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スプライサー

ひとは、一通りの人生しか生きられない。


私はよくばりです。

出会った人全てを大切にしたいし、

求められるもの全てに応えたい。

でも、それはできません。

その事実から、ずっと目を背けていました。

劇団「劇団」『スプライサー』

2021年8月22日、会場、ウイングフィールドにて。

植木歩生子さんの一人芝居を観ることができました。

22歳の私は、悩みごとなどなにもないと思っていました。

体力はないけれど、大きな症状が出ることもなく、病気と上手に付き合って

あたたかい家族と、優しい職場の中で、毎日楽しく暮らしていて

なにを悩むことなどあるのだろうかと思いながら、それでも確かに傷ついている心がありました。

いま、苦しい思いをしている人が世界のどこかにいるのに、どうして私は笑っていられるのだろう。

ひとつ隣の家は貧しさに苦しんでいるのに、私が何を贅沢なことを言っているのだろう。

自分のことを好きだと言ってくれている人のことを、私も同じように愛したい。

もう先は長くないおばあちゃんのそばに、毎日いたい。

心がわくわくすることにひたむきに取り組みたい。

家族の役に立ちたい。友達の力になりたい。

たくさん、叶えたいことはあるのに、今日という1日を、私は1日分しか送れない。

おばあちゃんに会って、勉強をして、友達と話して、病院に通って、

隣人に食べものを分け与えて、子どもに学ぶ楽しさを教えて、全世界を救う。

1日でそれを全て成し遂げられる人は、世界中を探してもいない。

でも、それをしたいと思っている自分がいました。


試験で満点をとれなかったとき、カメラマンさんからのご依頼を断ったとき、友達との約束に間に合わなかったとき、恋人からの電話に出られなかったとき

必要以上に、自分を責めてしまう自分がいました。

そのことを初めて自覚させてくれた、スプライサー。

植木歩生子さん、ありがとう。私は今を生きます。

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