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昨今のPR会社について比較・分析してみた【ベクトル・サニーサイドアップ・共同ピーアール・電通パブリックリレーションズ】

広報宣伝の方法の変化

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広報宣伝の方法が変わってきている。メーカーが商品やサービスを人々に知ってもらうためにはニュース番組や記事で取り上げてもらい、さらにはテレビコマーシャルや新聞、雑誌に広告を出すこと、つまり広報宣伝活動を行うことによって、知ってもらっていた。しかし、インターネット、スマホやタブレットの普及によって、テレビや新聞、雑誌以外にも動画サイト、さらには自社ウエブサイト、ソーシャルネットワーク上の口コミなど、人々に知ってもらうためのプラットホームやツールは多角化している。

世界のPR会社ランキング

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そこで活躍しているのがPR会社だ。米国の南カリフォルニア大学と提携し、世界のPR業界の総合的な分析を行っている団体のProvokeは世界のPR会社ランキングを発表している。「GLOBAL TOP 250 PR AGENCY RANKING 2020」では16位にベクトルグループ、18位にサニーサイドアップグループ、45位に共同ピーアール、50位に電通パブリックリレーションズと4社がトップ50にランクインした。

国内トップを走るベクトルグループ

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売り上げで国内トップを走るのがベクトルグループだ。1993年に設立された同社の現在の社長は長谷川創氏で、国内外に40社以上の関連会社を有している。グループの従業員数 は1144人。その企業理念は「いいモノを世の中に広め、人々を幸せに」。PR事業やプレスリリース配信事業、ビデオリリース配信事業、さらにはダイレクトマーケティング事業、メディア事業、HR事業、デジタルマーケティング事業、インベストメントベンチャー事業など幅広い事業ドメインをベースに業務展開している。テレビや雑誌、新聞、さらにはネット関連と総合的なコミュニケーションの立案からアウトプットまでをワンストップで提供している。

スポーツマーケティング分野に強いサニーサイドアップ

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18位がサニーサイドアップ。その社名は元サッカー日本代表選手で欧州でも活躍した中田英寿氏のマネジメントで聞かれた人もいるだろう。同社の社長は次原悦子氏。1985年に設立され、グループ会社は16社で従業員数は549人。自社を「たのしいさわぎをおこしたい会社」と評している同社はPR事業、プロモーション事業、スポーツマーケティング事業、フードマーケティング事業を手掛けるほか、新規事業開発を行っているトップアスリートや文化人のマネジメントも行っていることから、スポーツマーケティング分野では特に強みを持っている。また飲食店を経営しているというのもこれまでのPR会社のイメージとは異なるのではないだろうか。

媒体社との強固な関係を持っている共同ピーアール

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45位に入ったのが共同ピーアール。1964年に設立された。現在の社長は谷鉄也氏で、関連会社は5社。授業員数は245人だ。広報活動の支援、代行、コンサルティングから、危機管理広報、IR、インターネット関連業務に至るまで、総合的なコミュニケーション・サービスを提供している。共同ピーアールは「総合力」「経験力」「メディアネットワーク力」という三つをコア・コンピタンスとしてこれまで以上に強化を図っているという。中でも同社が特に強みとして挙げているのが、現場から幹部層までの媒体社のキーパーソンとの強固な関係だ。

大手広告代理店電通グループの電通パブリックリレーションズ

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そして50位が大手広告代理店、電通のグループ企業、電通パブリックリレーションズである。同社は1961年に設立された。現在の社長は牧口征弘氏。その企業理念は「レピュテーション・マネジメント力で社会的合意を形成し、クライアントと共に、新たな社会的価値や、仕組みを創るソーシャル・イノベーションの実現に貢献していく」。従業員は292人。電通パブリックリレーションズが強みとして打ち出している分野はヘルスケア・メディカル領域である。製薬会社、医療機器メーカー、行政、食品メーカー、さらには介護施設や職能団体、医療機関に対して、幅広いサービスメニューを持っている。

