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リベンジマッチ

次男の目線が私の目線に追いつき追い越そうとしていた中二病真っ盛りの夏。

何が気に入らないという理由もなく、いつも不機嫌な次男。毎晩遅くまで塾ご苦労さんだねと思っていたのだが、案の定おサボリしていた。塾代一コマ幾らだから1日分が〜と計算していたらだんだん腹が立ってきて、ブチブチ文句を言ってみた。次の瞬間、次男が私の靴を部屋の中に放り込んできた。カチンときた私は「ちょっといい加減にしなさいよ!」久しぶりにお尻を引っ叩いてやった。ケツ触られるなんて屈辱とばかりの形相なのに、次男は私を無視して通り過ぎようとした。すかさず私は次男の肩をつかまえた。両腕で両肩をガッチリと掴んだけれど、さすがに面と向かって組み合うと倒されそうになった。思わず次男の胸におでこをくっつけた。と同時に次男の膝が私の鼻に入った。膝蹴りを喰らった。瞬間、顔を上げたけれど間に合わなかった。
むかーっ‼︎ 隣の部屋で呑気に寝ているオヤジを叩き起こした。「あんたの息子に鼻を蹴られたんだから起きてきなさいよ‼︎」
オヤジは訳分からず飛び起きてきて次男の前で仁王立ちして「今度やったら承知しないぞ!」と言い放った。「今度がある訳ないじゃない。今承知しないから今怒ってるの‼︎ ばっかじゃない!」涙流しながら鼻水垂らした私に怒鳴りつけられたのはオヤジだった。隣の部屋から様子を伺っていた長男が飛び出してきて、アナコンダの如く弟にしがみつき「喧嘩にもやっちゃいけない技がある」と喧嘩の流儀を説いていた。長男、お前はえらかったよ。
幸いにも私の鼻は折れてなかったけれど、しばらく鼻を噛むと鈍く痛かった。反射的に頭を浮かした私もスゴかったと思う。
母親を力で負かせちゃう事に気付いて気まずい次男。まだまだ力でねじ伏せるつもりだったのに「引退」の二文字が浮かんだ横綱のような私。アツイ夏だった。

いつかリベンジマッチをしてやろうと密かに思っていた。次は最終兵器「泣く」を繰り出してやろうとか卑怯な戦法を考えていたけれど、あれから4年リベンジマッチは叶っていない。もう次男は本気を出さないだろう。あんなに私を怒らせるヘマもしなかった。

それでもその時を想定して、相手を組み伏せる技をレスリング経験者に教えてもらってある。
相手の頭頂部を髪の毛をつかんで一気に床にガンと打ちつける!
私、絶対やり返して終わりたいタイプ。

週末、受験生の次男をひとり留守番させるのが後ろめたい私は軽くジャブ打ってみた。「ニイニイだけじゃズルしさ、来年は京都に音博に連れて行くからね。でもってA5ランクの肉食べさせてやる!」表情をうかがうと「うん」と頷く次男。素直すぎる。肩透かし食らって転がりそうだ。全くかわいい。ほっぺをプニッと掴んでやりたいところだが、頭突き怖いから止めておこう。

今年の音博も行ってないうちから来年の音博を楽しみにしている。
大学生になって気が変わったとしてもいいからね。今ムフフだから。

#そんなオヤジは初音博 #京都音楽博覧会

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