奇盤・珍盤・迷盤特集
以前仲の良い音楽仲間と無人島レコードをネタにしたオンライン飲み会を開催するという話をしたが、今回は第二弾で奇盤・珍盤・迷盤を持ち寄るという少しチャレンジングな設定にすることになった。
ルールは面白いと思える音楽ならレコード、CD、YouTube等の動画、映画何でも有りと少し規制緩和。とはいえそれぞれの選択に至った人生哲学(?)が晒されるので前回同様慎重な選択が必要となる。
(ちなみにタイトルバックにあるCDは私の持ち物で今やなかなか入手が難しいと思われるCDやDVDを集めてみた。ウイスキーのオマケや企業によるプロモーションCDのようなノベルティものや知人のバンドの自主製作盤、海賊盤が多いが、真ん中で黒光りしているのは六本木Waveで買ったPILのMetal Boxで右端はミックジャガーの弟のクリスジャガーの4枚目の日本盤。)
以下が私の選んだ奇盤・珍盤・迷盤ベスト10。
1. Rapper's Delight Brian Williams feat Lester Holt
まずはつかみで米国のテレビ司会者、コメディアン、俳優、歌手、ミュージシャン、プロデューサーであるJimmy Fallonの名作からコレを。
1979年のThe Sugar Hill Gang作”Rapper's Delight"を2014年当時NBCナイトリーニュースの顔だったBrian Williamsがニュースを読み上げる際の声をマッシュアップして作った手の凝った作品。
なおBrian Williamsは2015年1月に自らが何度も繰り返し語ってきた「2003年に米軍ヘリコプターでイラク取材中に地上からロケット砲で攻撃され、被弾するという恐怖を体験した」という話が事実に反すると元兵士から抗議され、同年2月に嘘であったことを認め、その後降板した。後を継いだのは上記作品で共演するLester Holt。
2. インドカレー屋のBGM
一時話題になったインドカレー屋で流れているBGMをまとめたコンピレーション。音楽というよりもパッケージが日本人が持つインド人・インド文化のステレオタイプ丸出しだ。
これを流せばカレーが旨くなる保証は決して無い。初日元のビクターが二匹目のどじょうどころか、このシリーズを何と合計八作も出しているところを見ると、人気は根強く良い商売になっているところが恐ろしい。
付録として、日本語でなんとなく一緒に歌える特製「空耳日本語歌詞カード」が付いている。
3. 浪花のモーツアルト キダタローのほんまにすべて
2010年に生誕80周年の傘寿を迎えた自称「浪花のモーツアルト」ことキダ・タローの集大成アルバム。
多作で知られる同氏の3,000曲もの作品から、「アサヒペン」、日清の「出前一丁」、「チキンラーメン」、「日清やきそば」といったCMソング、「ABCヤングリクエスト」、「プロポーズ大作戦」、「ラブアタック」といった番組テーマ曲、「アホの坂田」やバーブ佐竹の「虫けらの唄」、関西人でしかわからない「いづもや」、「かに道楽」、「花の新婚! カンピューター作戦」など爆笑間違い無しの101曲を集めた三枚組の大作。
当時CDプロモーションのため、調子に乗ってアプリまで作っていたらしい。ええかげんにしてほしい。
4. ナンダ☆モンセ Keiⅹ3
昨年バラカンビードでも紹介されていた2018年発売のナンダ☆モンセのミニアルバムの最終曲。オフィシャルサイトによると
「岩手沿岸の方言、スペイン語っぽいよね?」...という一言から始まった、中南米の音楽と岩手県沿岸・大槌町の方言を駆使した、ご当地サウンド・プロジェクト”ナンダ★モンセ”
ということらしい。歌うのはNorishigeという岩手出身のミュージシャン。
岩手弁を駆使しており、字幕の英語が無かったら岩手弁は何を言っているかさっぱりわからない。
5. The Fools - Psycho Chicken
ご存じThe Talking Headsの”Phsyco Killer"をパロディ化した1979年の名曲。今では信じられないだろうがこの曲は当時本当にディスコでかかっていた。
この曲はリリースと共に大ヒットし、バンドはThe KnackやVan Halenのツアーに同行した。セカンドアルバムのタイトルは”Heavy Mental"。
The FoolsのリーダーMike Girardにとって本曲のメガヒットがLife Eventであったのは間違い無く、2010年には”Psycho Chicken & Other Foolish Tales”という本も出版している。
6. Young@Heart Chorus "Fix You"
Young@Heart Chorusは西マサチューセッツで1982年に始まった音楽活動グループで、全員75歳から92歳の老人介護施設のお年寄りばかり。2006年に映画にもなり、日本にも当時来日した。
