暴力装置発言を再検証する。 前編

2016年07月13日

暴力装置発言を再検証する。 前編

政治 軍事

平成22年、民主党政権当時の仙石官房長官が自衛隊を「暴力装置」と発言したために、当時の野党だった自民党がこれを攻撃、仙石氏および民主党は脊髄反射的にこれを陳謝するも、自民党は執拗に攻撃を続けました。

自民党の世耕弘成、丸川珠代、佐藤正久各氏の追求は謝罪後も続きました。

率直に申し上げて馬鹿らしいの一言です。

簡単にまとめると自民党の主張は仙石氏はアカである。
「暴力装置」は左翼用語であり、差別用語である。謝罪しろ、辞任しろです。


ですが、そうでしょうか。
まずは平成22年11月18日の予算員会のやり取りを読んでください。
引用先の原本は長く、関係ないところも多いので、該当箇所のみを抜き出しました。
これを読んだことがない人がほとんどではないでしょうか。



 第176回国会 予算委員会 第6号
平成二十二年十一月十八日(木曜日)
   午前八時五十分開会
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/176/0014/17611180014006a.html

○世耕弘成君 これ、法の精神としては、国家公務員も地方公務員も自衛隊員も学校の先生も全く同じ精神ですよ。これ、国家公務員でこういう形で自衛隊と同じ精神で規制をされているということは、じゃ、霞が関の庁舎内においてもこういう入間であいさつされたような人は呼ばないということでよろしいんですか。
○国務大臣(仙谷由人君) 今、法の精神と言われました。公務員という世界では、同じように政治的な中立性が求められると思います。そしてさらに、この暴力装置でもある自衛隊……(発言する者あり)まあある種の、ある種の軍事組織でありますから……(発言する者あり)
○委員長(前田武志君) お静かに願います。お静かに願います。
○国務大臣(仙谷由人君) 軍事組織でもありますから、これはシビリアンコントロールが利かなければならないと。それから、まあ戦前の、戦前の経験からしまして、決して……(発言する者あり)じゃ、実力組織というふうに訂正させてもらいます。実力組織でありますから……(発言する者あり)
○委員長(前田武志君) 質疑者以外の方は質疑の妨げになります。御静粛に。
○国務大臣(仙谷由人君) 実力組織でありますから、これは特段の政治的な中立性が確保されなければならないということだと思います。これは、これは……(発言する者あり)新解釈じゃありません。やっぱりこれは戦前の経験を、いわゆる軍国主義という経験をして、その中で、中からも外からも非常にある種の政治性の強い働きかけやあるいはその行為に、それに呼応する動きが出てきてあのようなことになったわけでありますから、特に実力組織としてはより念を入れた特段の政治的な中立性が保障されるべきだと。そのために、一般の国家公務員ではここまでだということであっても、関与を疑われるような行為もやってはならないと、あるいはそれに巻き込まれるようなことにならないように注意してくださいよと、こういう通達だと思います。
○世耕弘成君 きちっと議事録に残す必要があるので、自衛隊のことを暴力装置とおっしゃいました。これ、現場の隊員のためにもきちっと撤回と謝罪をしてください。
○国務大臣(仙谷由人君) そのとおり撤回をして実力組織と言い換えます。
○世耕弘成君 謝罪、謝罪、謝罪も求めたんです。(発言する者あり)
○委員長(前田武志君) 世耕委員、もう一度、もう一度御質疑ください。
○世耕弘成君 撤回だけじゃなくて謝罪もしてください。
○国務大臣(仙谷由人君) 法律上の用語としては不適当でございましたので、自衛隊の皆さん方には謝罪をいたします。
○世耕弘成君 このように、表現の自由に関してももう解釈はめちゃくちゃだということがはっきりしました。自衛隊を暴力装置として見ている、こういうことも分かりました。
 この皆さんが、今、表現の自由だけではなくてもっと大きな権力の濫用をしているんじゃないかという疑いがあります。
 これは、北海道五区、この間補欠選挙が行われた選挙の候補者、中前茂之さんという方であります。(資料提示)この方は、選挙に出るときに、国土交通省北海道開発局札幌開発建設部千歳道路事務所長に直前に就任なさっています。そして、まさにその千歳道路事務所のある選挙区で補欠選挙に立候補をされているんです。これ、情実人事じゃありませんか。国土交通大臣、お答えください。