デジタルメディアの活用が今後のカギ

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企業が自社製品やサービスをより多くの人々に対して、告知し、認知を図っていくための方法はコロナ禍で大きく変化してきている。これまでのような展示会の開催が困難になっていることに加え、販売店の店頭でのキャンペーン実施も難しい。そこでデジタルメディアの活用が今後のカギとなるだろう。こうした手段に強いノウハウを持っているのが、ベクトルだ。

業界最大手、ベクトルの長谷川創社長はネットメディアのインタビューで「どのクライアントも、広告費用・コミュニケーション費用をかけていいのか悩み、見合わせるタイミングではないか。アフターコロナと言われているが、まだまだwithコロナの状態で、しばらくは不透明な状況が続くだろう。あらゆる価値観がパラダイムシフトしていくタイミングにおいて、この逆境下でも成長、進化していくプロダクトをグループとしては準備している」と語っている。コロナ禍が続くいま、ベクトルをはじめ、PR会社各社は時代にマッチした、デジタルテクノロジーをフルに駆使するオンラインでの広報宣伝、マーケティング、プロモーション活動の支援策を提案している。

ベクトルではデジタル分野では「日本企業がコミュニケーションを考える際に、最適な手法と適切なプライスで簡単に使えるような、コミュニケーションをテクノロジーで支えるインフラを提供していきたい」と長谷川創社長は語っている。ベクトルのグループ企業、Direct Techのライバープロダクション事業におけるクライアントサービス「pino live PR」もその一つといえるだろう。人気ライバーのライブ配信中に商品を紹介するというものだ。

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一方、サニーサイドアップがGunosyと合弁で設立した関連会社Grillは今年3月、情報発信ツール「グッテレLive」のサービス提供を発表した。「グッテレ」は動画ニュースコンテンツ編集・配信を行うサービス。動画のコンテンツは情報キュレーションアプリ「グノシー」を活用し、セグメント化されたターゲット層に向けて効率的に配信していくという。想定している主な用途は記者発表会、会社説明会、卒業式や入学式、オープンキャンパスなど。これまで記者や観客といった来場者が会場にいて、実施されていたイベントをオンラインで行うというものである。それに加えて、今後は展示会をオンライン上に集結させる「オンラインエキスポ」をメニューとして提供すべく準備を進めているという。

また、共同ピーアールは企業広報活動をオンライン上で行うための統合型広報支援サービスの提供を開始した。同社が作成・配信してきたリリースを、動画、インフォグラフィック、デジタル記事、ライブ配信などのデジタルコンテンツ化して、オンライン広報プラットフォーム「PR TODAY」に掲載。クライアントの情報発信を支援していくというもの。さらに、ソーシャルメディアを含め、あらゆるメディアを通じて情報に触れる生活者に対しても、最適な対象者に、適切なタイミングで直接訴えかけるため、ワンストップで最適な展開手法を提案していくという。

一方、電通パブリックリレーションズはオンライン記者会見や株主総会などオンラインを活用したコミュニケーション活動において、中継システムなどハード面に加え、ストーリー作り、スピーチライティング・Q&A作り・スライド制作といったソフト面のコンサルティングも手掛けている。同社ではコロナ収束後もこうしたオンラインによるコミュニケーションは通常化することを想定。今回支援体制の強化、サービス内容の拡大を行っている。

まとめ

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ベクトル、サニーサイドアップ、共同ピーアール、電通パブリックリレーションズというGLOBAL TOP 250 PR AGENCY RANKING 2020のトップ50にランクインした国内PR会社4社の取り組みに共通しているのは新型コロナウイルスの問題が収束した後にもオンラインでのコミュニケーション導入に対してのニーズが高まると想定していることだ。こうしたオンラインのコミュニケーションの取り組みを進めているのは何もランクインした4社のみならず、PR会社業界全体の流れだ。

今後、オンラインのコミュニケーションは企業の商品・サービスの紹介やプロモーションといった消費・生活関連だけでなく、行政手続きや選挙などの社会活動の関わりにおいても拡大していく。そこでPR会社が果たしていく役割もますます拡大していくことはいうまでもない。