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陶芸で独立するのは簡単

最近、いろいろな料理人さんとお話しする機会が多い。料理人さんと話していると、その行動力や考え方、熱意や広い視野などにただただ感心することが多い。

「ものづくり」という点での共通点のようなものも感じるので、余計に話しがストレートに響くのかもしれない。

そんななかで、料理と陶芸の世界における「独立」ということに対する意識の違いについて思うことがあったので、今日はそんなことについて書いてみたい。

料理人さんにとって「独立」というのは、一つの夢であり目標だ。それを目指している人は、その目標を実現するために国内、あるいは海外のレストランで腕を磨き、料理のスキルや経営のために必要な知識を学ぶ。

休みの日には勉強のために遠方のレストランまで足を運び、少ない給料の中から身銭を切って高級な料理を勉強のために食べ歩く。

食材を勉強するために農家さんや市場、あるいは器の工房などにも時間を見つけては足を運ぶ。

「独立」という目標に向かって、自分に必要な技術や知識を得るために1日も無駄にしないという思いと覚悟が溢れている。

そんな下積み時代を経て独立をする人が多い。少なくとも、僕が最近お会いすることが多い料理人さんはほとんどがそういった方だ。

そんな料理人さんと比べると、陶芸の世界で独立したいということを言っている人たちの意識はどうしても低いと感じてしまうことが多い。

もしかすると、内に秘めたる思いはすごいのだが、それを僕が感じれていないだけかもしれない。そんな可能性もある。

別に統計をとったわけでもないし、あくまで僕の感覚的な話だ。でも、感覚という話では片付けられないくらい、陶芸と料理人さんではその意識に大きな違いを感じてしまう。

この違いはなんなのだろうか。

独立へのハードルがぜんぜんちがう

個人的には、これが大きいのかなと思っている。飲食の世界で独立するということは、基本的にお店を持つということだ。最近はシェアキッチンなどいろいろなシステムもあるが、基本的に独立=お店を持つということだ。

それに対して、陶芸の独立はというと、まずお店を持つという概念は基本的にあまりない。器をつくる環境=工房を手に入れることが陶芸における独立ということになる。

ここでの大きな差は、やはり金銭面だ。

要するに、独立に対してかかる費用がぜんぜんちがう。飲食では、改装費、厨房機器や家具、器など、全部あわせると数千万円という金額が必要になることも珍しくない。

資金の調達に関してはいろいろあるだろうが、銀行などの金融機関から融資を受けて独立するケースも多い。

陶芸の世界で、独立に際して数千万円単位で金融機関から融資を受けて独立しているという話は僕はあまり聞いたことがない。

そもそも、工房の土地建物を購入するということがない限り、陶芸の独立にはお金があまりかからない。

窯は電気窯かガス窯だとすると新品でもだいたい100万円くらいで購入できる。ちなみに僕は中古の窯1台でずっと仕事をしていた。20KWの電気窯で価格は20万円だった。

あとは電動ろくろも新品で10万円くらい。

あとは...作業台や収納棚などが必要だが、これは新品で買うとそれぞれ10万くらいはするかもしれないが、中古も結構あるので探すとかなり安く手に入る。

設備と言えばそんなものだ。それで最低限は事足りる。あとは少しずつ足していけばいい。

また、飲食の場合は集客が大切なので立地もかなり大切だが、陶芸の場合はお客さんを呼ぶ必要もないので田舎の土地でも問題ない。

なので、家賃などもかなり安いところで大丈夫。あとは一人で作業することが基本なので、人件費もかからない。芸大や陶芸の専門校を卒業してすぐに独立するという人も結構多い。

あげればきりがないくらい、独立に対する意識はおそらくぜんぜんちがう。

独立へのハードルがかなり低い。

なんとなく、気軽に独立できてしまう。

それが陶芸という世界だ。

ハードルの高さと覚悟の度合いは比例する

陶芸の世界の独立に対する意識が低く感じるのは、そのことと大きく関係していると思う。

また、家賃や人件費などの固定費も低く、以前のnoteにも書いたが土などの原料も安いので、変動費もたかがしれている。

要するに、あまり売れなくても、ギリギリ生活できてしまったりする。

そんなハードルの低さは、下積みをしたくないという今風な考え方ともマッチして、下積みをぜんぜんせずに独立するという人も結構多い。

もちろん、下積みをあまりしていなくてもしっかり作家として成功している人もいる。なので絶対下積みをするべきだ!!と声高々に訴えるつもりもない。

どうせ社会の荒波にもまれるのなら、早くもまれた方がいいという気さえする。

だが、それでも、あまりにも丸腰に近い状態で、独立して苦労している姿を見ると、もうちょっと下積みしていたほうが後々楽なのになーと思ってしまうことが多々ある。

本当かどうか分からないが、僕たちの世代などは結構100歳とかまで生きてしまったりするらしい。陶芸を仕事として何歳くらいまでやりたいのか分からないし、別に決める必要もないのだが、できるだけ長くやりたいと思っているのなら、最低限の下積みは遠回りではなく長い目で見たときに確実に近道になる。

陶芸の学校に通っている人たちが、失業保険をもらっているからという理由で17時に学校が終わったらそのまま家に帰ってゆっくり家で過ごしているというのを聞くと、ほんまに独立する気ある??と思ってしまう。

いや、もしかすると家で猛練習しているのかもしれない。陶芸の本を片っぱしから読破しているのかもしれない。ゆっくり家で過ごしているというのはあくまで全て僕の想像だ。

そもそも僕も学生時代はちゃらんぽらんに遊んでいた口なのであんまり偉そうには言えない。

でも、だからこそ言わなければとも思っている。

陶芸は、独立するのは簡単やけど、飲食とか他の仕事といっしょで、ずっと仕事として続けていくのは大変。

でも、しっかりと意識を持って取り組めば、必ず食べていける。

それは僕が保証する。

がんばりましょう。

本気のご相談はいつでも大歓迎です。


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