みらいとか子

雑記

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最近の記事

トイ・プードル・インザドリーム

昼下がりの雲は、トイプードルの形をしている。 揚々と空を闊歩するその姿は、未来への希望に満ちていた。 しかし数分経つと、もうトイプードルの姿は跡形もない。 海の藻屑のような残骸があるだけだ。 何もかもが、絶えず変化する。 永遠に美しいものなんてどこにもないから。 だから私たちはいつも、大きな力を持つ誰かの手の中で踊らされているだけに過ぎないのではないかと思う。 すべては夢だ。 雲のように頼りなく揺蕩う、儚い夢。 いつかは消えるよ。 君もあなたもあの子もあの人も。 い

    • 夢は最後に獣の匂い

      夢を見た。 今年最後の夢になるだろう。 そして、今年1番幸せな夢にも。 ・ 助手席に乗り込むと、ハンドルを握った君が笑顔だ。 嬉しい。 まずそれだけで。 私は君に顔を近づけ、何か呟く。 内容は覚えていない。 しかし重要なのはそこではない。 君に顔を近づけたとき、君からひどく動物的な匂いがしたのだ。 匂いのする夢は初めてだ。おそらく。 私はその匂いが好きだと思った。 君は私の言葉を聞いて喜ぶ。 永遠の旅に出よう。 そんなことを口走る君。  嫌な予感がする。 永遠

      • なしのつぶて

        元気ですか。 何してますか。 連絡ください。 いやしかし、一方的に消息を絶ったのはわたしの方だった。 あなたは急に途絶えたわたしの連絡に、いったい何を感じているのでしょうか。 そんなことはすっかり忘れ、のんきにゴダールでも観ているのでしょうか。 それはそれであなたらしくて、好きです。 ところでわたしが何をしているのかというと、大宮で柿を食べていました。

        • クリスマス・イヴ

          12月はこんなにも楽しかったのか。 FNS歌謡祭とM-1グランプリ。 今年叶わなかった些細な夢を供養する時間。 実現しないであろう来年の抱負を考える時間。 電飾に彩られたやけくそな街。 今年ももう終わりだね。 来年は何したい? 12月はこんなにも楽しかったのだ。 それなのにあの年のわたしは、この季節特有の浮ついた娯楽を何ひとつ味わうことなく、ただ人を待ってた。 会えるか分からないクリスマス・イヴのために、予約したアイスケーキ。 来ない連絡。 寒さを紛らわず方

        トイ・プードル・インザドリーム

          大喧嘩した翌日の日記より抜粋

          FRIDAY TUNING DATE:とある金曜日の夕方 心のチューニングを合わせたことってある? これを言葉にするのは難しい。 自分の心がいったい今、どんな音楽を求めているのか、クラシックなのかロックなのか、あるいはブルースなのか。そういうあくなき探求を続ける、っていうのが一番近い表現かもしれない。 具体的に言うと、Apple Musicのシャッフル機能を使って自分のライブラリに入ってる数多ある楽曲を無作為に聴いていくってこと。そのうち、自分の今の心にかちりとはまる

          大喧嘩した翌日の日記より抜粋

          OKINAWA

          一人になると、気付いたらいつもあのことばかり考えてしまう。 だから一人にならないようにしていた。 余計なことをいつまでも話して、考えないようにしていた。 そのことを、すっかり忘れて来てしまった。陽気な南国へ、一人で。 動揺をごまかすように、いつも聴いていた馴染みの音楽をかける。 あ、でも。さみしい。 ・ どうして来たのか思い出せない。 気づいたらホテルにいた。 東京の一角だと言われても疑わないだろう。 しかし明らかにここはーー温かい。 ホテルの窓から見える景色は

          マイスイートメモリーズ

          甘い痛み、という言葉がある。 しかしこれは、甘く熟れた果実ほど、猛毒になり得るというだけの話に過ぎない。 甘さは痛みに変わる。 むしろ、痛みを伴わない甘さなど存在しない。 これは、 人間が愛する人と出会い、かけがえのない時間を過ごし、そして別れるというこの世界にあまりにもありふれたその事象ーーそのものの話だ。 もう戻れない過去について。 私は愚かにも、それがもう戻らないものなのだと気づくまでに、多くの時間を費やしてしまった。 過去は戻らない。 空は青い。赤信号は

          マイスイートメモリーズ

          吉祥寺巡礼

          吉祥寺は、私が人生においてとても重要な時期を過ごした大切な街だ。 住んでいた期間は長くないけれど、とにかく濃かった。 一生のうち人間に降り注ぐ幸福と厄災が一気に濃縮して訪れたような、そんな時間を、過ごした。 だけど、というべきか。 だから、というべきか。 とにかく私は、吉祥寺を離れてから、もう一度この街に来ることが怖かった。 この街には、あまりにも甘くてあまりにも苦い思い出が蔓延っている。 目の当たりにしただけで、そのときの気分、匂い、音。すべてがフラッシュバックされる

