AMV選定にみる防衛省、陸幕の隠蔽体質と当事者能力の欠如。


8日に防衛省で次期装輪装甲車に関するレクチャーがあり、9日にAMVが採用されたことが公表となりました。これは既に■市ケ谷の噂■で先週ご案内しました。

AMVが選定されたのはいいことだと思います。試乗した幹部はこれが「装甲車か。国産装甲車って何だったの?」という印象を受けたそうです。そんなことは見本市に顔だしていれば今更な話ですが、外国の一線級の装甲車と国産装甲車には大きな技術的な開きがあります。それを装備庁も陸幕も三菱重工も認識しておらず、自分たちは世界のトップレベルだと勘違いしています。このような浮世離れは情報軽視、それは情報隠蔽のせいで外部から批判や指摘がなされないからです。

まさに井の中の蛙です。

この選定と広報体制には大変問題があります。

陸自「次期装輪装甲車にAMV」の問題点
https://japan-indepth.jp/?p=71629

>AMVは国内でライセンス生産されることになっているが、それは現在パトリア社が調整中ということだ。どこが国内生産するか現段階では不明ということだ。それでいて、後方支援体制や生産基盤について防衛省は判断したことになる。無責任ではないか。
>通常、このような場合メーカーが初めから国内パートナーと組んで生産体制も提案する。8日行われた本件のレクチャーで、ライセンス生産先が決まらない、あるいは調達単価が上がるなどの条件を満たさなかった場合、キャンセルもありうると説明していた。
>だが既に防衛省は来年度予算で次期装輪装甲車29両分を232億円で要求し、2026年度から配備するとしている。採用がキャンセルされた場合、また時間と費用を掛けて入札と試験を行うことになる。

後数ヶ月もせずに予算が成立するのにどこの会社が作るのか分かりません、というのは無責任です。しかも例によって予算は初年度の生産分だけです。

>防衛省の秘密主義も問題だ。防衛省は今回APC型にしか言及していなかった。だが同車は初めからファミリー化を前提としている。筆者の質問に答える形で指揮通信車、施設支援車などの派生型の調達予定があることを述べたが、筆者が質問しなければ明らかにしなかっただろう。

本来ファミリー化が決まっているわけです。ファミリー化するから量産効果も上がるわけです。ところがどの型を何両つくるか、公表しない、あるいはできない。であれば調達数が100両で終わるのか千両超えるのか、プログラムの総額はいくらになるのか。納税者には分かりません。これでは計画自体や調達単価が適正かどうかも判断ができません。
まるで独裁国家です。

そもそも他国では将来の装甲車両のポートフォリオを明らかにして、その中でその車両はどういう位置づけなのか、どのような派生型をどれだけ開発して、ポートフォリオ全体の概略や金額も出します。

対して防衛省では96式の後継です、だけです。では派生型を調達するはどういうことだ、という話になります。古くなった自家用車を変えます、レベルの話です。

まるでガキの使いです。

仏陸軍スコーピオン計画と陸自装甲車調達(上)
https://japan-indepth.jp/?p=43786
仏陸軍スコーピオン計画と陸自装甲車調達(下)
https://japan-indepth.jp/?p=43793

>仏国防省のDGA(装備庁)と仏陸軍は2014年に既存の主要装甲車輌群を一新する野心的なスコーピオン(SCORPION:Synergie du contact renforcée par la polyvalence et l’infovalorisation)プログラムを発表し、その後着々と進めている。装甲車輌のグランドデザインがない陸上自衛隊とは大きな違いがある。


防衛省、自衛隊の隠蔽体質が装備調達も歪めています。納税者から適切な指摘や批判がないから組織内部の「おとなの事情」でインチキするのが習いグセになっています。

今までの経緯からは日立が生産する可能性が大きいと思います。経験から言えば三菱重工ですが、入札で負けた会社が選ばれるか疑問です。業界では日本製鋼所の名前も上がっています。あるいは装甲車から撤退を表明したコマツがゾンビのように蘇るのか。

