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UX設計素人が学んでみて感じた、UX設計技法のよさみとその導入のつらみ

■結論
よさみ
 ・方法不確実性、通信不確実性を減らすことができる
 ・非ビジョナリーにはありがたいツール
つらみ
 ・学習コストが高い
 ・チームのコミットが必要、場合によっては説得コストがかかる

背景

UXを1から設計していく本格的な経験がないチーム(エンジニアである自分とUIデザイナーの2人)で新しいプロダクトを作ろうとした際、

「うーん、作り方がよくわからん」

ってなってしまいました。
もちろん二人とも実務経験はありますし、UI作ったりコード書いたりなどの手を動かすこと自体はできるのですが、「顧客へ価値を届ける」ための体系的な方法論を持っておらず、道筋が見えなくなっていました。

「このままやと上手く作れへんな」ということで、「UXデザインの教科書」をベースにUX設計技法をインプットして、そのプロセスと方法論を整理し、
実践していくことを決めました。

そんなインプットしていく中で感じた、UX設計技法のよさみとその導入のつらみをメモとして残しておきます。
UX設計をちゃんと実施しているチームは実際のところどういう印象なのか、知りたい。

※UX設計技法の実践自体はこれからです。なのでおいおい、実践自体のよさみとつらみを感じていくのだと思います。

# よさみ

主に、「エンジニアリング組織論への招待」で述べられている「不確実性」の削減に効くなという印象です。

よさみ1. 体系化されたプロセスにより、方法不確実性を減らせる

UXデザインの教科書」では、UX設計プロセスを7段階に整理し、各プロセスの目的や手法が記載されています。

このうち、すでに実施していた段階を除いた、サービスリリースまでに必要な5段階について、各プロセスの「目的/入力/出力/処理/留意点」をA4用紙1枚に、さらに「処理」の「目的/方法/重要点」をA4用紙1枚にまとめ、全体のフローを視覚化しました。
(まとめはプレゼンテーションスライド等で電子的にまとめてもいいと思います)

これによって、UX設計技法の体系を視覚的に概観でき、「これから何をやっていけばいいか」のイメージがついたのと、各プロセスで具体的にどういう処理(手法)を実践するとよいのかを把握することが出来ました。見えていなかった道筋がわりとハッキリしてきたので、安心感が生まれました

よさみ2. ユーザモデルによって議論における前提を共有しやすくし、通信不確実性を減らす

UX設計技法自体が仕事をしてくれるわけではなく、仕事をするのは結局のところ人間であり、チームメンバーです。チームメンバー間での健全な議論のために重要な役割を果たすのが、ユーザモデルなのだろうと理解しました。

ユーザモデルは、KA法による価値マップ、ペルソナ法、ジャーニーマップ等によって作成する、「想定するユーザをよく表した」成果物です。
ユーザモデルがあることで、どんな議論も「このユーザのために自分たちは議論しているんだ」という前提を振り返ることができます。

インプットを始める前にもペルソナやジャーニーマップについてはその存在を知ってはいましたが、聞きかじった知識の寄せ集め程度でしかなく、正直「勝手な解釈で作ったものが役に立つのか?」「それを作ったところで活かし方がよくわからんな?」といった印象しかありませんでした。

しかし、作成手法や全体のプロセスの中での位置づけを把握することで、その存在意義をようやく真に理解することができました。「想定するユーザをよく表した」モデルであれば、議論の際の「なんか噛み合わん...あいつの考えてることがよくわからん...」といった通信不確実性を削減することができるわけです。

よさみ3. 非ビジョナリーにはありがたい

「ユーザのモデル化を通じてユーザのことをより良く知り、よいコンセプトやソリューションを素早く打ち出し、打ち出したものを早く検証してくための方法論」がUX設計技法だと理解しました。なのでいわゆるビジョナリーと呼ばれるような、「独自の方法論や感性でユーザに共感し、よいコンセプトとソリューションを独自に考えつき、独自に素早く検証できる」人であれば、この技法体系は不要なわけです。ビジョナリーすごい...。

でもそんなこと出来る人は限られてるので、我ら非ビジョナリーには頼りになる方法論だなと思います。

# 導入のつらみ
つらみ1. 学習コスト

UXデザインの教科書」はアカデミックな記述でUX設計を体系的に整理しているので、読むのはそれなりに体力を使います。分量もありますし、時間もかかります。

また、書名に「教科書」とある通り、読後にリファレンス的に参照するのはちょっとやりづらいと思いますし、今後新たなメンバーがジョインした場合の共有などを考えると、なんらか簡潔にまとめた内容を別途作成したほうがいいように思いました(自分たちはそれを前述のA4用紙で実施しました)。

「それって「UXデザインの教科書」の学習コストじゃね?」って話しかもしれませんが、体系的に学ぶには結局どういう資料をベースにしてもそれなりに学習コストは高いんじゃないかと思います(もっと簡単に体系が学べるものがあれば知りたいです!)。

つらみ2. チームのコミットが必要で、場合によっては説得コストがかかる(かかりそう)

特にユーザモデルの作成の意図が、理想的なUXを「チームで」構築していけるようにすることにあると感じました。一人でやるなら、ある意味自分一人の脳内だけにモデルがあっても良いわけですから。

となると、チームづくりの重要性を感じていないような文化だったり、ビジョナリーによる「オレが考える最強のプロダクト」をメンバーが作ればいいというようなスタンスだったり、「誰かが決めてくれたらそれに合わせて仕事するんで」といったメンバーの多いグループだと、UX設計技法を浸透させてチームでUX設計に取り組むまでが大変そうだなと感じました。

高い学習コストを払ってUX設計技法を取り入れるようチームのコミットを得るには、それなりに説得材料が必要でしょう。
各メンバーに、なぜUX設計技法が必要なのか、そうするとどういう効果があるのか、なぜ今の方法より優れているのか、説明する必要が出てきます。
それには、[話せるというソフトスキルについて情報発信している理由]でも述べられているように、ちゃんと言語化できることがスキルとして求められます。くわえて、説得者の実績だったり、説得者に対するメンバーからの信頼だったり、あるいはUX設計による効果を視覚化する仕組みなどが必要になったりするかもしれません。

まぁでも結局、チームの最終意思決定者が「UX設計技法を取り入れるぞ!」とコミットしていないと、なかなか大変そうだなと感じました。

まとめ

UX設計技法体系を学んで取り入れるのは、大変ですが実りも多かったと感じます。これから実践に入りますが、その実践を通して感じるよさみとつらみもまとめていけたらと思います。

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