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インディアンポーカーなのである。

仕事で最も面倒なことの一つが人間関係かもしれない。時々ここに書かせてもらってストレス発散しているが、幸い人間関係には恵まれている。モロに敵対している人間も少ない方だし、そいつらも道で会えば挨拶くらい出来る社会性は持ち合わせている。だから結構まともな環境なのかもしれない。

ただ、おれの仕事の特異性から、手が足りない時になかなか協力を仰げないことが多い。さっきまで雑談に興じていたのに、こちらが人手が欲しいと言った途端、まあ皆さんお地蔵さんのように固まったり、ゴリラのように怒り出したりして全く融通が利かない。仕方がないので諦めて自部署で何とかやりくりして処理することも多いのだが、そろそろ飽きてきた。自分のワンパターンさにも嫌気が差したのだ。今年は今までと違うアプローチにしよう。そもそもおれは今まで交渉するにあたり、必要な準備をしてベストを尽くして取り組んでいたのだろうか?ちょうどヒマだし、これ以上無いくらい立ち回ったらどうなるだろうか?ちょっと面白そうだからやってみるか。そんな軽いノリで社内営業を始めてみた。

まずは各関連部署に共通して理解出来そうな丁寧で簡単な説明資料を作り、これまで慣例的に人員の派遣を口頭で依頼していたものを全て理論化した。ある程度の重鎮になると、その大半はバカで忙しい。小難しい資料など読まない。だからなるべく驚くほどシンプルにしつつ、収益性についても全て明確なモデルを作り上げた。元々おれの頭の中にあり、今までは会話の中で説明してきたつもりなのだが、どうせ忘れられてるし、一度文書にまとめてみたらスッキリした。次にそれを持参し、各部門のエライ人にわざわざ会いに行き、一人一人に説明してみた。え?ナニナニ?こないだダメって言ったじゃん、というオジサンに対し、これこれこういうわけで、人手がどうしても必要なんです、とごくごく正攻法で口説いたのだ。以前は手の込んだ作戦を画策していたが、時間も脳も無いオジサマ方対策にはまず敢えてシンプル直球勝負。みんな落ち着いて面と向かうと、それほど強くは返してこない。多少突っ掛かれてもあくまで冷静に、笑って受け流した。これも台本。想定内、と。

これを繰り返した結果、予想以上に収穫があった。プロジェクトが想定される期間内の人員の目処が立ち、どうしても賄えない部分については別の形で増強するといった新たなプランも湧いてきた。
これはあくまで社内の段取りなので、これからの実際の仕事についてはその勝ち得た人材を活用して踏ん張るしかない。でも、これまで孤立無援だったことと比べると明らかに、今回はだいぶゴールが見えている。

反省点としては、これまでのおれの働き方がいかに雑だったかということが分かる。敵(今回は社内)はこちらの顔色や出方を見抜いて、探りながらリソースを出し惜しみしているのだ。考えてみたら自分だってそうだった。人間関係が複雑になると急に億劫になり、全てかなぐり捨てて逃げ出したくなるが、その前に現状の環境をとことん使い倒したのか?人に会ってちゃんと必要な対話をしたのか?面倒だから勝手に決めつけていないか?せっかくリソースが眠っているのに活かせなかったのはおれ自身だったのだ。そういう自分の一番醜い部分に光を当て、面倒=不得意な「対話する」という要素を克服すべく、おれはもっとマメで積極的にならなくてはならない。

未だにおれは自分の性格がよく分かっていない。しかしもしかすると、おれ以外の人からみるとすごっく分かりやすい人間なのかも知れない。人生はインディアンポーカーのようなものだ。自分以外にはきっとスケスケで丸分かりなのだ。本心を隠し通していると思い込んでいるのは己ればかりではないだろうか。大船に乗ったような気持ちで、まずは原点に戻って、身近なところに打ち明けて委ねてみてもいいのかもしれない。それでダメなら別な方法を考えれば良いだけだ。

インディアンポーカー、人生の縮図なり。