何れにして三菱以外が選定されるのであれば、せっかく集約される装甲車の開発、製造がまた元の木阿弥になる、ということです。

以前から申し上げておりますが、装甲車は一社に集約し、そこの開発したものと外国製を競わせて、勝った候補をその国内メーカーに生産させるべきです。そうであれば、開発術力を維持できるし、負けてもライセンス生産の仕事が入ります。

本来防衛省、装備庁はそのような大局にたって、装甲車輌のメーカーを再編して、その上で装甲車両のポートフォリオを決定すべきでした。ところがそのようなビジョンはなく、
狭い視野で個々のプロジェクトを進めているだけです。
>筆者はAPC型の武装についても質問したが12.7ミリ機銃を搭載することは、におわせたが、明確な答えは得られなかった。昨今のAPCでは銃座に機銃を搭載するだけでなく、火器とレーザー測距儀、暗視装置、ビデオカメラ、自動追尾装置などを統合したRWSの搭載が普通に行われているが、それも明らかにならなかった。

明らかにしたAPC型ですら武装すら「敵に手の内を晒す」と明らかにしませんでした。
ぼくはレクで「その敵には納税者もはいっているのですか」と申し上げた。
防衛省や陸幕はよその軍隊からみれば、自分たちが如何に怪異で異質な情報公開の基準をもっているか知るべきです。またそれを指摘すべきです。

このような秘密主義、隠蔽主義を助けているのが記者クラブです。記者クラブには得てして軍事の専門記者は殆どおりません。ですからよくわからずに仕事をしている。そして
記者クラブだけが呼ばれるレクチャーがあって、他の媒体やフリーランスよりも優遇されている。基本アパルトヘイトと同じ仕組みです。

そこで防衛省から情報とという餌をもらってしっぽを振っているのが記者クラブという組織です。彼らがジャーナリスト、ジャーナリズムを自称するのは詐欺です。
防衛費の無駄使いの責任の一端は記者クラブにあります。

>現代の装甲車はエレクトロニクス関連の比重が増えている。ナビゲーション・システム、戦場における状況を把握するバトル・メネジメント・システム、RWSなどがシステムとして統合されている。さらにこの装甲車が部隊とネットワークを構成する。普通外国ではこれらの概要程度の情報は公開される。そうでないと政治家も納税者もその調達が適正か否かの判断がつかない。

つまり、ドンガラだけ選定しましたというのは昭和のセンスです。ご案内のスコーピオン計画では各車種に統合されたシステムが搭載されています。

>コーピオンは仏陸軍参謀本部とDGAが2000年から着手して2億ユーロ(約300億円)の費用をかけて、既存の装甲車輌の役割をどのような後継車輌に割り振るのか、またFELIN先進歩兵システムとVBIC歩兵戦闘車のネットワークシステムとのシステムの統合などが検証さてきた。総予算は60億ユーロ(約7,800億円)が見込まれている。

>ネットワークシステムはSCIS(Scorpion Combat Information System)が採用されている。SCISは現在仏陸軍が使用している5種類のシステムの後継となるシステムである。将来SCISはタレスが開発中APS(積極防御システム)、ディアマンも統合される予定である。

つまりこういう説明をしないということは納税者を馬鹿にしてるということです。
あるいはそのような計画がないということです。どちらにしても民主国家の軍隊としては落第レベルであり、趣味の戦争ごっこするのが自衛隊の仕事だというのでしょうか。
そうであればこのような胡乱な組織は廃止すべきだし、いわんや予算を増やしてはいけません。

■本日の市ケ谷の噂■
防衛省は否定するも、英日伊が参加する次期戦闘機開発(グローバル戦闘航空プログラム)にスウェーデンが我が国と防衛技術協定を近く締結後、参加するとの噂。


#AMV #次期装輪装甲車

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