天皇、並びに皇族の特殊性

4月12日発表の時事通信社の世論調査(https://www.jiji.com/jc/article?k=2019041200827&g=soc)において、皇位継承資格を女系・女性皇族にも広げるべきか尋ねたところ、「広げるべきだ」が69.8%だったとの結果が出た。
女系天皇は皇室制度の崩壊につながるという有識者の論理について、専門外の一般国民としての自分の理解を述べたいと思う。

天皇皇族と普通の一般国民との違いは、「父親のみをさかのぼって初代天皇に辿り着くこと」にある。これが有識者の言うところの血統の原理などのややこしい言い回しになるのだと思う。


私たちほとんどの日本人は、初代天皇の血が流れていると考えられる。
これは確率の話で、1世代前における2人(両親)の、2世代前における4人(祖父母)の血が流れている。同様に10世代前における約1000人の、20世代前における約100万人の血を受け継いでいる。自分が生まれてから次の子を産むまでの1世代を30年と考えたら、600年前=1400年代室町時代の100万人の血が流れている。
100万人のうち、例えば嫁入りで皇族を離れた元皇族を祖先に持つ人が一人でもいれば、現代のその人は初代天皇の血が流れていることになる。
時代を下るように考えても、現代人の多くは初代天皇の血が流れていると考えられる。
古来より何百人もの多くの皇族が臣籍降嫁や臣籍降下で皇族から民間人となった。そのいずれかの血を受け継いでいると考えるのが自然だろうと思う。
おそらく日本人のみならず、朝鮮半島中国大陸にも初代天皇の血が流れている人は大量にいると思われる。

ただこれは父親母親関係なく初代天皇と現代人をつなげた時の話。
ほとんどの日本人は、父母関係なく血筋をさかのぼればご先祖様のどこかに初代天皇を持つことになる。
しかし、天皇皇族だけは父親のみを通じて初代天皇に繋がる。これこそが天皇皇族の一般国民との違いとなる。
だから母親で初代天皇とつながる女系天皇・女性宮家は一般国民と同じなのだ。

もちろん確率で言えば、40世代父親のみをさかのぼったら皇族だった、みたいな国民はいるだろう。しかし、その人は皇族にはなれないし、もちろん皇位継承権はない。なぜなら一定の世代を臣籍で過ごした子孫は皇籍に復帰できないからだ。皇籍に復帰できるのは、元々皇族に生まれて臣籍降下した元皇族か、臣籍降下した元皇族の父親を持つ子しかいない。皇位継承権を持つのは皇族しかいない。

繰り返しになるが、皇族は「父親のみ」さかのぼることで初代天皇とつながるという特殊性を生まれつき持っている。一般国民である私たちは「父母問わず」さかのぼると初代天皇に繋がりうる。
「父親のみ」という特殊性を持つ人を皇族と呼んでいる(正確に言うと、特殊性を持つ血筋の近い人)。皇族は法律で定められているから皇族ではないのだ。

ではなぜ父親のみなのか。母親のみさかのぼって初代天皇に行き着いてもなぜ皇族ではないのか。
それは初代天皇が男性で、2代目天皇はその息子が継いだからだ。
もしも初代天皇が女性で、2代目天皇がその娘が継いでいたなら歴代天皇は脈々と女系が継承し、現代では男系絶対反対となっているであろうことは疑う余地がない。なぜならその場合、母親のみさかのぼることで初代天皇とつながるという特殊性が皇族を皇族たらしめているからだ。
しかし現実には男性の初代天皇の跡を、息子の2代目天皇が継いだ。この時にはすでに女系天皇という選択肢は存在しなくなった。

もし女系天皇が生まれた場合、即ち皇族の娘が一般人と結婚し、男子が生まれ、この男子が法律上の天皇となったとする。
この女系天皇が初代天皇とつながるには母親の父親の父親の……と遡らなくてはならない。これは天皇皇族の特殊性が失われており、もはや天皇ではない。一般人を法律によって天皇を詐称しているに過ぎない。
女性宮家も同様である。皇族女性が結婚して宮家を創設し、子供が生まれてもその子には特殊性はなく、一般人を法律によって皇族と詐称しているに過ぎない。

現在、女系天皇、女性宮家を容認するかどうかという議論が社会で起こり始めている。
以上のことを読んでいただいた方にはわかってもらえると思うが、容認するしないの問題ではなく、女性天皇・女性宮家は原理的に存在できない。
にもかかわらず、この間違った主張を中心として皇位継承問題を解決されようとしている。
皇位継承の根拠は、血の濃さでも、男女平等でも、徳の高さでもなく、「父親のみを通じて初代天皇に繋がる特殊性」にある。

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