく必要があると思う。

僕の知る限りでは、2010年頃からpixivユーザーを中心として、キャラクターを描いた、もしくはキャラクターのようなイメージを描いたアナログ作品群が大きなブームとなった。そして、その勢いはアートの世界にも波及し、関東や関西の日本各地で一時的な盛り上がりを見せていた。

なぜ一大ムーブメントとなったのか?
いくつかの要因が重なっていると思われる。

一つは、SNSプラットフォームが整備される過渡期だったということ。

Twitterが流行りはじめたのが2009年頃。それとほぼ同時期にpixivという巨大イラストコミュニティが誕生する。
元々、絵を描きネット上で発表する人は沢山いたが、多くは個人のホームページや、ホームページに設置されたお絵描き掲示板でユーザー同士は交流していた。それがTwitterやpixivなど、SNSの登場によって幅広い観客に瞬時に作品がアクセスできるようになり、コミュニティの規模が拡大した。作品を通じて、作家同士が匿名性の中で自身のカテゴリーを超えて連結し、新たに作品が変容していった。
つまり、SNSでの無意識的な交流を通して、作品のジャンルが溶け合って混じり合う現象が起こった。

たとえば、絵画とイラストのジャンル溶解。
デジタルとアナログの垣根の溶解。
様々な世代のアニメやマンガ、そこから派生する二次創作、R18、ロリ、ショタ、ケモノ、BL、、オタク文化とフェチズムの溶解。
商業イラストを描く神絵師と、日々好きに落書きするオナニストの溶解。
絵と記号、文字、詩、手振り身振り、あらゆる視覚文化情報の溶解。
お手本が乱立する多神教の中での表現欲求の溶解。
etc...

匿名性の渦の中で、様々な出自を持つ人々が入り乱れる、メルティングポットがそこにはあった。

美大で日本画科の課題をこなす傍ら、自宅では夜な夜なペンタブでキャラクターを描きpixivにアップする美大生。
反対にデジタルイラストが描けないから、絵の具でキャンバスにキャラ絵を無理やり描く油画科の美大生もいた。
たとえば、僕の周りでもこんなことが起きていた。

そもそも、一口にキャラ絵といっても様々な性質を持っていた。
二次創作としてのキャラ絵、そこから派生したオリジナルのキャラ絵、インターネットミームとしてのキャラ絵、性的対象物としてのキャラ絵、ネット上での自画像としてのキャラ絵・・・・・・
生まれも育ちも違うキャラ絵が混在し、膨大な数の領域横断的な試みが発生していた。

既存のアニメや漫画のキャラを引用してメディウムをずらす作品。
デジタルキャラ絵にアナログ的なノイズをフィードバックさせた作品。
キャラクターの記号性=ガワを剥ぎ取りコラージュした作品。
風景の窓としての絵画の中にキャラ絵を潜ませるロマン主義的な作品。
表現主義的にキャラを歪めて抽象化しドローイングする作品。
等々…

キャラ絵を描くということに注目して例を挙げてみたけど、他にもここに書き切れないくらい様々なチャレンジが日々行われていた。

(その辺りの話は以前も少し書いています。)
みなはむさんについて 過去の記事

(僕の当時のpixivブックマークを参考までに貼っておきます。かなり偏ったリストですが。)
清方のpixivブックマーク


二つ目。
やがて、それらがアートの世界から観測され始める。
全ての活動を追うことは出来ないが、いくつかの特異な実践が行われていたことを僕は覚えている。

アーティストの藤城嘘氏が立ち上げ、後に美術批評家の黒瀬陽平氏が加入、編纂を行った「カオス*ラウンジ」の存在。
京都を発信地とした、アートグループ「0000(オーフォー)」の様々な活動や、0000ギャラリーで開催されたペインターのob氏によるキュレーション展「wassyoi」。
そして、世界的な現代アーティストの村上隆氏がpixivと積極的に関わり、新人アーティストの発掘と養成を行なっていたこと。


かなり長くなりそうなので、次回につづきます!

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