セバスキヨの手記  〜砂の国 バサク〜

「王たる者、目の前の国民の幸せの為に」
驚いた。あの王子から、まさかこのような言葉が飛び出すとは。幼い頃は私に叱られるとすぐに逃げ出し、王妃の後ろに隠れべそをかいていたというのに。ただ、隠れながらもその豊満なボディは王妃の陰から十二分に見切れてしまっていたのだが。
いつまでも子供ではない、王子も成長しているのだ。そう思うと、長年お目付役を仰せ使ってる我が身としては何だか胸にくるものがあった。そして、転がしているときの王子は本当に重かったので、腕にくるものもあった。

砂の国バサクでは、様々な出会いがあった。ここでは個人的に、あくまで個人的に記憶に残った出来事をいくつか記す。

まず、ムギ坊が最初に登場したとき運ばされていたもの。あれは一体なんだったのだろう。棒に吊り下げられた2つの黒い球体。あれをどこに運んでいたというのか。運んだとして何に使うのか。なぜマッキーシーはあれをあんなにも運ばせたがっていたのか。そもそも運んでいいものなのかあれは。ボディ王子の友人なる松永ボディというボディがせっせと作ってくれたらしいのだが、あれの謎は未だによくわからないし、今後もおそらく何の伏線にもなっていない。

あと、最初にムギ坊が倒れてしまったとき、思っていたよりも距離が近かったので「この距離で助けない自分はどえらい人でなしなのでは?」と少し狼狽えてしまったのもここだけの話。

そしてやっと緊張も解け落ち着いてきた矢先に目にしたのが、死の商人フー。彼に対してはおそらく私だけではない。武器や兵器を密売する彼の悪名は聞いていたが、あんなメイクだとは聞いていなかった。きっと誰も聞いていなかった。ヤマ王も、彼の顔はあまり見ないようにしていたと言っていた。皆よく耐えていたと思う。私は一切耐えれなかった。
「ここだけは、ここだけは絶対に耐えるぞ」と望んだ彼を追い詰めた場面も、倒れぎわの「駄目だなぁ」の台詞と共に爆笑するバサクの人達の声が聞こえて、もう無理だった。耐えたかった。

執事として反省点は挙げれば枚挙に暇がないが、それでもこの旅がこれほど良いものに思えるのは、彼らであったからだろう。この国で出会ったのが彼らでよかったと、心から感謝する。王子もご満足頂けたのではないだろうか。


王子の旅はまだもう少し続く。
もしこの手紙を読んでいる者がいるのなら、どうかお願いしたい。出来ることなら王子のいく末を、最後まで見届けては頂けないだろうか。
なにせこの旅の結末は、私も王子も、そしておそらく脚本担当の者も、まだどうするか決めていないのだから───────。

     ━━━━執事 セバスキヨ━━━━



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