マツモトキヨシ

三姉妹の賢い末の子

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NJSLYR:フュリアス・デス・ロード

#1「インヴォケーション」 「スゥーッ…」水を打ったような静寂。固唾をのんで見守るキョート貴族たち。マジナイの品に囲まれてフートンに横たわる、奇妙にも目覚めない娘。名うてのカンヌシ・エクソシスト、フランシスコ・魂(たましい)の熱持つ体。 「セイッ!」フランシスコ・魂が怒声と共に手にしたタマグシを娘に向けて振り下ろす。辺りの空気ごと揺るがすような、大喝であった。これがフランシスコ・魂のオハライか。居並ぶ貴族の中にはそう考えて頷くものもあった。一月前に倒れて以来一度も目を覚

    • NJSLYR:フュリアス・デス・ロード #2

       ヒョー。ヒョーウー。さる日のキョート城。汚染された重金属雲の垂れこめる暗い空の下を、しめやかに歩いていく一団があった。フォーマル・ユカタに身に包んだ、いかめしい顔の男たち。頭にはエボシ・ハットを被り、手には笏を握っている。これらは日本の伝統的な正装である。  後には彼らの妻子が続く。同じく正装であり、巫女装束や十二単を纏う姿が見て取れる。一団はどこからともなく響く、か細い笛の音に導かれるようにして庭園を進んでいた。  やがて一行は縁側に面した広場にたどり着いて足を止めた

      • NJSLYR:フュリアス・デス・ロード

        「スゥーッ…」水を打ったような静寂。固唾をのんで見守るキョート貴族たち。マジナイの品に囲まれてフートンに横たわる、奇妙にも目覚めない娘。名うてのカンヌシ・エクソシスト、フランシスコ・魂(たましい)の熱持つ体。 「セイッ!」フランシスコ・魂が怒声と共に手にしたタマグシを娘に向けて振り下ろす。辺りの空気ごと揺るがすような、大喝であった。これがフランシスコ・魂のオハライか。見守る貴族の中にはそう考えて頷くものもあった。一月前に倒れて以来一度も目を覚まさず、共和国中の医者もさじを投

        • ネトフリに対しては莫大な財力を投じて珍妙な漫画原作作品を量産している点で何かしら海峡でひとりでに荒れ狂う渦潮を見るような畏敬の念を抱いていたが、実写ワンピはネトフリの激流をコントロール下に置くことに成功していた。再生可能エネルギーの時代はすぐそこまで来ているのだ。

        NJSLYR:フュリアス・デス・ロード

        • NJSLYR:フュリアス・デス・ロード #2

        • NJSLYR:フュリアス・デス・ロード

        • ネトフリに対しては莫大な財力を投じて珍妙な漫画原作作品を量産している点で何かしら海峡でひとりでに荒れ狂う渦潮を見るような畏敬の念を抱いていたが、実写ワンピはネトフリの激流をコントロール下に置くことに成功していた。再生可能エネルギーの時代はすぐそこまで来ているのだ。

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        記事

          実写ワンピース。トレイラーでは本当にこのキャラのルックでいいのの気持ちがぬぐい切れなかったが背景のVFXが上手いんだかで驚くほど気にならない。ところどころテンポが悪いがそれも原作を知っていればの話でなるほどこれがワンピ実写の決定版だという関係者の自信もよくわかる。総じて恐れ入った

          実写ワンピース。トレイラーでは本当にこのキャラのルックでいいのの気持ちがぬぐい切れなかったが背景のVFXが上手いんだかで驚くほど気にならない。ところどころテンポが悪いがそれも原作を知っていればの話でなるほどこれがワンピ実写の決定版だという関係者の自信もよくわかる。総じて恐れ入った

          Here comes SPIRITUAL MESSAGE. https://note.com/kiyoshi_matzmoto/m/m9b40e78b7846

          Here comes SPIRITUAL MESSAGE. https://note.com/kiyoshi_matzmoto/m/m9b40e78b7846

          ここにいないダチ公のために

          『ザ・フラッシュ』は数奇な運命を辿った作品だ。自分がフラッシュ単独作品化の知らせを始めて目にしたのは2018年、ジャスティス・リーグの劇場公開とほぼ時を同じくしていたが、早耳な諸兄はもっと早くに初報を聞いていたかもしれない。  そこからの紆余曲折はよく知られるところである。主演のエズラ・ミラーが書いた脚本がポシャったり、ワーナー・ブラザーズ経営陣のウォルター・ハマダがユニバースの拡張に芋を引いたり、マルチバースネタでマーベルに先を越されたり、DCEUの打ち切りが決まったり、

          ここにいないダチ公のために

          君たちはなぜ宣伝しないのか

          「君たちはどう生きるか」は意味深長なタイトルとポスター以外に公開前の宣伝が一切なされなかった。俺は駿が心配だった。どうしたんだい駿…作った映画を見せるのが嫌になったのかい…?今の君はtoo shyな心持ちかい…?俺は映画を見に行ったものか迷った。駿が見せるかどうか迷っている(推定)ものを俺が見に行くのは無遠慮ではないか。俺はデリカシーに欠けた人間だろうか…?君たちはどう生きるか。すでに問われていると感じた…。  結果から言えば、俺は公開からしばし間を置いて先週末に映画を鑑賞