          3年前、2年前、7ヶ月前

          ここに文章を投稿し始めて、5年目になる。 1年勤めた銀行を辞めた記念に憂さ晴らしとして一筆書いてやろうと思っただけなのに、なんでも気楽に書ける自由帳のような形式にはまってしまい、それ以降もたくさん小説やら詩やらを書いた。自由律俳句は恥ずかしくて消した。 言葉を自由に紡ぐことは、楽しかった。ただ、ただ。 最初のほうを遡ってみると、筆が乗っていたのか結構な頻度で投稿している。 銀行員からライターに転職したこともあり、練習も兼ねていたのだろうか。 いや、違うな。 これもまた

          3年前、2年前、7ヶ月前

          ブラッドオレンジジュース、ワンモア

          彼女はアルコールが飲めないから、いつもブラッドオレンジジュースを頼んでた。 だけどきまって火照ったような頬してさ、それは東京の街に酔っていたからなのかなって、 今なら少し、思い当たる節もある。 彼女は東京を恨んでいたわけじゃない。 ただ少し、不器用だっただけだ。 昨日まであったコーヒーショップが今日はもうレコードショップに代わっているような場所さ。 他人に期待するのは不毛だってこと。 いいや、違う。そういうことじゃない。 望めない、っていうことさ。 愛も、金も、変哲

          ブラッドオレンジジュース、ワンモア

          失われたときを求めて 

          お元気ですか。 で、始まる手紙が好きではない。 だいたいそうやって誰かに手紙を送ろうとする人間自体元気とは程遠く、まずは自分の心配をしたらどうだという話なのだ。 しかも相手は、否が応でも元気だと答えざるを得ない。そして「あなたもお元気なら良いのですが」などとご丁寧に付け加えなくてはならない。 人は誰しも元気な時があればそうじゃない時があって、しかし元気じゃないからと言って他人に心配されなくともそのうち気が付いたら元気になっているようなものなのだ。 私たちは悲しいこと

          失われたときを求めて 

          春の生ぬるい

          毎年この季節になると、どうやって春が来たときのこの独特な感覚を言葉にすれば良いのだろうとそればかり考える。 考えるだけで終わるのが通例だが、今年はついに言葉にしてみようと思う。理由はとある壮大な事情で、暇だからだ。 まず初めに、春の訪れはいつも少しグロテスクなのである、ということだ。この初春のグロテスクさというのは、生ぬるいことに起因していると思う。 からっとした暖かさではない。ぬるぬるした柔らかい風が肌をぼんやりと包む。何かに守られているような、気がする。自分はまだ大

          春の生ぬるい

          IWBL

          誰かが言った。 「愛があるとかないとか、僕にはまだ分かんないけどさ。でも、人と人が抱き合ったら、どう考えたってそれはもう、嘘なんかじゃないでしょ」 私はいまだにふと、その言葉の意味を考えるときがある。 ・ もう二度と会わない人と話すとき、私は嘘ばかりついた。 いもしない双子の妹の話をした。 好きでもない小説の一節を楽しげに繰り返した。 本当はもう覚えていないのに、小2にみた井戸の夢の話を鮮明に聞かせた。 もう二度と会わない人にほんとうのことを話したって、無駄だと思

          1972

          夏空にそびえたつ太陽の塔が、真夏の日差しに耐えかねて、じりじりとホワイトアウトしていく。 僕は、ただじっとその様を見ていた。 いつか、幾星霜をこえて。 僕たちの、そして、彼らの愚かな願いが、叶いますように。 ・ 1972年。 バリケードと、林立する立て看板。 密集した学生ヘルメット部隊の中に、僕はいた。 たなびく無数の赤旗には「反戦」「ベトナムに平和を」などと書かれている。 「未来を創造するのは、いつだって大衆エネルギーなんだ」 振り返ると、ヘルメット姿の相

          雑記 人は孤独である

          最近、死んだ人のことについてよく考える。 尾崎と、高野悦子さんと、デヴィッド・ボウイ。 うそ。デヴィッド・ボウイのことを考えたことなんて、一度もない。どうして今、彼のことを思い出したんだろう。 とりあえず、この3人には共通したものがある。彼らは皆、人は孤独であるということを知っていた。 デヴィッドだってきっと、知っていたさ。今日は彼の歌を聴いて眠ろう。 おやすみ #日記 

          雑記 人は孤独である

          太陽の塔

          眩しかった。 憧憬に似たしめつけるおもいだけが、僕の胸を支配した。 それは全てをのみこんだ。 ジュラルミンの盾も。 村正の真っ赤な背中も。 幻想の中の故郷さえも。 #詩 #太陽の塔 ・追記 彼は70年初期の学生運動で親友をうしなった。 結局あの夏、大阪万博には行けなかった。 彼は、お飾りでしかなかったはずのあの塔を見てみたかった。一目でいいから。 その願いは彼が革命に敗れてからひっそりと叶うのであるが、そのことは誰も知らないし、知らなくていいことだ。