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ナイチンゲール『看護覚え書き』を聴く#107

フローレンス・ナイチンゲールが著した『看護覚え書き』のオーディオ・ブックを配信します。HNS(=防府看護専門学校)の学生・生徒のために作成したオーディオ・ブックですが、HNSの卒業生や看護師を志す人、現役の看護師の方々の他、引退された看護師の方や教育に関心のある方々など、すべての人に向けた配信です。ご自由にお聴きください。

#107 :窓の外を見たいと言う病人の切なる望み

この件について思い出す患者がいる。それは事故で脊髄に怪我をした男性で、長患いの末に死亡した。彼は労働者でいわゆる自然に対する「熱い思い」など、ひとかけらも持ち合わせていない類の人であった。しかし、彼はもう一度だけ窓の外を見たいと切望し、看護師は実際に彼を背負い窓のところに連れて行き、一瞬外を見させた。

その結果、看護師は気の毒にも病気となり命を落としかかった。病人はこの事実を知らなかったが、多くの人々は知っていた。しかし私が知る限りの結果では、次のように確信した人はいなかったようだ。

それは変化に飢えた人が変化を求めるのは、飢えた胃が食べ物を求めるのと同じように、切実な望みであり、どちらの場合も飢えた人間は何とかしてこれを満足させようとするということである。

死に物狂いと言う言葉でしかこれを表現できないだろう。病人の管理者や付き添いが「景色」や何らかの変化を与えなければ、病院に調理場を作らないのと同じように無知で愚かという烙印を押されるだろう。
(2023年9月25日配信)

フローレンス・ナイチンゲール(Florence Nightingale):1820年-1910年・近代医療統計学および看護統計学の始祖。近代看護教育の母。

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