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自衛隊のパワードスーツは戦闘用よりも、兵站用


空自百里基地で物資の運搬や整備の負担軽減でパワードスーツを導入します。
以前申し上げていたように、防衛省で戦闘用のパワードスーツを開発しいますが、もろくなものができず、また装備化の予算がないので調達も不可能です。
つまり開発事業ははじめから無理ゲーです。こんなことに予算と人間を割くよりも、民間が開発したパワードスーツを兵站向けに採用しろ、と主張してきましたが、その通りになりました。


当社初、航空自衛隊へマッスルスーツ14台を導入。
百里基地での物資の運搬、機体翼面の整備における身体的負担感を軽減

>東京理科大学発ベンチャーの株式会社イノフィスは、マッスルスーツSoft-Powerを10着、圧縮空気を使用した人工筋肉が補助力を発揮する、マッスルスーツEveryを2台、腕上げ作業をガススプリングでしっかりアシストする、マッスルスーツGS-ARMを2台の、計14台を納品いたしました。

>■導入の背景
 昨年9月6日に防衛、経済産業両省による、安全保障分野への先端技術の活用を探るためのスタートアップとの意見交換会が行われました。その交換会をきっかけとして、航空自衛隊百里基地へ導入頂く運びとなりました。航空自衛隊百里基地は、 首都圏に所在する唯一の戦闘航空団 (戦闘機を運用する編制部隊) を擁する基地であり、 約1500名の隊員が、日夜、練成訓練に励んでいます。航空自衛隊百里基地では、自衛隊の機動的な展開や重い物資の早い輸送などの活用を見込んでいます。

防衛省「パワードスーツ」構想は濫費である
新たに開発する必要がない理由<上>
https://toyokeizai.net/articles/-/68330

>先述のようにすでにパワードスーツはサイバーダイン社が医療用などして商用化している。またパナソニックの子会社のベンチャー企業、アクティブリンク社は2015年から軽作業向けのパワードスーツ「パワーローダー(TM)ライトPLL-04忍者」を物流や検査用の作業支援として発売する。

>人力と併せて30キログラムの荷物をハンドリングでき(スーツのアシスト力は15キログラム)、時速4~12キロメートルで移動が可能で、バッテリーの稼働時間は2時間程度だ。価格は約50万円を想定しているという。

>独自の開発よりもこのような民生品を活用し、改良を加える方がコストも安く上がり開発もより容易なのではないかとの疑問が持ち上がる。この疑問に対して防衛省経理装備局の南亜樹専任部員は、防衛省で開発するものは隊員の背部に重量物を搭載し、不整地を相応の速度で踏破することを目指しており、求められる能力が異なると説明する。民生用は主に平地、しかも室内で使用が想定されているが、軍用の歩兵部隊を想定したものは凸凹のある不整地の踏破能力や、過酷な環境での使用に際しての堅牢性や耐水性、作動温度の範囲などもよりシビアなものが求められるというわけだ。

「パワードスーツ」の前に防衛省がすべきこと
新たに開発する必要がない理由<下>
https://toyokeizai.net/articles/-/68341

>現状、陸自の普通科は幸か不幸か、それほど個人装備が近代化されておらず、このため欧米の軍隊のように携行重量が嵩んでいない。重量軽減であれば装備の軽量化の方が先だろう。たとえば無反動砲も新規採用されたM3でなく、M4にするとか、MINIMIなどの火器の一部のパーツをチタン製などにするとか、ボディアーマーの軽量化の方が急ぐべき研究だろう。

>また、パワードスーツを導入するならば既存の民生品を自衛隊の兵站(へいたん)などの分野で導入すべきだ。

>技本のパワードスーツは駆動時間が目標とされているバッテリーの稼働時間が2時間程度と、短いのも問題だ。バッテリーの駆動時間が短ければ、実際の運用は装甲車輛などをベースに活動しなければならない。ところが本来パワードスーツが必要なのは徒歩移動が多い空挺部隊や水陸両方部隊、山岳地帯など重い装甲車輛の運用が難しいシーンが多いので、パワードスーツの運用には向いていない。

>技本で戦闘用のパワードスーツを開発しても、運用的にもコストの面でもあまり現実的とは言えない。むしろ自衛隊は既存の民間用に開発されたものを兵站用などとして採用すべきだ。

>軍用パワードスーツは、歩兵部隊に随伴して重量貨物を運搬する目的が想定されているが、極めて高い耐久性、堅牢性、さらに耐水性や幅広い温度領域での長時間に渡る稼働が期待されるので技術的なハードルが高い。

>そして単価も極めて高い。技本が開発するパワードスーツも先述のように製品化の際の調達単価は1000万円を目標としている。しかも現状では駆動用のバッテリーの駆動時間が数時間から半日程度であり、電源の確保の面からも制約が多い。このため近くに予備のバッテリーを搭載し、充電機能を持ったベースとなる運用支援用の車輌などがなければ、難しいなど問題点もある。

