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陸幕と防衛装備庁に装甲車両の開発・調達能力はない。AMVはクズになる。


実は今、次期装輪装甲車として採用されたAMVのライセンス生産が大変問題になっています。この唯一最大の原因は陸幕と防衛装備庁に装甲車両の開発・調達能力が欠如していることにあります。
そもそも将来に向けた装甲車メーカーのポートフォリオの構想もなく、装甲車両開発の危機的な知識が欠如しています。

象徴的だったのは採用にあたって、国内生産メーカーが決まっていないことでした。本来装備庁は入札参加の条件として、国内製造メーカーの参加を条件とする、あるいは輸入として整備工場の手配をすべきでした。
国内製造メーカーが決まっていないのにコストや整備性が問題ないというのは納税者をバカにしています。当事者能力が完全にない。それを問題ないとした陸幕や内局も同罪です。

しかも国内メーカーが決まっていない状態で陸幕は次年度の概算要求でまたも要求を出しています。無責任です。


さて概算要求発表後にパトリア社が、日本製鋼所を国内製造メーカーに選定したと発表しました。ですがこれで一件落着とはなりませんでした。財務省が国内製造のコスト高騰を危惧しているからです。
日本製鋼所には装甲車両を製造した経験も施設もありません。確かにポーランドでライセンス生産を行っているブーマー社も装甲車両の経験はありませんでした。技術指導するノ経験やノウハウをパトリア社は持っているでしょう。
ですが、多額の初期投資が必要となります。再来年度だけでも約160億円の初度費が要求される見通しです。
そして生産に関してはコマツの装甲車両製造の関係者を引き入れて、コマツのベンダーも引き入れるそうです。確かに経験はあるでしょうが、コマツの軽装甲機動車など能力が低い上に、値段は他国の3~5倍でした。

せっかくコマツが撤退して装甲車両メーカーが三菱重工と日立になったのに、コマツのゾンビを引き込んだ日本製鋼所が参入すればもとの3弱メーカー体制に戻ります。前の3弱体制を維持するために、各社は生産能力を落として、一車種を30年の掛けて調達するという不合理な体制を維持してきました。三菱重工にしても15年ほど前は120人ほどの熟練テクニシャンがいたのに現在では40名ほどであり、新人の補充をしていません。

それでも重工や日本製鋼所が果敢に海外市場に打って出るならまだしも、そんな話はないでしょう。聞くところによれば日本製鋼所の偉い人たちは新たな陸自からの天下りにそそのかされて、「我が社はAMVを凌駕する装甲車を自社開発できる!10式戦車を凌駕する戦車も開発できる!」と意気軒昂とのことですが、それが本当ならば夜郎自大というより、なにか悪いクスリでもキメているんじゃないかと心配になるレベルです。

ですが国内の装甲車市場はそう多くありません。既に共通戦術装輪車は重工が生産しておりますが、AMV以外だとめぼしいのは軽装甲機動車の更新の小型装甲車ぐらいです。小型装甲車の候補は重工の推すタレスのホーカイと、日立の推すもワーグのイーグルですが、後者になった場合に日立が生産を担当すれば本格的な弱小「三国志」時代が幕開けとなります。
日本製鋼所は装甲車生産設備の投資を全部官の側が負担してくれると楽観しているのでしょう。それで防衛部門の売上が増えると。

あとは対空車両や、89式戦闘装甲車など機甲部隊用の車両ですが、これらは装軌ではなく共通戦術装輪車やAMVの派生型となる可能性もあります。あとは重工が開発している水陸両用装甲車ですが、これは採用はされないでしょう。時代遅れだし、コストがかかりすぎます。

そうであれば3社体制が維持されれば、少数生産を細々とおこなう今まで通りの体制に戻ります。各社はベンダーも含めてかつかつ状態でしょう。防衛省は利益率をあげるといっていますが、事業の再編成なしでそれをすれば、企業は甘えるだけでしょう。例えばAMVの生産でコマツのベンダーを排除して重工のベンダーが仕事を取れば、ざっくり仕事は2倍に増えるでしょう。そうなればベンダーの生産せも利益率も増えるはずです。それをやらずに利益率だけを上げれば、将来の売上拡大の目処も、インセンティブもないので、弱体化が進むだけです。

陸幕はAMVの国産化率は98%可能ですと主張していますが、クスリやっているんでしょうか?エンジンやトラッスミッション、タイアも輸入品でしょう。98%なんて嘘もいいところです。本気で信じているならば辞表出した方が良いレベルです。
こういう人たちが開発や調達を指導しているのですからデタラメになるはずです。