          君たちはなぜ宣伝しないのか

          ヘチカチの木(冒頭1200字)

          資料b  A県Y郡H村には「へちかち原」と呼ばれる広大な枯れ野がある。半径1kmに及ぶこの地には作物はおろか雑草の類すら生えず、土地の者には忌み地として敬遠されている。しきたりによって「へちかち原」の中に住居が建てられることはなく、人通りも猟期に土地の者が足早に横切っていくのが見受けられる他は絶えてない。 「へちかち原」の全体はなだらかな峠になっている。峠の頂上から少し西側に外れた地点がちょうど中央に当たるが、そこには何かを燃やしたような黒い焦げ跡が残っている。言い伝えに

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          アリババとロックダウン

           台車に乗せて運んできた金塊を交差点のド真ん中にぶちまける。山と積まれた金塊の上に腰を降ろしてライフルを構える。道路の先に火花と稲妻を伴って現れるが早いか、駆けてくる略奪者に向けてライフルを撃ち放つ。弾が当たると略奪者はロウソクの燃え残りみたいにグズグズとくずおれて消えた。  相手が撃った弾は俺の足元の黄金に当たって甲高い音を立てた。その余韻が消えるのを待って、俺は無線機に思いっきりがなり立ててやった。 「こちらフラグメント胡麻(シムシム)。『アリババ』だ。どうした! 近

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          君島大空『縫層』が良い感じだ

          昨年デビューのSSW君島大空がつい先日リリースした『縫層』がとても良い!アコギを核とした宅録スピリット溢れる痛快な電子音の大洪水。それが全7曲だ。この頃新譜を出すのは気合の入ったアーティストばかりだが、例に漏れず君島大空がポツポツと出す新曲はどれも冴えていた。今回のは言わばその集大成だ。イノセントさを前面に押し出しつつも開かれた雰囲気と、単なる小洒落た印象に終始しない楽曲のアイディアの秀逸さ、そして楽しさとエモーションがある。YOUTUBEで全曲視聴可能だ。7曲とも聞いてほしいが特に『笑止』『縫層』がいいぞ。来月には配信ライブも行うそうだ。チェックだ。

          君島大空『縫層』が良い感じだ

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          落日の死影

           関東大震災の翌日、瓦礫の散乱する浅草の路上にて、異形の怪物と立ち会う男の斬り飛ばされた左腕が瞬き一つする間にピタリと元通りに着いた理由なら在る。  着いた左手は右手と共に大鉈の柄を握って異形に斬りかかった。後ろ足で立つ獣のような異形の前で、今度は男の右足がひとりでに切り取られて落ちた。転倒するかに見えた男はしかし異形の胴を袈裟斬りに斬り降ろしている。身体が軽くなるのを補うための重たい鉈だった。  男の落ちた足はフィルムの逆回しのようにして、やはり元通りに治った。斬られた

          西へ向かう三蔵

           春先に斉天大聖が街に戻ってきた。どこもかしこもその噂で持ちきりだった。 「それじゃ頼みの綱のボーイスカウトですら除隊になったわけだ」猪八戒が言った。 「パパが言うにはね」  なんでも脱走して地の果てまで逃げたつもりで、立ち小便をしたところが釈迦の手のひらの上だったらしい! そう僕が話すと猪八戒は汚ならしい声を上げて笑った。 「お前ら」僕らの座るテーブルへ、店の制服姿の沙悟浄が来た。「ポテトとコーラでいつまで粘るつもりだ。食い終わったら帰れ」彼は放課後をほとんどアルバ

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          竜とロックダウン

           台車で運んできた金塊を交差点のド真ん中にぶちまける。山と積まれた金塊の上に腰を降ろしてライフルを構える。五十メートル先にグリッチを伴って現れるが早いか、駆けてくる略奪者に向けて弾丸を撃ち放つ。命中。略奪者はロウソクの燃え残りみたいにグズグズとくずおれて消えた。  俺は無線機に思いっきりがなり立ててやった。 「こちらフラグメントゼロ、『悪竜』だ。どうした! せっかく目につくところにお宝を置いてるのに近ごろ元気がないぞ! オーバー!」切った後無性におかしくなり、腹を抱えて大

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          Shaolin Monk Motherfunk

          Shaolin Monk Motherfunk

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          Fallen Monk Deadhack

           死人月計算は覚えれば簡単だ。呪われたアプリの霊障で月に何人死んだかを表している。わかると思うが多いほどヤバい。 「そんなにヤバいですか」と国木田社長。 「ヤバいですね。平均六死人月も異常だがコイツはソースコードからして危険だ」俺はディスプレイを指し示した。そこに「死」の文字に囲まれた『警告:この先レビューするべからず』のコメントがあった。 「いいですか。今からこのコードを実行しますよ」俺は社長に念押しした。相手は怪訝な面持ちだ。自社サービスのユーザーの相次ぐ怪死に恐れ

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