>対して民間の作業用のパワードスーツはコストが安い。パナソニックの子会社のベンチャー企業、アクティブリンク社は本年から軽作業向けのパワードスーツ「パワーローダー(TM)ライトPLL-04忍者」を物流や検査用の作業支援として発売する。人力と併せて30キログラムの荷物をハンドリングでき(スーツ自体のアシスト力は15キログラム)、時速4~12キロメートルで移動が可能で、バッテリーの稼働時間は2時間程度だ。価格は約50万円を想定しているという。

>たとえば後方の兵站基地、前線あるいは前線近くのデポ、PKOなどでの貨物の積み下ろしなどの作業用などにこれらを導入すれば。歩兵戦闘の過酷な環境下での使用も考慮する必要もなく、また充電も容易な環境で使用されるだろう。

>仮に通常10名の兵士で行う作業がパワードスーツ導入によって5名に減れば、人件費の大幅な削減と兵站の負担の軽減に大きく貢献できる。また同様に牽引式の榴弾砲や120ミリ迫撃砲など装填や弾薬運搬用にも有用だ。通常155ミリ榴弾砲では8~9名のクルーが必要だが、それをパワードスーツ導入によって、たとえば2~3名減らすことができれば砲兵部隊にとって大きなメリットがあるだろう。

>特に前線や前線近くの砲兵や兵站部門の人員を削減できれば、彼らに必要な食料や飲料水やシャワーなどの水、宿営地などが削減できる。前線までのサプライチェーンを維持するためには兵站にも兵站が必要なのだ。だがパワードスーツの導入によって最前線及び中間の兵站負担は大幅に削減できる。またPKOなどの本国を遠く離れた作戦における兵站のコンパクト化が可能となり、派遣費用を大きく削減できるだろう。

>これは兵站を強化する上で、極めて大きなメリットだ。また人件費の削減にもつながり、その経済効果も大きい。人件費が防衛費の約4割を占めるわが国では魅力的だろう。浮いた人件費分予算を減らすか、別な予算に使うことができる。あるいは浮いた人員を別な任務に振り向けることもできる。つまりパワードスーツ導入によって目に見えるメリットを得ることが可能だ。

>同様に基地内での車輌や艦艇などの整備や補修などにも有用だ。
>実際にロッキード・マーチンは先述の戦闘用のHULCではなく、より産業ユースを意識したFORTIS Exoskeleton(フォルティス・エクスケルトン)を米海軍が艦艇のメンテナンス作業用に提案、2014年度に評価用として少数の導入が決定されている。

>自衛隊が兵站用などで民間用の大量に採用されれば、市場が拡大し、生産効率が上がって調達単価がより下がり、民間市場でもより入手しやすい価格になるだろう。たとえば自衛隊の採用で市場が2~3倍になればメーカーの売り上げは大きく伸びるだろうし、生産が増えれば価格はさらに下がり、より普及が進む。そうなれば国内のパワードスーツメーカーにとっては追い風となり、さらなる開発が加速して国際競争力もあがるだろう。

>当然ながら諸外国の軍隊でも採用が始まれば市場はさらに拡大する。このような用途であれば、たとえ軍隊向けに輸出しても民間用のトラックなどと同じ汎用品であり、武器の対象外であるので、武器輸出に対する規制を受けない。実際多くの軍隊ではトヨタや日産のバンなどを多用しているが、これらは民生品そのままが使用されているし、武器として調達されているわけでもない。

>戦闘用のパワードスーツを開発するのは、このような民間あるいは兵站用のパワードスーツの成熟を待ってからでも遅くはないだろうし、効率もいいだろう。自衛隊は単に消費するだけで、何ら金銭的なバリューを生み出す組織ではない。であればその組織を新しい産業のためのスプリングボードに利用することは検討すべきだろう。何より自衛隊の兵站分野は貧弱であり、この部分の強化にもなる。



■本日の市ヶ谷の噂■
防衛医大は文科省を騙している。防衛医科大は文部科学省管轄の大学ではないため、文科省の大学評価・学位授与機構の教官審査が義務漬けられている。だが、防衛医科大は、この教官審査を受けない教官が複数名いる。彼らは専門の学術業績が無いのに教授や准教授になっている。そのからくりは学位授与機構の5年毎の定期審査なので、審査後に教授などの教官に任命し、次の審査前に退職させる。こうすれば教官審査を避けることができる。
定期審査を受けずに、部下の論文を共著とすることで論文は増える。
これは違法ではないが、制度の隙間をついて無能な教官を任命することなる。無論他の医大が同じことをやれば大問題だし、信用を失墜する。その筆頭が木村幹彦防衛医学研究センター「教授」、との噂。

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
航空専門医がいない空自に戦闘機開発はできない
やる気のある医官が次々に辞める自衛隊の内情
https://toyokeizai.net/articles/-/744651


月刊軍事研究4月号に陸自の18式防弾ベストに関する記事を寄稿しました。


軍事研究 2024年 04 月号 [雑誌]

Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。
次期装輪装甲車、AMV採用を検証する その2 AMVのライセンス生産によって日本の装甲車事業は壊滅する
https://japan-indepth.jp/?p=81695

次期装輪装甲車、AMV採用を検証するその1
駿馬を駄馬に落とす陸自のAMV採用
https://japan-indepth.jp/?p=81667

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