AMVに対して現実的なのは輸入にすることです。ウインカーつけたり、無線機のラックつけたりを日本製鋼所がやればいい。整備は重工に任せるべきです。
どうしても国産化したいのであれば、日本製鋼所をプライムにして、製造は三菱重工に委託すべきです。そうすりゃメンツは立つでしょう。無論コマツのベンダーは排除して重工のベンダーを使う。そうすれば彼らの仕事は増えます。
そして技術学ぶことで、重工の技術力もアップします。アレな軍オタ三たちは認めないでしょうが、所詮重工の装甲車開発力は3流です。AMVを生産すればそれが理解できようになるし、その経験を次の開発の活かすこともできるでしょう。

実はもっと根源的なことがあります。
実は陸自の装甲車両のネットワーク化は失格レベルです。
AMVにはなんとナビゲーション、バトルマネジメントシステムなどはなく、センサー類も統合するシステム統合はありません。通信は音声無線のみ。まるで昭和の装甲車です。
例外は指揮通信型だけです。これには10式、16式、共通戦術車などに搭載されている10TKNWが搭載されます。10TKNWは基本中隊規模でしか連携できず、外部と連携できるのは中隊長車だけです。完全に時代遅れです。


基本が三菱重工が10式戦車用に開発したものですから、四半世紀も前の代物であり、インターフェースも時代遅れで大変使い勝手が悪い。このため共通戦術車の自走迫撃砲に搭載されるタレスの120ミリ迫撃砲や偵察型に搭載されるエルビットの偵察システムとの統合もトラブル続きで、このため共通戦術装甲車の開発も大幅に遅れました。

AMVの指揮通信型は共通戦術装輪車とともに、機動連隊で使用されますが、普通の軍隊ならば共通戦術装輪車ベースに開発します。

今どき装甲車にネットワークを搭載氏ないなんてアフリカの最貧国ですか?

参考までにフランスのスコーピオン計画を挙げておきます。

防衛省の「次期装輪装甲車」決定に見た調達の欠陥
https://toyokeizai.net/articles/-/640971?display=b
仏陸軍スコーピオン計画と陸自装甲車調達(上)
https://japan-indepth.jp/?p=43786

>ネットワークシステムはSCIS(Scorpion Combat Information System)が採用されている。SCISは現在仏陸軍が使用している5種類のシステムの後継となるシステムである。将来SCISはタレスが開発中APS(積極防御システム)、ディアマンも統合される予定である。当初248輌が調達される予定だったが、上方修正されて300輌(+オプション48輌)が調達される予定であり、2025年までに、そのうち半数の150車輌が導入される予定である。

当然ですが同じ戦場でネットワーク化されている部隊と、違う部隊があれば連携なんて取れません。陸幕はネットワーク戦を全く理解していない。

しかも車載される広域多目的無線機は通信速度が他国の数分の一であり、音声以外はメールと静止画像しか送れません。周波数帯も軍用に適していないので通じが悪い。でも防衛省は総務省と交渉して周波数帯を変えるつもりはありません。

10TKNWを有している部隊もネットワーク化された敵部隊と交戦すれば一方的に虐殺されるのではないでしょうか。せっかくAMVという世界水準の装甲車を採用しておいてネットワークしないのは愚かですし、軍事の常識を知りません。

そして兵員輸送型のAMVでRWSを搭載するモデルはごく一部で中速連隊ぐらいにしか配備されないようです。あとは12.7ミリ機銃と40ミリグレネードランチャーが搭載されるようです。
ドローン脅威が叫ばれるなか、なんとも呑気です。普通RWSは標準装備で、更にドローンジャマーなども装備されるのが普通ではないでしょうか。無論普通科で偵察用ドローンや無人車両も運用するでしょう。そのような発想がまったくない。まるで昭和の幕僚監部が開発や調達を担当しているみたいです。

更にもうせば小型装甲車も問題です。4人乗りの小型装甲車、しかも車両固有の乗員も火器なく、下車するときは全員車を放棄するというコントみたいな運用をしているのは陸自ぐらいです。

この間抜けな運用を見直すこともしていないようです。

本来であれば96式と軽装甲機動車後継は一体化すべきだったでしょう。それで安価な4輪あるいは、6輪の装甲車を選定してその代わり、全てにネットワークを搭載する。合わせて使用周波数帯も見直す。

このまま装備庁と陸幕が装甲車両を漫然と調達するならば戦闘能力も投資の費用対効果が低い「クズ装甲車」を調達し続けるでしょう。
これで防衛費を倍増、GDP比2%にして国防力が強化できますか?

戦争する気がなく、国営サバイバルチームを目指すならば、マルイのエアソフトガンで武装したらどうでしょうか。
殺傷事件もおこらず、薬莢拾いもなくて快適ですよ。


■本日の市ヶ谷の噂■
陸幕は2025年度予算で10式戦車近代化パッケージの予算を要求する、との噂。

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