○丸川珠代君 自由民主党の丸川珠代でございます。
 まず、ここまでの本日の予算委員会の議論の中で、仙谷官房長官から我が国の自衛隊に対して、暴力装置というとんでもない表現が出てきました。国の根幹である国防に命を懸けて取り組み、また日本の国際貢献に汗をかいているこの自衛隊の方々にとって大変失礼極まりない、とんでもない発言であると思います。
 菅総理大臣は、内閣の、代表して自衛隊の最高指揮権を有する最高責任者として、この発言をどう思われますか。
○内閣総理大臣(菅直人君) 先ほど仙谷官房長官がその表現に対して撤回をし、謝罪をされ、実力組織という言い方に変更されたわけでありまして、そういう意味では最初の表現はやや問題があったと、このように思っておりまして、御本人からそうした訂正があったことは、そのこととしてよかったのではないかと思っております。(発言する者あり)
○丸川珠代君 ややではないと思いますが、総理大臣の御認識を改めて伺いますけれども、暴力装置という言葉、これは謝って済む問題だと思っておられますか。
○内閣総理大臣(菅直人君) 言葉というのはいろいろな感じ方があると思います。その上で、私も、実力部隊といいましょうか、そういう実力組織といったことの方が、そうした、何かこう暴力という言葉には非常に、率直に申し上げて悪いイメージがあります。しかし、自衛隊がもちろん武力というものを持っていることは当然のことであります。ですから、そういうことを含めて言えば、その暴力装置という表現は好ましくないと。そういう意味で、実力組織ということに御本人が謝罪し訂正して変えられたわけでありますから、それはそれで良かったのではないかと思っております。
○丸川珠代君 申し訳ないが、この暴力装置という言葉は我々の平和憲法を否定するものですよ。シビリアンコントロールを否定する言葉ですよ。謝って済むと思っているんですか。(発言する者あり)
○委員長(前田武志君) もう一度御質疑願います。どなたに御質疑をされていますか。
○丸川珠代君 総理大臣です。
○内閣総理大臣(菅直人君) 御本人が謝られたわけですけれども、私は、その言葉を使われた本人が謝られたのが最も、本人の言葉として謝られたんですから、そのことが一番本質的な謝罪になっているんじゃないでしょうか。
○丸川珠代君 自衛隊の最高指揮官として、今のような暴力装置というような発言に、あれだけの、ただ形だけ謝っただけで本当に隊員の士気が維持できると思いますか。命を懸けて国を守っている人たちにこれで納得がしてもらえると思っているんですか、あなた、最高指揮官として。
○内閣総理大臣(菅直人君) 私も、先日の自衛隊の観閲式に出かけて、大変多くの隊員が訓練に励んでおられる姿を拝見をいたしました。また、少し古い話になりますが、カンボジアにおけるPKO活動に出ておられた自衛隊の部隊に訪問をしたこともかなり以前ですけれどもあり、現地の皆さんにも大変感謝をされていた、そういう姿も見ております。そういう意味で、私は、更に言えば、国内でも宮崎の口蹄疫などでも大変御苦労いただいたと、このように思っております。
 そういう意味で、自衛隊の皆さんが非常に、まさに骨身を惜しまず訓練に励み、日本の安全保障のため、あるいは国民の安全のために頑張っておられる。私も最高責任者としてそのことを誇りに思うと同時に、そうした皆さんの御苦労に感謝を申し上げております。
 そういった意味で、先ほどの仙谷官房長官の暴力装置という言葉については決して、そのままでの言葉ではまずいということで、私がもちろん……(発言する者あり)ちょっといいですか。御本人が話をここでされた中で、質問者の方からその訂正を求められ謝罪を求められて、訂正をし謝罪をされたわけでありますから、改めて注意をするということであれば、改めてこの後にでも御本人を招いて注意をいたします。
○丸川珠代君 ということは、後で仙谷さんに総理大臣が注意をなさるということでございますね。
 その注意とは別に、内閣総理大臣として、自衛隊の最高指揮官として、こういう発言が御自身の閣内から出たことに対して謝罪をすべきではありませんか、国民に対して、そして自衛隊の皆さんに対して。
○内閣総理大臣(菅直人君) 内閣の一員である官房長官からそうした発言が出たことは、ある意味で私の広い意味での内閣全体の責任者として、そうした発言が自衛隊の皆さんに対して、そうした皆さんのある意味でのプライドなどを傷つけることとなったことについては私からもおわびを申し上げたいと思います。
