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防衛経済の素人の日経が防衛産業を語る喜劇


日経の防衛産業の利益増に関する記事です。実質的に報道ではなく、防衛省の広報です。
軍事産業の知識も問題意識も無い記者か書くとこういう記事になります。

ある意味記者クラブメディアの面目躍如です。

正直に申し上げて無知は記事を書くなと思いました。

防衛装備の利益率上げ 品質や納期短縮で最高15%
防衛省、従来の目安は8% 国産調達を強化
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA158B30V10C23A8000000/

>防衛省は防衛装備を発注する際の企業側の想定営業利益率を最高15%に引き上げた。品質や納期短縮などの取り組みを評価する仕組みにする。従来の目安は8%にとどまっており、防衛産業から撤退する企業が相次いでいた。

これは「諸外国並みに」という枕がつくのですが、それをすっ飛ばしています。諸外国のメーカーは市場で戦っています。韓国にしてもシンガポールにしてもメーカーは開発しても売れない商品もあります。だからその分を見越して利益を取る必要があります。
対して我が国の「防衛産業」は「産業」ではありません。メーカーは棲み分けをして、
防衛省に言う通りに作っているだけでリスクを負っていません。
 商売の原則はローリスク・ローリターン、ハイリスク・ハイリターンです。

 そんなビジネスの当たり前のことを離開できていない記者が「産業」の話を書いているわけです。

>利益率を最高15%とする制度を23年度から製造・開発を発注した弾薬や航空機・艦船、通信機器などに適用した。国内企業が適正利益を確保しやすくする。国産装備の調達網を強化して継戦能力の向上につなげる。
>利益率は2段階で決める制度にした。1つは企業の経営努力を想定利益率に反映する「QCD評価」と呼ぶ制度だ。①品質(Quality)向上②コスト(Cost)削減③納期(Delivery)短縮――の3項目を評価基準とする。

>防衛省が求める品質改良や納期圧縮といった目標への達成度を踏まえて利益率を5〜10%の範囲で設定する。企業に質の高い装備を迅速に提供するインセンティブを与える。

>もう1つは経営努力では吸収しきれない物価高騰といったリスクに対応する「コスト変動調整率」と呼ぶ仕組みだ。原材料の相場状況や契約の履行期間の長さによって想定営業利益率を1〜5ポイント上積みする。
このあたりは防衛省の担当者に聞いた話とリリースのまんまでしょう。防衛産業の知識がなくても、俯瞰的にみれば市場経済で戦っている外国企業と、実質的なノーリスクで国営企業である国内防衛産業の利率のあり方に疑問を持つはずです。

>防衛産業では研究開発から試作、実用試験、生産までの期間が数年から10年以上と長くなりがちだ。納入先がほぼ自衛隊に限られる少量生産のうえ、契約締結後に仕様の変更要望が生じてコストが増えやすい。

>こうした特性の影響で防衛産業では営業利益率が低くなりがちだった。採算が合わず撤退する企業も少なくない。国内企業からは「海外大手の軍事関連企業には営業利益率が20%近いところもある」と事業環境の改善を求める意見が出ていた。

 相手の企業担当者の言う事を吟味もせずに記事にしているわけです。市場競争をしている企業と、ノーリスクの実質的国営企業を同列で論じていいのか。そこに疑問がわかないのは記者以前、社会人として知的に障害が疑われるレベルです。中学生の新聞部の記者でもこんな話をそのまま記事にはしないでしょう。

更に申せば、外国と比べるのであれば、諸外国では共産国の中国ですら業界再編をしています。この事実は無視できないでしょう。
一定規模がなければ、事業を維持することも研究開発費や投資もできないことが当たり前だからです。
先日のDSEIでもソナー技術を展示していたNECの担当者に、御社は沖電気と小さな国内のソナー市場を棲み分けてろくな投資ができていないでしょう。音響工学の博士号を持った社員もいない。実際にハードはともかく、ソフトは弱いだから。基本性の古い米国ソナー搭載のイージス艦が探知できる潜水艦を国産ソナーは探知できない。これで海外になにか売り込めますか?と訪ねたら黙ってしまいました。

我が国場合縄張りが決まっている事が多く、小さく、競争のない国内市場でほそぼそとやっているわけです。これで海外の企業と肩を並べる研究開発や投資ができるのか。他所なりとも知能があればそういうところが気になるはずです。日経では知的に障害があっても記者になれるんでしょうか。

ところがそういう疑問を持たずに防衛省に言う話をお説ご尤もと聞いて帰って記事にする。バカなんですか?

>日本企業は売上高に占める防衛事業の割合も小さい。米ロッキード・マーチンや英BAEシステムズは防衛事業が9割程度なのに対し、国内大手の三菱重工業は1割ほどしかない。

ご自分でもこういうことを書いているのに、その意味を理解していない。それは防衛産業や防衛省の人間にいうことを全部真に受けているからでしょう。ブンヤの基本は情報を疑うことです。その訓練ができていないと言わざるをえない。
まずはやるべきことは業界再編です。事業統合をしないで、金をばらまけば、企業の体質は更に弱体化するでしょう。それは農業を見れば明らかです。

>防衛産業の利益率の低さは技術力がありながら資金が不十分なスタートアップの新規参入を阻んできた面もある。利益率の改善でスタートアップの参加を促し、先端技術を装備に生かしやすい環境を整える。サイバーや宇宙といった新領域では特に期待が大きい。

新規参入を防止してきたのは防衛省と自衛隊ですよ。天下り先の確保と、退職者の御身大事ですから。未だに繊維大手の帝人ですら防衛産業に参入できないわけですから、中小やベンチャーが参入できないのは当たり前の話です。

>装備の仕様を輸出向けに変えたり、機密性の高い技術を秘匿したりするのにかかる経費も助成する。いずれも年内に始める方向だ。

>こうした助成制度は完成品を受注する大手だけでなく部品をつくる中堅・中小も対象とする。経営難などで事業継続が難しい企業には、国が製造施設を買い取った上で別の企業に運営委託する仕組みを用意する。

これも事業統合しないと無駄になります。5社の事業を1社にまとめれば、一社分の投資で済みます。弱小事業に平均的にばらまいても効率的な支援にはなりません。

自衛隊の装備規格は北大西洋条約機構(NATO)軍などとの互換性を高める。他国との共同開発の機会や輸出先を広げるためだ。一連の施策で防衛産業からの撤退が続く状況に歯止めをかけ、新規参入の促進につなげる。

NATO基準の採用とは情報公開と表裏一体です。未だに「手の内を明かさない」といって他国が当たり前に開示している情報を隠している隠蔽体質を温存してそれが可能でしょうか。そして使用電波の周波数帯や、道路法など自衛隊を縛る法改正すらまったくやる気がないのに、こういう改革が本当にできるのでしょうか。

単に防衛省や防衛産業のいったことをそのまま使いの小僧よろしく、右から左に書くのであればそれは新聞の記事ではなく、政府広報です。

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