夏に見たもの

もうすっかり秋になってしまって、本当に悲しい。秋は一番嫌いな季節かもしれない。苦しいな。

夏に見たものを振り返る。すぐに忘れてしまうから。

中村佑介さん原画展@あべのハルカス。弟と見た。中村さんの大学時代の絵もあった。極初期の木版画っぽい女子高生を描いた絵や、デビュー初期のビアズリーのように人体がクニュ〜っと曲線になった絵から最近の様々な仕事まで、もちろんアジカンのアートワークも満載、また大学時代のデッサンや課題作品までもが網羅されており、会場で二人で話しながら鑑賞、大変楽しめました。印象としては、原画展なのでやはり手仕事の美しさが際立っていました。僕は初期の、崩壊アンプリファーあたりの線描、手や指の曲線が好きだけれどあの美しさが手で引いた線ならではのものだということが、小さな原画を見ているとよくわかります。それからイラストレーターとしての多彩な仕事ぶりなんかは若者たちにはすごく刺激があるのではと思った。実際、会場には大学生くらいの若者がたくさんいた。大阪芸大のスペースでやっているというのもあるし。アットホームな展覧会。中村さん大学時代の絵もしっかりとスペースを割かれていて、学生たちへの啓蒙的な側面を感じた。実際、中村さんは教本を出版されていて、それがまた面白い。「みんなのイラスト教室」という本で、装丁が手軽で値段も安く、しかしイラストを描いている様々な相談者の悩みに中村さんが答えていくという内容はガチそのもので、教本としての本気度がすごい。普通に勉強になります。普通アーティストは面倒&作品の神秘度が落ちるから教本なんてやらないと思うが、中村さんはあえてやっている。ちょっと興味が出て、そっち方面の活動をチェックしてみると教室を開いていたり書籍の出版、Twitterの印象など「絵」の楽しみを身を晒け出して伝導する啓蒙家としての側面が見えてきた。で、改めて今回の展覧会を振り返ると、実に啓蒙的なものだった。大学と組んでやっているというのもいいし、何より若い人が多い。ただの絵を並べた展覧会ではなく、若者の未来に直接的に作用する、そういう広がりを持った展示だったと思います。若者若者言ってると僕が年寄りみたいだけど、僕もその若者の一人である。

吉田芙希子さん×唐仁原希さんの二人展@ギャラリーアクア。アクアは市の建物らしいが京芸が半分入ってて(正確ではないかもしれません)、京芸出身の個性的な作家の旬な展示が見られるいい場所。広いし、静かだしね。市役所、図書館みたいな雰囲気ある。床が、グレーの絨毯だからね。基本無料だから誰でも入れる。吉田さんは京芸の先輩で(直接お話したことはないけれど・・)学部の時に僕は作品を見ていて、よく陶酔していたのです。あの陶酔感を、美術作品としてのバリバリの強度を持たせて出現させているというのが、いつも作品を拝見して驚きますし、実際の作業としてどれだけ大変なことだろうかと考えてしまいます。今回は陶磁器の焼きものの作品もあって、工芸への新しい方面へのアプローチの予感。唐仁原さんも学部の頃から僕は見ていてすでにあの世界観が絵画の中で完璧に完成されていて人々を魅了してた。うちの母親とかも好きだったような?今回は新作なのかな。一点、大きな異様なキメラの樹木。暗闇。絵の中のモチーフが古城から発掘されたような立体物、銀が錆びて真っ黒になったような。よりその世界観が、現実世界を侵食していました。台湾の漫画好きな友人と行ったけど面白がってました。

国立国際美術館へ中原浩大さん「海の絵」を見に行く。これはまた詳しく書いてもいいけど、もうずっと頭の片隅に海の絵はあって、幻のような存在で、現物が見られるチャンスがやっと巡ってきた。国立国際のコレクションは関西の現代アートを結構持っていて、よく企画展と一緒というかついでに見られるコレクション展で展示されている。僕が思うに関西のある特定の作家たちの作品はある種の羽がついたみたいな軽やかさがあって(近いところからいくと例えば、伊藤存さん、法貴信也さん)、ふらっと見に来た人々に何か洗礼を与えているのではないか?と思うのです。僕もかなり前いつかのコレクション展で法貴先生の絵を見て、記憶にしっかり刻まれている。そういう意味で美術館のコレクション展というのは良くて、自分の意図してない作家と出会える場だから、探し物を思い出す気持ちで見ていくと楽しい。展示としては雑多には見えてしまうのだけど。今回は海の絵を見に行ったわけだけど、同時に岡崎乾二郎さんや伊藤存さん、青木陵子さん、気になっていた作家作品も見ることができた。予想外の出会いは、木村忠太さんの絵。何か不思議さがあって、ハイブリットな感じがした。きれいだったし。現代作家に混じって一点、セザンヌの絵もあった。風景なんとかという、一応テーマがあったらしくそれに合わせたセレクト。そちらもよかった。書き出すとキリがないですね。だからコレクション展は真面目に見ていくとちょっと疲れる。「海の絵」については、写真を撮りまくったのでみずいろでスライドしたいなと思ったけどタイミングを逃し続けていて言葉もそんなに持ち合わせていないので一回ブログにでもまとめようかな。実際に見てみると、かなり絵画でした。絵の具を使ってある意味彫刻的な楽しみ方をしているとも言えるかな。また書く。ちなみに企画でやってたブリューゲルも一応見ておいたが、なんか全く頭に入ってきませんでした。もっとちゃんと見ればよかった。

波さがしてっからで柿田真吾さんの展覧会。アイフォンの画面をスキャンした作品群。画面、タッチパネルに着く汚れ、ノイズをスキャンした先品。アイフォンの画面は、確かに指の油ですぐ汚れる。僕はそれが嫌いで、帰宅したらアルコールで拭きとるのが日課になっている。僕はそこに絵として目を向けたことはなかったけど、柿田さんは写真という側面から着目。意図せず描いている、描かずに絵になるという現象そのものはアートのトレンドであり、そこが一番身近なところ、アイフォンから繋がっている。波さがしてっからのラインナップには独特のノリがあって、今回の柿田さんは初の東京の作家らしくて、今後は関東系の作家もやってほしいな、と個人的に思う。僕の知らない、グルーブ感あふれるアーティストを、あの場所で、みたいな。

パープルームの林間学校。もう書くのが疲れてきた。これは次回。これは展覧会ではなくて、トークイベントだから(パー的に言うと授業らしい)、別枠です。ただ一言、感想としては、大変面白かったし、ただただ、パープルームの皆さん、いい感じになってほしいですね、幸あれ・・という印象です。ユニークな時間でしたね。また、見に行きます。

久々にブログやったら体力を使い果たした。他にも色々見たけどアート関係はこの辺かな。夏は雲が、特に美しくて、でもだから結局、夏の空の入道雲が一番感動した。そのくらい。あとは、大文字。写真貼っときます。


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