○丸川珠代君 防衛大臣はこうした発言が閣内から出たことについてどういうお考えですか。
○国務大臣(北澤俊美君) 誠に残念なことでありました。
○丸川珠代君 私は、こういうシビリアンコントロールであるとか平和憲法というものを否定する発言が閣内から出た、その発言者は問責に値することは当然でありますけれども、総理大臣御自身で罷免をすべきだと思いますが、総理大臣、いかがですか。
○内閣総理大臣(菅直人君) ちょっと私は、その今の丸川さんの論理でシビリアンコントロールということと、言葉遣いがまずかったということは私そう思いますが、シビリアンコントロールということとの関係で問題だというのは、ちょっとどういう意味なのか、私には必ずしも理解ができません。
○丸川珠代君 先ほどから与党の民主党の理事の方がいろいろと声を上げておられるんですが、暴力装置ということについて私が触れましたときに、本質を言っているじゃないかという川上理事から御発言がありましたけれども、こういう暴力装置は本質的な指摘だというような民主党の理事の御発言は民主党全体のお考えなんでしょうか。
○委員長(前田武志君) 丸川珠代君、丸川珠代君、どなたに御質疑をされていますか。明確に。
○丸川珠代君 菅総理大臣に。菅総理大臣にお願いします。
○委員長(前田武志君) もう一度立って言ってください。どなたに御質疑されていますか。
○丸川珠代君 菅総理大臣にお願いします。
○内閣総理大臣(菅直人君) いろんな言葉をいろんな方が使われることがあるわけで、自衛隊というのは武力をもって我が国を防衛するということを大きな主要な任務にしております。ですから、その武力を持った組織であるということは、これは客観的な事実だと思います。それを実力部隊とかそういう表現で言うこともあります。ですから、先ほど、暴力という言葉が何か悪いことをする、そういう言葉として一般的には使われるということで、先ほど申し上げたように、改めて注意をしたいということを申し上げました。
 ですから、何かその言葉そのもので、その言葉そのものでシビリアンコントロールが侵されたとか云々というその論理は、私には理解できません。
○丸川珠代君 武力と暴力は同じものですか。
 総理大臣にお願いします。総理大臣にお願いします。
○内閣総理大臣(菅直人君) 言葉ですから、もちろん武力という……(発言する者あり)
○委員長(前田武志君) 場内での不規則発言は、お静まりください。
○内閣総理大臣(菅直人君) 言葉ですからそれぞれに意味がありますので、そういう意味ではもちろん違うと思います。
○丸川珠代君 暴力は暴れる力と書きます。コントロールが利かない力のことを暴力と言いますが、もし自衛隊に暴力装置という言葉を使うのであれば、自衛隊はコントロールが利かない力だということになります。
 シビリアンコントロールが利いていないということを指してもし暴力装置ということにつながるのであれば、つまりシビリアンコントロールをしているあなたたちがコントロールができていないということになるわけですよ。それでも暴力装置という言葉は大して問題がない言葉だと、謝って済む言葉だと、そうお考えになりますか。
○委員長(前田武志君) 丸川委員、謝罪もされておりますので、議論を続けてください。
○丸川珠代君 菅総理大臣。(発言する者あり)
○委員長(前田武志君) 質問の中で続けてくださったらいいんですよ。
 どなたに、どなたに御質疑をされていますか。
○丸川珠代君 菅総理大臣。
○内閣総理大臣(菅直人君) 何度も申し上げていますように、だから暴力という言葉について本人も謝罪して撤回されたわけでありますし、私もそういう言葉を自衛隊に関して使うべきではないということで、後ほどきちんと注意をしたいと、こう思っております。
 ただ、先ほど申し上げましたように、暴力という言葉を撤回をされた中で、官房長官が撤回された中で、まだシビリアンコントロールが利いているとか利いていないということに話がつながっていく、その論理が私には理解できません。
○丸川珠代君 理解できないことが理解できないですね、私は、申し訳ないけれども。
 申し訳ないけれども、私は、こういう暴力装置という言葉が言の葉に上ること自体、本当に謝罪では済まない問題だと思いますので、今後仙谷大臣の問責を求めていきたいと思います。

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