これは1925年生まれのFred Knittle中心のメンバーによるColdplayのカバー。
映画でもこの場面が詳しく描かれているが、もともと本番ではFredはBobとデュエットで歌う予定だったが、本番までにBobが亡くなってしまった。さらにこのライブの数日前にもう一名Joeが亡くなった。Bobの家族が見守る中Fredの唄とメンバーのコーラスはメンバーにとっても特別な意味を持つものになった。
この曲も酸素吸入の補助がいるFredが健常者の多い観客に”Fix You"と歌うところにウイットがあるし、Fredの低音の説得力には脱帽するしかない。Fredは2009年1月1日に亡くなっている。
映画では他にもThe Clashの”Should I Stay or Should I Go"、Lou Reedの”Walk on the Wild Side"、Talking Headsの”Heaven"やAlan Toussaintの”Yes We Can”などが演奏されており、どれもその選曲にウイットがあって素晴らしい。
2020年10月2日に新譜”Miss You"が出るそうなのでこちらもどうぞ。
7. Vulfpeck(ヴォルフペック) - Dean Town
若手凄テクミュージシャンで構成されるファンクバンドのVulfpeckが2017年の9月26日にThe Wisdom of Crowds Tour 2017でDublinを訪れた際のライブ演奏。
何が凄いかというと、ベースの演奏に大勢の観客がそのフレーズを同時に一緒にハモっている。
ベースという楽器がついにボーカルを超えて会場でメインになった音楽史上画期的な瞬間かもしれない。
8. Black Magic Woman & 別れても好きな人/MERRY X'MAS SHOW 1986
1986年と87年の二年間、クリスマスイブに日本テレビ系で放映されたオールスターキャストによるクリスマス特番。吉川晃司と桑田佳祐が発起人となって氷室京介、アン・ルイス、布袋寅泰、鮎川誠、ARB、アルフィー、泉谷しげる、チェッカーズなど当時旬のアーティストが集まった。
中でも見事な構成で印象に残ったのがこのロス・インディオス&シルヴィアの「別れても好きな人」とサンタナの「ブラック・マジック・ウーマン」のマッシュアップで、鈴木雅之と桜井賢(THE ALFEE)がKUWATAバンドの面々をバックに歌った。
翌年この二人はJames Brownの「I Feel Good」と北島三郎の「函館の女」のマッシュアップで再び挑んだが、Charと米米クラブによる”JUMPIN' JACK FLASH”と「星降る街角」のマッシュアップに軍配が上がった...と個人的には記憶している。
9. 戦争しましょう by 加川良 with TE-CHILI
2017年に亡くなった加川良が1996年に上田正樹とサウストゥサウスの有山じゅんじ(ギター)と藤井裕(ベース)、ローリーと現在The Manjiで活動するロジャー(ドラムス)という関西出身の実力派メンバーとともにつくった本格ロックアルバム『R・O・C・K』の一曲名に収録されているセルフカバー曲。
加川良の「教訓」に収められた名曲を、元五つの赤い風船で、ブルースやラグタイムギターの名手として有名な有山じゅんじが意外にも大音量でグランジ風にかき鳴らすギターを初めバックのメンバーの演奏が兎に角格好良い。
バンド名は当然レッチリの洒落である。
ベースの藤井裕も2014年に残念ながら亡くなっている。
10. Jimmy Fallon Sings "Hello" with Lionel Richie's Head etc.
最後にもう一度Jimmy Fallonモノで。80年代MTVを代表するLionel Richieの”Hello"のオリジナルビデオクリップは盲目の女性が触感で再現した粘土づくりの置物だったが、何と粘土の代わりにLionelの本人の頭を使って再現するという掟破りの迷演だ。
Jimmy Fallonはこれ以外にもNYCの地下鉄でU2やMaroon 5などの有名ミュージシャンとシークレットギグをしばしば敢行しており、気がついた乗客が興奮しながら集まって来るのが楽しい。
また最近はThe Tonight Showでハウスバンドを務めるThe Rootsと一緒に玩具の楽器を使って各種名曲をカバーしている。
このExtremeの”More Than Words"のヴィデオクリップをJack Blackと真剣にカバーしているのも面白い。
Jimmyは本当に器用な人で、Bob Dylanの真似をさせても天下一品だ。
上記をまとめてYouTubeにライブラリを作成しました。
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