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日経に防衛産業を論じる能力やありか?


日経が防衛産業に関する連載をはじめました。ですが、防衛産業に対する根本的な理解が欠如しているように思えます。


防衛産業を考える(1) 安保・成長・平和の三兎追う
軍民両用で技術革新
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO78227100V00C24A2MM8000/

>政府が27年度までに積む5カ年の防衛予算は従来比1.6倍の43兆円。これまで装備調達費の輸入品割合は2割前後で上昇傾向だったのを中長期的に国産重視へ切り替える。
>8%程度だった発注時の想定利益率は企業の採算を考えて最高15%に上げた。海外大手に比べて利益率が低く、赤字による事業撤退が相次ぐ日本の状況に歯止めをかけるためだ。

毎度日経はこれらのことをさらっと書いてますが、その意味を理解しているのでしょうか?

防衛費は、まず5年で43兆円、その後はGDP2%を目指すことになっていますが、それが実現可能なのか。ぼくは精々持続できるのは来年度の8兆円程度、或いは7兆円前半だと思っています。
それは巨額な財政赤字があるからです。税は財源ではないといとか、国債刷りゃいくらでも軍拡ができるのだという胡乱な考えは通用しません。

円の価値を下げないためにも利上げは必要です。それをやらずに野放図に財政赤字を拡大しつづければ円の価値は下がり続けます。例えば1ドル300円ぐらいまで下がった場合、食料、エネルギー、生活物資の多くを輸入に頼っている我が国の国民生活はどうなるでしょうか。コストプッシュインフレが起こり、給料の賃上げは追いつかないでしょう。
そして国内は少子高齢化で市場も縮んでいきます。であれば利上げは必然です。

そうなれば国家予算における国債費は大きくなります。その政策に使える予算は減ります。
一番必要なのは社会保障費の削減です。ですがこれが難しい。効果があるどころか、逆効果な湿布の保険適応すら未だにやめられないわけです。
ですが、それをやらないと現役世代の負担は増えるばかりで、可処分所得も増えません。最近減税より、社会保障費負担を求める声も大きくなっています。厚生年金は個人と会社が折半ですが、実質的に会社員が払っている2倍取られているわけです。それに気がついた人たちが増えているということです。
更に申せば年間5千億円が合法的に脱税されている「ふるさと納税」こと「ふるさと脱税」を止める気配もありません。

このような環境下で果たして巨額の軍拡が可能なのかといえば、ぼくは大変難しいと思います。
本来そのような軍拡が可能かどうかの検証を先にすべきでしょう。

そして輸入品を国産に切り替えるとありますが、それは大変難しい。政府、防衛省、自衛隊、経産省にも防衛産業の実態と世界の軍事産業とその市場に対する認識が欠如しており、まともな振興策がありません。

本来弱小メーカー乱立で利益率が悪いのに、装備は国際価格の何倍も高く、維持費はもっと高い。そして能力品質は低い。
まずやるべきことは業界の事業再編です。例えばソナー関連はパッシブとアクティブでOKIとNECが棲み分けしている。当然それぞれ開発費を使っていますから効率が悪い。
両社とも音響工学の博士号を持った社員もいない。これでまともな製品が開発できますか。
国産ソナーはもっと古い米国製のイージス艦が装備するソナーに太刀打ちできません。
ヘリ産業も防衛省にほぼ依存する「子供部屋おじさんヘリ産業」で税金にタカっているだけで将来内外の市場にでるつもりもない。

そこで利益率だけ増やしてやるのですが、甘え体質はもっと悪くなるでしょう。努力しなくても利益が増えるなら誰が努力しますか。毎度申し上げているように、外国メーカーは市場で勝負しており、自分のカネで開発して売り込みます。当然失敗もある。利益率が高いのは当たり前です。ですが防衛省が言っている利益率の問題を経済紙が検証もなく、ガキの使いみたい垂れ流すのは大変問題です。自分たちにビジネスの知見がないと告白するに等しい行為です。率直に申し上げればバカが権威使って与太記事書くな、ということです。

血と涙を流さないといけない業界再編やると嫌だからとバラマキをすれば、業界のさらなる弱体化を進めるだけです。


■本日の市ヶ谷の噂■
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